◆ スロッフの祝福

 女族サチュロスから譲ってもらった堅木の槍は、聖人コレタスに祝福してもらうことことができる。
 これによって変哲もないただの武器が、敵によってはサイコロを振るまでもなく瞬殺する兵器へと変貌するのだ。そんな効果を引き起こす祝福とは、いったいどのようなものなのだろうか。

 先ずは素体となる槍のほうから見ていこう。女族サチュロスは高地ザメンの空気の中でしか生きていけない生物なので、おそらくこの堅木なる樹木はザメンに生えているのだと思われる。主人公のように外部から来た者がもたらした可能性も無いではないが、『タイタン植物図鑑』を見れば、この木はタイタン全域の林や丘陵に分布しているとある。わざわざザメン以外の地に出所を求める理由もあるまい。同じく『タイタン植物図鑑』によれば堅木で作ったスピアを僧侶や聖者が祝福することで件の超兵器が完成するとも書かれているが、これは単に『王の冠』に登場したギミックをAFF2に移植したというだけであろう。私にはこれはお手軽にすぎる気がしてならない。材料になる木はタイタン全域で採れるし、僧侶にせよ聖者にせよ決して珍しい存在ではない。冒険者の標準装備になっていたっておかしくはないぐらいだ。祝福が可能な者はほんの一握りしかおらず、その人物を探すだけでシナリオができるぐらいとするのが程よい調整ではないだろうか。コレタスこそはその高みに達した人物の一人という解釈だが、彼は『タイタン』に善の勢力の一人として載っているぐらいだ。正当な評価と言えるだろう。

 さて、そのコレタスであるが、彼は大地母神スロッフの司祭であり、そうなる前は勇敢な冒険者だった人物だ。かつてマンパンの大魔導に一撃を食らわせる寸前まで迫ったこともある……その目論見は残念ながら達せず、彼は視力を失って彷徨った末に、スロッフに仕えることになった。その後は再びマンパンに近いザメンの地へ戻り、かの砦に向かう者を諭しているようだ。盲目の身でありながら、あらゆる危険を退けていることが、彼の力量、あるいは女神の庇護の強さを証明している。コレタスが類まれなる聖者であることは誰もが認めるところだろう。

 スロッフという女神は『ソーサリー!』においてはかなり圧の強い神だ。第三巻にてスロッフの神殿廃墟で禁忌を犯した場合、スロッフは改宗か死かを迫ってくるのだが、その有無を言わさぬ感じは相当なものであった。善に属する神であるにもかかわらず、混沌の勢力に奪われた王の冠を奪還する任務を背負う者に対してもまったく容赦はない。こんな恐ろしい女神の加護ならば、件の槍の殺傷能力にも納得がいくというものだ。
 スロッフは先に述べた通り大地の女神であり、タイタン創生においてはドワーフという種族を生み出した。彼らに信仰される主神でもある。ドワーフは言わずと知れた鍛冶に長ける者たちであり、その工芸品の中には名だたる武具も多い。植物を司る神は他にいるのだが、大地と植物は切っても切り離せない関係にある。堅木の槍が大地の力を引いているのは間違いあるまい。これらのことを考えると、スロッフこそは堅木の槍エンチャントにおいて最も力を発揮する存在と言えるのではないだろうか。先の『タイタン植物図鑑』においては「悪の意思を持つ者や悪属性のモンスター2~12体に即死効果」があるとされており、この辺りはスロッフの善性が強く出ているようだ。

(12/15/24)

【追記】
『ソーサリー!』本編では言及されていないが、第三巻でスロッフに改宗していた場合、この槍の効果はさらに高まるとするのが自然に思える。

(12/15/24)

◆ 卑怯者

 カーレのカーニバル会場で開催されている賭け試合。うまいことやれば一儲けできるイベントで、自分自身が参加することもできる。
 まずは二人の選手が戦い、その後挑戦者として名乗りを上げることができるわけだが……ここで我らがアナランダーは当てがはずれたとがっかりすることになる。チャンピオンは先の戦いで負った傷を癒しの術で治しているのである。地の文でも「汚い手が使われている」などと憤っているわけだが、さて、はたして卑怯者はどちらなのだろうか?

