2010年12月21日 もうすぐクリスマス

 あっという間に、今年も終わりが近づいている。もうすぐクリスマスだ。
 ラオスでは、特別クリスマスを祝う習慣はなかったようだけれど、最近は、このヴィエンチャンでは、ホテルのイルミネーションや、おもちゃのクリスマスツリ―を売っていたりする。先日も、図書館に来た女の子、ピムが
「ラオスの家には、煙突がないから、サンタクロースが入ってこられないのよねぇ」と言う。私は、
「ハハハ、この図書館は、壁がなくて隙間だらけだから、ここには、入って来られるけどねぇ」と言った。少し前まで、クリスマスのことやサンタクロースを扱った絵本は、このラオスでは通じないなぁ・・・と思っていたけれど・・・・子どもたちに浸透するのは早い。もちろん、あまり宗教的なことは関係ないので、日本人が、クリスマスを祝うのと同じような感じである。

 さて、私たち、この図書館でも、クリスマスパーティをすることにした。ゲームをしたりして遊んで、あとは、お菓子なんかを出して、偽のサンタクロースに登場してもらおうというものだ。今度の日曜日、26日にやるつもりである。

 私は、イメージとしては、「ぐりとぐら」が、野外でケーキを焼く・・・・ような、そんな手作りお菓子を作ってクリスマスパーティをしたら楽しいだろうなぁ・・・・と思っていた。
 うちにはオーブンもないし、蒸しケーキなら、何度か作っているのだけれど、オーブンがあればいいのに・・・・


 なんと、今朝、庭の隅に、レンガで石窯ができてしまった。ダンナが、先週土曜、突如、作業を始め、図書館に来ていた子どもたちも「いったい何?何ができるの?」と、砂運びを手伝った。

「パン焼き窯を作るんだよ!」

 ダンナは、レンガを積み、鉄板を入れ、黙々と作業をはじめる。2年前に日本に行った時、友人が作った手作りのパン焼き窯を見せてもらっていた。「うちにもあればいいのにね・・・」と言っていたのが、いきなり、うちにもできることになったのだ。

 こうなると日本人の私は、「なんかもっと参考にする資料とかあったらいいのに・・・自己流で大丈夫かな・・」
と思いはじめる。ウェブで検索をかけてみると、耐熱レンガやら、対火モルタルだとかいう言葉が出てくる・・・ラオスでは、手に入りにくいとしても・・・でも、じゃあ、地元のパン焼き窯はどうなっているんだろう?参考に見に行けばいいのに・・・・
「参考に、パン焼き窯があるフレンチレストランに言って、ちょっと見せてもらったら?」
 そこには友人が働いているから、頼めば見せてもらえるだろう・・・・と思う。でも、ダンナは
「それぞれのアイディアでやればいいんだ」
と見に行かない。

 そして、3日間で、パン焼き窯を作り上げてしまった。今朝、さっそく、火を入れている。

 あせったのは私である。窯の中に入れるものがなきゃ、意味がない。それで、これまで作ったこともないのに、ピザやパンの作り方を、ウェブで調べ、さっそく、「一番簡単な作り方」というピザ作りを参考に、生地を作り、トマトを煮てソースを作って、ピザを焼いてみた。ピザの方は、なんとか形がついたが、パンである。「超簡単」というパンの作り方を見て、こねて、1時間くらい置いたら、膨れた。それを、焼いてみたら、今度は、うまく焼けない。ただ、煤がついたみたいになるだけで、小麦色にならないのである。
 温度が足りないのかなぁ・・・・この窯がでかすぎるような気がするなぁ・・・・実は不経済なんじゃないかなぁ・・・・とかいろいろ思いながら、クリスマスパーティに少しはまともなパンが焼けるようになるように、これから毎日、試行錯誤をしなくちゃいけなそうだ。

