国境を越える子どもたち(4)

「絵を描く子どもたち」


かごを背負ったまま、クレヨンをしっかり握って絵を描く。
「白鷹」の箱は、私が中身をちびちび楽しんだ後、クレヨン入れになった。

 

シ−リ−はどろんこなどおかまいなしで駆けずり回っている四才の男の子。紙中、赤紫のクレヨンで塗りたくり、嬉々として「描けたよ!ハイ!」と持ってくる。「もう一枚頂戴」。すると、又同じように塗りたくって、エヘヘと嬉しそうに絵を出す。「もう一枚」・・絵はがらっと変わって、五枚目、線路のような輪の中に木か花みたいなものを描いた。紙を渡す時「何を描くの?」と尋ねると、「チトォパオ(まだわかんない)」と答える。実際クレヨンを紙におろすまで、自分でもわからないらしい。しかし、描き終わって尋ねると、何を描いたかちゃんと教えてくれる。今度は、クリスマスツリ−のようなものを四つ描くと、「これがテン、これがアポン、これがラオ」と友達の名前を言った。「へぇ−、これモンの子供なの?」「うん!」。その次は、青で丸をいっぱい描き、赤紫で塗りながら「これがテン、これがアクゥ」と、やっぱり友達の名前を言う。


今日はえのぐに挑戦。ギザギザの山を描くよ

 

 ミ−は五才の女の子。大きな目をいつもカッと見開いて、きらきらさせている。 ミ−は小屋に来るなり、「テンフ−!(おえかき)」と大声で言い、フンフ−ンなんて鼻歌なんぞ歌いながらクレヨンをしっかり握って、紙に向かう。今日はミ−が、一枚目、赤や緑を使って、山、花、太陽の絵を描く。きれい。二枚目は山を描いたものの、あまり色も塗らずに「ペッペ!(下手なの)」と言いながら渡しにくる。又一枚。でも「ペッペ!」四枚ほど描く。その後、ミ−に、「今日描いた中でどれが一番好き?」と尋ねると、「これ!!」と、一番はじめに描いた絵を勢いよく指した。



ミーはフンフンと鼻歌を歌いながら、紙に向かう。
脇目もふらず、一生懸命描き続け、終わると見せにくる。

 マイナンが一生懸命絵を描いている。二つの山を、赤、青と丁寧に塗り分け、花を描き、山の下には、丸に手足がついたような人が描いてある。「これは、シェンとオビアンとザウ(マイナンの妹)と私」と、4つの丸を指して言う。一つだけ丸が小さいので、私が「ザウは小さいのね」と言うと、マイナンはうれしそうな顔をして、「マイナンとザウは手をつないでいるの」と、二つの丸の間に線を入れた。私は感動してしまった。

 子どもたちの絵で一番多いのは、山!そして家、川、木、鶏、花々、太陽が描き込まれる。これは、彼らが育ってきた唯一知っている世界、すなわちバンビナイ難民キャンプだ。実際と違うことは、なぜか人はあまり登場しない。山岳民族であるモン族にとって、山は特別な存在なのだろうか?クレヨンを握れるようになると、まず、ギザギザを描く子が多い。彼らは海を見たことがないから、当然海は描かないが、川はよく描かれる。キャンプの中に大河はないのだが。これはメコン川なのだろうか?ラオスとタイの国境、メコン川は子どもたちにとっても特別なものだ。このメコン川を渡って難民となったのだから。


ミーは妹をおんぶしてきた。まだ小さいミーの半分以上もある
重いだろうに、ぜんぜんそぶりも見せず、立ったまま絵を描いていた。
 

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