 そもそもチャンピオンの疲労を計算に入れている時点で、アナランド野郎は狡いと言わざるを得ない。だが、それだけではないのだ。実際に参戦してみるとわかるが、特に技術点を減らせという指示はない。要するに武器を持ってリングにあがっているのである。一方のチャンピオン側は、初戦の勝者がアンバールであろうが、ケグーであろうが、武器を使っているという描写は全くない。イラストは言わずもがな、本文においても彼らの体格については言及されているが、それだけだ。二代目チャンピオンとなれば、アナランド野郎は賞金を手にリングを降りることができるのだが、よく暴動が起きなかったものだ。

(12/26/24)

◆ 第四巻の表紙について

 第四巻の表紙イラストには、ザンズヌ連峰を背景に大魔導の影武者が「振り子」と「王の冠」を手にしている姿が描かれている。つい先日までこの振り子をして「彼は幻影の術の使い手」などと書いてしまっていたが、これは誤りであった。幻影魔法KIDの触媒は真鍮の振り子ではなく、骨の腕輪なのだ……お恥ずかしい限りである。
 では真鍮の振り子は何の呪文に使うのかというと、これは眠りの魔法NAPをかける際に必要となる触媒だ。となると影武者は一体何を眠らそうとしているのだろうと、新たな疑問が生まれた次第であります。

 まず考えたのは、この絵は如何なるシチュエーションを描いたものなのかということだ。マンパン砦のブラックエルフによれば、大魔導はアナランドから奪った冠を飾ることなんてしないという。シンのサマリタンが暗躍しているので、冠を人前に出すなんて出来ないというわけだ。実際、ゲーム中でも冠は机の中にしまわれている。それも影武者の執務室ではない、ファレン・ホワイドの部屋の机だ。とはいえ影武者は偽物の冠を持っていたので、イラストに描かれているのもこの偽物という可能性はあるだろう。しかし忘れてはならないのは、やはりNAPである。冠を手にした影武者は何者かを眠らそうとしているのだ……どんな理由で?
 今一度イラストを確認しよう。背景の山々の描かれ方を見る限り、影武者がいるのはかなりの高所のようだ。おそらくは彼が執務室を構える塔のバルコニーなのではないだろうか。ゲーム中でそのような場所にはいけないが、牢獄へ続く階段が壁に隠されていたりするので、他にも色々と隠し扉や通路があってもおかしくはあるまい。しかしながら、影武者を本物の大魔導と考えて塔を攻撃してきた敵に対し、応戦のためにバルコニーへ出てNAPで眠らせようとしているシーンなのだとした場合、冠をも持ち出している理由がわからないという問題が残る。逆に冠の力で敵を懐柔しようとしているのであれば、NAPを使う必要はないはずだ。そもそもの話、影武者が本物の冠を扱う権限を持っているとも思えない。『ソーサリー・キャンペーン』では、この影武者は単に「配下の妖術師の一人」に過ぎないとされているぐらいなのだから。

 となると、答えは一つしかあるまい。この絵が表しているのは、アナランドから戻ったバードマンが冠を献上した瞬間なのだ。冠を受け取るのは影武者の仕事であろう。本物の大魔導がバードマンの前に姿を現すことはまずあるまい。そんな用心深い男としては、冠の詳細を知る者は少なければ少ないほどいいはずである……つまり、影武者が振り上げる振り子の先には、アナランドから戻ったばかりのバードマンがいるのだ。ZAPやHOTなどの攻撃魔法で殺すこともできたはずだが、万が一、砦を守る他のバードマンらに燃えながら墜ちる同胞の姿を見られてしまったのなら、これはややこしい事態を引き起こしてしまうだろう。ならば一旦眠らせて、それから密かに始末すればよいと影武者は考えた……そうやって冠は誰にも知られることなく、本物の大魔導のもとへ渡ったのだと、そういう想像である。

(1/5/25)

メニューへ戻る

次へ進む

前へ戻る