★ 蛇の杖

 バクランドで出会うディンテンタ。うまいこと贈り物が気に入ってもらえればだが、彼女から実にありがたいアイテムを譲り受けることができる。七大蛇に効果覿面となる「蛇の杖」だ。
 よく見ると彼女と出会ったシーンのイラストに、それらしき杖が描かれていることに気づく。杖頭は蛇をかたどったように見え、柄の部分には鱗らしき装飾がなされている……だが、明らかに短い。この時のディンテンタはノームのような姿をとっている。この杖はこの姿の背丈に合わせて作られているようだ。アナランダーが杖をもらったとしても、歩行の役に立ちそうもない。かえって腰を痛めるのではなかろうか。

 この杖はゲーム中指示があるように、材質からFIXの触媒としても使えるわけだが、術師の身体に合っているかどうかは問わないということだろう。アナランドの魔法使い、あるいはAFF2で妖術師を自称するなら覚えておいて損はあるまい。

(1/12/24)

☆★ 立ち往生対策

 第二巻の後半、閉ざされたカレーの北門を守る衛兵たちを突破するには多額の賄賂か、あるいは魔法で切り抜ける必要がある。ここで金貨が足りず、かつ魔法が使えない戦士だった場合は目指す門にたどり着けることができずにゲームオーバーとなってしまうわけだ。この部分、該当するパラグラフはいくつかあるのだが、創土訳では単に「先へは進めぬ」「さもないと追い立てられる」「さもなければ、ここから一歩も進めぬ」とだけ書かれており、いまいちゲームオーバーだとはわかりにくい……取れる行動が無いので、そう察することはできるのだが。ちなみに創元版では「もしあなたが戦士で魔法が使えない場合は、あなたの旅もここで旅も終わる」と明記されていてわかりやすい。
 英語原文を忠実に訳す傾向にある創土版。想像できるとおり、英語原文においてもさらりと書かれているにとどまっていたわけだが……。この点、創元版はうまくフォローしていると言えよう。ゲームブックにおいてゲーム性は無くてはならない重要要素だ。個人的には創元訳に旗を揚げたい。さて、三度世に出るFFコレクション版ではどうなっているだろうか?

(1/14/24)

★エルヴィンのこと 

『モンスター事典』に載っているエルヴィンについての記述には、彼らは自らも魔法の使い手ではあるが「真の魔法」に強い興味を持っているとある。実際にエルヴィンと遭遇した際に、魔法を見せてやることで意気投合し、友好的にやり過ごすことも可能なのだ。

 ……ここで疑問が生じる。カントパーニ郊外で木の上に置き去りにされている老人がいるのは一度なりともシャムタンティを旅した読者であれば御存じだろう。この老人はエルヴィンによって木の上に置き去りにされ、持ち物を奪われたと語る。唯一彼の手に残っているのがガザ・ムーンの魔導書から盗んだ1ページなのだが、はたしてエルヴィンがこの魔法に関連していることが明らかな品を置いていくだろうか? 必死で老人が隠しぬいたとも考えられるが、木から降ろしてくれた礼にとページを譲ってくれる様子からは、さほど執着があるとも思えない。
 考えられる可能性は二つある。老人を木の上にあげたのは実はエルヴィンではないのだとしたら? 金品はすべて巻き上げられているのだ。犯人はカントパーニの住人だろう。辻強盗ぐらい、奴らならやっててもおかしくはない。そして、連中には例のページが魔導書から破り取られたものだと見抜けなかっただろう……本編で出会う村人たちの様子からは、彼らが魔法に通じていると思わせるものは何一つなかった。だが、老人のほうで相手がエルヴィンだと勘違いするとは思えない。当然ながら普通の人間サイズだし、宙に浮いてもいない。ましてや発光しているわけもない。何より、カントパーニの者がエルヴィンを騙る理由がまったく無い。
 となると、残されるのはもう一つの可能性……つまり、件の魔導書のページが、エルヴィンたちにとって好ましくないものだったのではないか? このページに書かれている魔法は、言わずと知れた豆人退散の術である。アナランド人がぱっと見たところ、虫除けの呪文に類するものらしい。つまり、エルヴィンが何らか虫に関連した種族であるのならば、このページを奪うのを嫌がった理由があったことになるわけだ。

 では、エルヴィンについてもう少し調べてみよう。当然ながら『モンスター事典』及び、『ソーサリー!』本編にはそのような情報はまったくない。別の視点から見てみる必要がありそうだ。
 エルヴィンは小柄ないたずら者で魔法の力を持っている。これはトールキン以前のエルフ、つまりイギリス伝承におけるエルフや妖精をルーツに持つモンスターではなかろうか。エルヴィンという名前もそうだ。Elf の複数形は Elves だ。Elvin に転ずる元になっていると想像するのは容易い。
 伝承における妖精の中には、虫の翅を備えているものも多い。それに、もっと源流へとさかのぼっていけば、北欧神話におけるアールヴへとたどり着く。かの神話において、闇の妖精(ダークアールヴ)は世界の素材となった巨人の死体に沸いた蛆虫から発したとされている。元来妖精には、虫の要素が含まれているのだ。
 もちろん、シャムタンティに住むエルヴィンが虫だというつもりはない。だが、彼らが本能的に「虫よけの呪文」を避けたということはあってもいいんじゃないか、そんな風に思えるのである……。まあ強いて言えば、蛍はイメージに近いかもしれない。夜光るし、エルヴィンたちも谷の川沿いに暮らしているわけだし。

(1/15/24)

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