国境を越える子どもたち(2)

「子ども小屋に来る子どもたち」

 バンビナイ難民キャンプの端に、竹の小屋ができ、「子ども小屋」と名付けられた。子どもたちが、自分たちの好きなことをできる場所にしたかった。相変わらず子どもたちはやんちゃであったが、中には手伝ってくれる子どもたちも出てきた。

1986年1月9日 アチャー(9)は、美人でいつも妹をおぶっている。朝、小屋の掃除を手伝ってくれる。掃き終わるとアチャーは、「みんなが手を洗ってから、本を持ってくるんでしょ?」と言う。えらい!わかってる。一緒にバケツに水を汲んできて、チビたちに手を洗わせると、アチャーは走って本を入れた箱を取りにいってくれた。


いつも妹をおんぶしていたアチャーは、妹がよちよち歩き出すと
今度は弟をおぶって遊びにきた

 

1月14日 パンタオが絵を描いている。背中には妹ポオーをおんぶしている。まだ小さな赤ちゃんなのに、おねえちゃんのやっていることを目をくりくりさせて興味深そうに見ている。小さなおねえちゃんの背中で、遊びのリズムに揺られて子どもは、まだ赤ちゃんの頃から強さを感じさせる。

1月28日 おにいちゃんおねえちゃんに連れられて、たくさんのチビも来る。子どもたちに人気のある本ほど汚くなって破れているけれど、私は一生懸命修繕して見せている。

そんな大切な本なのに、まだよちよちのチビが、はさみを持っていざページをちょきちょき切ろうとしているのを発見。「こらーっ」とすっ飛んでいくが一瞬遅し。すると向こうでもポオーが、ページをびりびり破いた。頭にきた私が、お尻をペンとたたくとワーンと泣き出す。するとパンタオがすっ飛んできて、仕返しに私のお尻をペンとたたいた。


子ども小屋の前で、
左、ポオーをおんぶしたパンタオ。
背中にいても、いつも目をくりくりさせて、もう子ども社会の中にいる。
 

2月6日 マイナン、オビアンは反抗期。私に飛びかかってくると、服を両側から引っ張るので、シャツが破けた。その上「きよこ、モッピー(おちんちん)」とうるさい。私も「マイナン、モッピー」と言い返した。

2月21日 マイナンが珍しく甘えた声を出してすり寄ってきた。「本、見せてね。さんびきのやぎの本ねぇー」「あれ、今日、持ってきてないよ」

その途端、反抗的な態度になり「きよこ、モッピー」とさんざん悪態をついて行った。

3月11日 小学校に行くようになったマイナンは、学校の友達を連れて来ると、絵本を自慢そうに見せている。ちょうどその時、他の子が本を投げ、私が怒ると泣いてしまった。そんな騒ぎの後、マイナンの友達たちは「帰るね」と出ていった。マイナンはあわてて私のところに来ると、

「またおいでって言わないと、明日来ないかもよ」と言う。そこで私は、後ろ姿に大声でどなった。

「またおいでねー」「うん」「また明日ねぇ」「うん!」

 


夕暮れ時、水浴びをする子どもたち。
キャンプの中では、吸水タンクが水の供給源だ。
あぁ、気持ちいい
 

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