★ シャムタンティのB級魔女たち

 南カーカバードのシャムタンティ丘陵には、二人の名高い魔女がいる。ただではお礼の品は渡さないアリアンナと、痺れ茶会のガザ・ムーンだ。二人とも魔術の腕はなかなかのものだが、どこかぬけている面も持っているようだ。前者に関しては言うまでも無い。エルヴィン達によって檻に閉じ込められている以上、言い訳はできまい。しかも勝手知ったる自宅で、だ。これではどんなに強力な呪詛を持っていても、インスタント木のゴーレムを使役しようとB級の烙印は免れまい。
 ガザ・ムーンはガザ・ムーンで大きな失態を犯している。主人公にティーカップの小細工を見抜かれる件ではない。これは選択次第で功をなす場合もあるのだから、失態には数えられないだろう。では彼女がやらかしちゃったのは何か? もちろん魔法の呪文の書のページを盗まれたことである。しかも、老いの術をかけることには成功しているものの、結局盗賊には逃げられている。ガザ・ムーンが特に面識の無い主人公に対してのみ、例の罠を仕掛けていると考える理由は無い。彼女は常にああやって生活費を稼いでいると考えるのが自然である。当然、件の盗賊にも仕掛けたに違いないのだ。そう、彼女は二重に失態を犯している。盗賊が逃げることに成功しているということは、奴は痺れ薬には引っかからなかったということだ。ガザ・ムーンが解毒剤を飲みにいった隙に呪文書のページが奪われたと考えれば、彼女ほどの魔法の使い手が盗賊に逃げられたことの説明もつく。
 ううむ、こうしてみるとどうにも格好がつかない二人である。やはりシャムタンティは比較的安全な地ということなのだろう。

 …ちなみにガザ・ムーンを出し抜いた盗賊も、速足の術を使う魔法使いである可能性が高いのだが、彼もまたカントパーニのはずれの木の上で、木からおりれなくなるという情けない状況に陥っている。シャムタンティの魔法使い達は男女問わずB級のようだ。しかしながら、この間抜けさはなんとなく親しみを覚える。なんとも暖か味のある魔法使いたちだ。

(3/21/06)

★ とある貴方の場合

八〇〇

 君は窓に歩み寄り、笛を吹く。甲高くさえずるような音が銀の楽器からほとばしり、笛の主が呼ばれてくるのを君は待つ。しばらくしても何も起きぬため、気をもみだす。だが呼びかけはしっかりと聞こえていた。
 窓辺で翼の音がし、見覚えのある顔があとに続く。ピーウィット・クルーの顔が現れる。「冠は手に入れたか?」と尋ねられる。君はうなずき、苦労した話をしながら、背嚢を撫でて冠の無事を確かめる。「では行こう!」と鳥人は叫ぶ。


  「…だが、その『壊れた巨大な腰掛』は置いていってくれ。とてもじゃないが重くて運べぬ。」

 君はうなずき、苦労した話をしながら、背嚢を撫でて冠の無事を確かめる。「では行こう!」と鳥人は叫ぶ。


  「…だが、その賭け試合とフランカーでインチキしたくさい金貨の山は(以下略」

(3/29/06)

☆★◆ 運命の輪

 北カーレのヴラダの賭博場で遊べる「運命の輪」。金貨1枚がうまくすれば20枚に化けるというこのギャンブル。その仕組みは至極簡単で、第二巻のページ下部、本サイコロの隣に当たりが書き込まれている。何も書かれてないページは外れ。つまり、ページルーレット?という感じである。
 さて、私の手元に3冊の第二巻がある。英語復刻Wizard版、創元版赤本、創土版だ。この3冊はまぁ当然だが厚さが違う。創元版と創土版は大体同じぐらいだが、創土版の本文が二段組みであることを考えると、やはり同じと考えるわけにはいくまい。
 何が言いたいかというとですね。ページ数とパラグラフの関係は3者とも異なるってことです。ページ数が違えば、当たり外れの確率も異なるに違いないということです。

