高地ザメンの女サテュロスたちからもらえる魔法の品々。この中に、実は一風変わったものが混じっている。いくつかの呪文の触媒の中に、橙色の粉末が混じっているのである。ちなみにNIPの呪文に使うのは、黄色い粉末である。これは一体何なのだろうか? ちなみにこれは英語版のみの話で、日本訳では創元創土版ともに黄色い粉末に修正されている。(原文はOrange powder)
おそらく誤植であろう。あるいは、レアアイテムとしてもいいかもしれない。文に忠実にゲームを進めるならば、魔法の触媒としては使えないアイテムである。
さて、このアイテムは日本語訳では黄色い粉末なのである。そう、グローバルな視点で言えば、このアイテムは黄色くて橙色の粉末なのである。英語では役立たないアイテムであるが、日本語では立派にNIPの触媒としてつかえる。同一アイテムとして見た場合、ここに1つのヒントが発生する。すなわち、この黄色い粉末の正体は何物か? という問いに対するヒントである。
まずは黄色い粉末の候補を挙げてみよう。すぐに思いつくところでは、カレー粉、ターメリック、硫黄、黄砂、スギ花粉といったところだろうか。とりあえず黄砂は除外していいだろう。もしも砂だったなら、MUDの触媒を兼ねないとおかしいからだ。残ったもので、カレー粉とターメリックは一緒にしてもかまわないだろう。カレー粉の黄色成分はターメリックだからだ。カレー粉、硫黄、スギ花粉の三種で、橙色であっても不思議でないものがあればいいのだが……。
1)カレー粉
ターメリックを炒めると橙色になる。こいつはいきなりビンゴときたぜ!
女サテュロスたちはターメリックに火を通して保存する風習を持っているに違いない。
2)硫黄
融解した硫黄に塩素分子を作用させると、橙色の液体が得られるとWeb検索したら出てきた。女サテュロスがいきなり科学的な種族になってしまった。数年前にはやった萌化ゲームブックをやるなら、白衣の似合う女マッドサイエンティストということか! しかしながら、液体ではちょっとダメであろう。残念ながら硫黄ではないようだ。
3)スギ花粉
オレンジ色でも充分いける。だがNIPを使うたびに、こいつを鼻から吸い込むなんてのは言語道断である。どういう連中なんだ、アナランド人というのは!
というわけでNIPの触媒はターメリックであると考えることができると思うのだが、いかがなものだろうか。
【追記】
FFコレクション版では、なんと原文に忠実に【オレンジ色の粉末】となっている。希少品だぞ!
『タイタン』によれば、悪意の神であるスラングの教えとして「非信者の市民を殺せ」というものがあり、街の施政者たちは手を焼いているそうである。……はて? カレーの聖人はスラングの司祭であるがそのような血生臭いイメージではなかったぞ。
カレーにおけるスラングの信奉者達は、この街にしては穏やかな印象である。司祭は聖人として尊敬を集めているし、異邦者にして異教徒である主人公に対しても、聖域への立ち入りが自由なうえに、リドルに失敗したときのみ改宗を迫るという温さだ。ゲームを遊ぶ身としては大変ありがたい話ではあれど、スラングに仕える者としてはどうなのだろうか。
この問題を考えるにあたり、カレーという場所がもつ特性は非常に重要である。靴紐を得るために殺人をもいとわないゴロツキどもが跋扈し、さらには海賊や赤目たちも横行している。住人たちは住人たちで自らの身を守るために罠を導入し、しかもお互いを信用できないために罠の場所を秘密とした。結果、自分達の知らない場所には近づかないようにして暮らしているという。スラングの教えである「スラングを信じぬ民を殺せ」を実践しようとしようものなら、罠にかかって死んでしまうこと間違いなしだ。カレーという場所では、スラングの教えは機能しないのである。
だが司祭として、布教は絶対である。かの聖人はこう考えたのかもしれない。カレーの街こそは、スラングの教えにぴったりだと。悪意の神を信じていなくとも、カレーの住人達はその教えをある意味で実践している。だったら、機会を与えてスラングの信徒にしていけばいい。
こういうわけで、カレーの礼拝堂では司祭による「試練」が行われるようになり、数学に弱いカレーの市民たちは、次々とスラングの信徒となっているわけである。
マンパン砦の奥深く、尖塔の頂にある自分の部屋で様々な秘策を練り、また邪悪な秘儀の数々を執り行っているであろう大魔法使い。その活動に必要となる様々の文献、装置などが満載と思われるその書斎は、どのような様子をしているのであろうか。
……もちろん、ここでいうのは「大魔法使いの塔」、つまり牢獄塔のことではない。そう、ファレン・ワイドがいたあの部屋のことである。
なぜ影武者の部屋ではないのか。もちろん理由はある。確かに影武者の部屋には天体望遠鏡やらなにやら文明的なものが揃っているが、肝心のものが無いのだ。言うまでも無く「諸王の冠」である。冠がしまわれているのはファレン・ワイドの部屋の机の中であり、ようするにあの殺風景な部屋こそが、大魔法使いの部屋であるということである。
ファレン・ワイドという隠れ蓑で生活する大魔法使い。当然、その部屋には防衛の手段が揃っていなければならない。何しろ砦の者たちには「大魔法使いはあそこに住んでいる」と思われているのである。万が一、そこに住んでいるのが一見無害で無力な老人と知られたらどうなるだろうか。何しろマンパンの連中ときたら粘液獣を「いたぶって」遊ぶような奴らなのだ。スローベンドアで守られているとはいえ、カルトゥームが鍵を持っている。いかに衛兵隊長とは言え、他人に守りを一部でも任せているのでは万全とは言えまい。
つまり、あの部屋には大魔法使いその人だけの「守り」が存在しているはずなのである。彼が魔法使いであるからして、それは魔法の防御に違いない。
ジャクソンによるTRPG『ファイティング・ファンタジー』に収められているミニシナリオ「願いの井戸」にいかにもファレンの部屋に使われていそうな魔法の仕掛けがある。それは一見何も無い殺風景な部屋なのだが、プレーヤー達が立ち入ってきっかり1分後、部屋の様相が変わりはじめるという魔法だ。。あっという間に書架が、暖炉が、飲み物のカップをのせた台座が、そして部屋のあるじである魔法使いナンドラスが姿を現すのである。