8月28日(木)
最後の日。最後のまとめだのしなくちゃいけないのだが、あまり考えていない。図書室では、昨日、j女性の図書館スタッフ、シェキバが描きかけていた絵本がすでにできている。彼女の絵本は、アフガン人の感じが非常に出ている。立て膝をした感じ、服の感じなども、とてもアフガンっぽい。最初に笛を吹いている男の絵などアジマルに似ている。色鉛筆で描いているが、色の感じも好きだ。彼女は、もう一冊絵本を作っている。それは、「おばあさんとこぶた」みたいな、繰り返しの絵本。猫がミルクを飲みたい・・というと、おばあさんは、山羊に聞いておくれ。山羊に聞くと、草を刈っておくれ・・・草を刈ってくれるように男の人に頼むと、腹が減っているからパンをおくれ・・・そこで、猫はパンをもらってくると、男は草を刈り、山羊は乳を出し・・・・そして、おばあさんは猫にミルクをあげました・・・・というような話である。
「この話は、あなたが考えたの?」と聞くと、シェキバは「お父さんが話してくれた話なの」と。彼女のお父さんは元先生だという。ずっと子どもたちを教えてきた教育者だそうだ。お母さんは彼女のお姉さんと、9ヶ月前にアメリカに行ったそうだ。お姉さんは、「アフガンのように自由のない国はイヤだ」と、行ってしまったのだという。彼女は、行きたくなかったと。それで、お父さんと兄弟と一緒に、ペシャワールにいる。彼女たちは、じきにアフガニスタンに戻りたいと持っている。
シェキバに、「自分の絵本を子どもたちにお話してあげて」というと、彼女は回りの子どもたちにやさしく話している。小さくて一番やんちゃな女の子、スメーラは、シェキバが作った絵本が大好きなようで、いつも抱えている。そんな姿が、また彼女には嬉しいに違いない。
隣の、ナディラがやっている授業を見る。ナディラは、まじめな教育者である。元、役人だったとか?できる女性に違いない。でも、食事の食べ方を見ていると、リンゴの皮も神経質なほど細かくむいている。私は、半分に切ったリンゴを皮ごと食べてしまったが、彼女は性格上、そんなことはとてもできない・・・といったタイプである。もちろん役割なのだろうけれど、他の女の人たちが、隣でキャラキャラしている時も、一人で子どもたちを教えている。
今日が最後だから、女の子のクラスでも、もう一度、お話をさせてもらった。もう一度、全部話したかったのだ。全体でやる時は、なぜか、おおきなかぶでは、ひっぱると拍手が起きる。先生が、チャクチャクというからであるが・・・・いちいち拍手されると、照れてしまう。スメーラは、もうかぶりつきの席なのであるが、この子は、頭の回転が早い上に、何度ももう聞いているので、「ガンピーさん」なんかは、「ザ・ハム・ターセサラ・トレレイシュ?(一緒に行ってもいい?)」という前から、「デーラデラ・マナナ(ありがとう)」と、早々と次の次のセリフをいうのである。
男の子の方に絵本を持っていくと、みんなが、握手をして迎えてくれる。このACCに関して言うと、女の子の方が多数派であるし、先生も女の方が多いし、男の子はどちらかというと、旗色が悪いのだが、だから余計にかもしれないけれど、みんな、ハロー、サラームアレイコム、とたいそうな歓迎ぶりだ。
今日は、男の子たちに混ざって、小さな、本当にお人形みたいな女の子がいた。女の子の中に、弟たちが混ざっているのはよく見ていたが、男の子たちの中に、女の子が一人混じっている。まるで、みんなのアイドル、お姫様のようにかわいがられている。この子、サビーナは、ガキ大将1の妹である。ガキ大将1はハンサムであるが、よく似たかわいい子だ。でも、ガキ大将2もかわいがっているようだが、サビーナも、誰にでもよくなついている。あのアーティスト先生、ヌルラマンもだっこして可愛がっている。こんな様子を見ていると、パシュトゥン人が、決して女という性を低く見ているようには見えない。ただ、自分たちの保護下にあって守るもの・・・他の者には渡さないもの。女が勝手に、自分たちの保護下から勝手に出ていってしまってはいけないもの・・・だと思っているのかもしれない。
男の子たちに話をする。サビーナもいたので、「コロちゃんはどこ?」からはじめた。「あぁ、私の息子(子犬)はどこでしょう?」と母犬が言う。そして、サビーナに、「ほら、ここかな?」とめくらせようとすると、最初は手を出さなかったが、めくると、いろんな動物が出てくるのがわかると、次もめくりたがった。絵本の目の前に突っ立って、大喜びして離れないので、お兄ちゃんが自分の方に抱き寄せていた。
おおきなかぶ・・・ガンピー・・・・さんびきのやぎ・・ 10日前に話したっきり、今日は2回目であったので、男の子たちにはとても新鮮のようで、みんな素直に驚き、のりだし見てくれた。嬉しかった。また、サビーナの嬉しそうな顔ったらなかった。彼女はきっと、とっても元気女の子になるのだろう。「ガンピー」のうさぎのところで、「ハルゴッシュ」と子どもたちが言うと、ヌルラマンが「ちがう、シュペイ(に似た響き)だ」と言うので、これは、シュペイ(犬)じゃないよ・・・というと、「ハルゴーッシュはダリ語だ。シュペイ?はパシュトゥー語」と。そうか・・・女の人たちは、ダリ語スピーカーなので、パシュトゥ語にあまりこだわらないが、ヌルラマンはパシュトゥンであるから、正しいパシュトゥを教えようとしているようだ。ちなみに、かぶは、パシュトゥ語でテープル。シャルガマはダリ語なのだそうだ。ダリ語とパシュトゥン語は、かなり混じって使われているようである。
11時に子どもたちは帰り、昼休みは長い。彼女たちは、
「私たちは、本当はシャワールなんかかぶりたくないの。家ではかぶっていないのよ。でも、外に出るときはかぶって顔を隠さないと、あちこちからいろいろ言われるし、それに、男の人は、女が顔を隠す方が好きなのよ。でも、本当は全然かぶりたくないわ」と、口々に言った。
昼休みにはお化粧直しをしている。みんな、本来は人前では顔は隠すものなのだろうに、きれいにお化粧をしている。私の化粧品を見せてくれ、興味がありありだ。ディアナは、顔の黒いシミが気になっているらしい。日本にはこういうのに効く薬があるの?と聞く。
今日は私が最後ということで、仕事の後、みんなで一緒にアイスクリームを食べに行く。ネロファンは、「シラーズシラーズ」と高級レストランの名をつぶやいているが、シラーズでアイスを食べるというのは、きっと資生堂パーラーでみんなにおごる・・・くらいの感覚なのだろう。それで、結局はバーガーやさんで、みんなでアイスを食べて、最後の打ち上げとなった。市川さんの話では、みんな大食いで、アイスを一人何回もおかわりするそうだが、今回は遠慮したのか、1つずつであった。イブラヒムは血圧が高いそうで、頭が痛い・・・と食べない。太っちょのマンガルは、糖尿だのいろいろと病気があるそうだが、アイスをいとおしそうに食べている。
車で1人1人、女の人たちを自宅近くまで送り届ける。彼女たちは車の中では、シャワールが頭からずれ落ちても気にせずに、大声で笑っているが、車を降りる時には、シャワールを、キッキッキと(音はでないけど)と目だけ出してまき直す。そして、布の間からのぞく目だけで少しほほえむと、足早に歩いていった。