 では本題。まずは3つの第二巻のページ数を見てみましょうかね。

創元版 368ページ
創土版 238ページ
英語復刻版 304ページ

 むむ。同じぐらいの厚さに見えた創元版と創土版では実に100ページ以上の差がある。紙質の差だな、これは。
 次に見るのは、当たりの数である。運命の輪の当たりは「金貨20枚獲得」「金貨10枚獲得」そして「金貨5枚獲得」の三種類だ。

金貨20枚獲得金貨10枚獲得金貨5枚獲得
創元版438
創土版438
Wizard版5411

 …あれ?
 創元版は途中から本サイコロが無くなってるですよ? パラグラフ366のページから先にサイコロがないよ。当然当たり表示もそこから先にはありません。ちょっと脱線してしまいますが、気になったので他の3冊も見てみたところ、やはりどれも途中からサイコロがない様子。うーん、もしかして、サイコロまで原書からもってきたのかな? Wizard版はちゃんと最後までサイコロがあるし、なにより出版時期を考えると、サイコロ移植があったとすれば、それは元祖たるPuffin版からに違いあるまい。手元にあるPuffin版は第一巻のみなので、ちょっと見比べてみることに。
 創元版第一巻の最初のサイコロは3-5。一方最後のサイコロは1-2。Puffin版のサイコロはというと、最初が3-5。最後が6-3であった。単純な移植ではないらしい。謎だ。数だけ合わせてあるのかな?

 サイコロの数を数えるのは面倒くさいので、ここらで本道に戻ろうかと思う。うん。
 ページ数/2を100%(サイコロは見開きの片方にしかないから)として、上の表を確率に直してみるとこうなる。

金貨20枚獲得金貨10枚獲得金貨5枚獲得当たり合計
創元版2.17%1.63%4.34%8.14%
創土版3.36%2.52%6.72%12.60%
Wizard版3.28%2.63%7.23%13.14%

※小数点三位以下切り捨て

 んー。大分差が出てますなぁ。空白ページが多い創元版が一番厳しい。稼ぐつもりなら、創元版での旅はオススメできません。金貨20枚のチャンスは僅かに創土版が上回りますが、当たり全体ではWizard版のほうが有利です。とはいえ、この2者の差はそう大きいものではありません。
 手元にPuffin版の第二巻がないため、どのヴァージョンが一番客に優しいカジノなのかは断言できませんが、とりあえずのところ、勝率が高くて日本語が通じる創土版ヴラダの賭博場がオススメといったところでしょうか。  

(5/8/06)

【追記】
 Puffin版が(少し前に)手に入ったので、Puffinヴラダも調べてみた。

金貨20枚獲得金貨10枚獲得金貨5枚獲得当たり合計
創元版2.17%1.63%4.34%8.14%
創土版3.36%2.52%6.72%12.60%
Wizard版3.28%2.63%7.23%13.14%
Puffin版4.52%3.39%9.04%16.95%

※小数点三位以下切り捨て

 なんとPuffin版が一番当たりが出やすいことが判明! 狙うならココだ!

(4/3/10)

【追追記】
 FFコレクション版についても調べてみましょう。本としては328ページとなっており、創元版よりやや薄い。

金貨20枚獲得金貨10枚獲得金貨5枚獲得当たり合計
創元版2.17%1.63%4.34%8.14%
創土版3.36%2.52%6.72%12.60%
Wizard版3.28%2.63%7.23%13.14%
Puffin版4.52%3.39%9.04%16.95%
FFコレクション版0.60%0.60%2.43%3.64%

※小数点三位以下切り捨て

 ……なんだこの渋さは。ダントツで厳しい。というか、明らかに設定ミスではないか?
 金貨20枚と10枚の当たりがそれぞれ1つのみ。金貨5枚ですらも4つしかない。なんて優しくない賭博場だ!
 見落としじゃないよな? 自分の目を疑うで……

 これはあれだ。賭博なんぞに現を抜かすなとのリーブラ様の思し召しなのかもしれん。

(3/19/24)

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