 まともなパンが焼けたら、写真を出します。今日のパンは、お見せできないなぁ。


12月22日(水) 再び、パン作りに挑戦

 できそこないのパンは、小麦粉とイーストと塩と水だけの、とても素朴なパンなのであるが、まず、よく焼けなかった上に、冷めたら、小麦粉をこねたものの塊・・・といった感じになり、あまり食べられたものじゃない・・・・困ったな・・・・ダンナは味見すらもしない。しかし・・・・である。犬が、大好きなのだ。大喜びで食べる。しかも、犬にとっても噛みごたえがあるパンなので、みんな3匹とも、くちゃくちゃ一生懸命、口を動かし噛んで食べているのが可笑しい。一番デブ犬のラッキーなどは、パンのかけらをもらうと、大急ぎで外にくわえて行き、しばらくすると、また飛び跳ねるように戻ってきて、次をねだる。「はは・・・外に捨てて来てるんじゃないのか」と言うので、外を見ると、ちゃんと、前脚にはさんで食べている。「ほら、犬は味がわかるのよ!」
 その様子が、あんまり可笑しいのと、犬とはいえ、ここまで、できそこないのパンを喜んでくれると、少しは救われた気分がする。
 
 さて、でも、このままにしておくわけにはいかない。
 もう一回、挑戦。今度は、「超簡単」ではなく、手抜きをしないパン作りのやり方で挑戦。今度は、牛乳もバターも入れる。こねるのも、結構疲れるほどにこねた。ちゃんと膨れなかったらどうしよう?と最初は不安だが、パンが発酵して膨れてくるというのは、なかなか嬉しいもので、これは、結構面白い。
 
 結局、昨日は窯の温度が足りなかったようだ。
 ダンナいわく、「日本で見たパン焼き窯はさ、大きい薪を燃やして、薪が炭になった頃に、パンを入れてたよ。だから、煙くさくないし、冷めないんだ。昨日は、小さな木切れを燃やしただけだから、炭にならずに、熱さが続かないし、煙くさいだけだったんだよ」と言う。
 なるほど・・・・よく見ている。実際の経験からわかっていることが多い。私なんか、実物を見ても、実は何も観察していないことばかりだな・・・・と感じる。ラオスの人は、参考文献などにあたるということはあまりしないけど、実際によく観察して、実体験からわかっていることが多いのである。

 今日は、ダンナがでかい、炭になるような薪を入れてもしておいてくれたが、準備をはじめてからパンを焼くまでは、結構時間がかかる。さて、パンを窯を入れようとしたら、どうも温度が下がっている。ダンナはもう出かけていていない。自分で、大急ぎで薪を足し、炭をスコップですくって入れてみた。そしたら、急に、自分が、蒸気機関車で窯を炊いているような気分がしてきた。
「すごいよなぁ・・・・汽車が動くほどにエネルギーがあるんだものなぁ・・・あっそうか、あれは石炭か・・・でも、最初は木炭自動車とかあったんだっけ?」
とか、あれこれ思いながら、さて、窯の中に入れたパンを見てみると、今度は色づいている。
「うわ!すごい」
と、有頂天になっていたら、今度はパンの下が焦げてしまったが、でも、l今度はパンと呼べるような代物ができあがった。やった!窯もパンも成功だ!



 同時にピザ生地も、手抜きをしない方法で作ってみたのだが、気がついてみたら、家には私しかいない。今焼いても、一人じゃ食べられない。しかし、じゃあ、そのまま置いておけるか・・・というと、ピザ生地もパン生地も発酵するから、そのまま冷蔵庫に入れてとっておけるものじゃないらしい。あれこれ、ウェブで調べてみたら、ピザ生地の冷凍の仕方が書いてあったので、とりあえず冷凍してみたが、本当はあまり冷凍などするものじゃないらしい。
 なるほど、発酵する相手というのは、相手の発酵の都合があるから、なるほど〜人間の思うようにはいかないものか・・・・その上、窯の火の都合もあるし・・・・これは、なかなか手ごわい、奥が深いぞぞ・・・と思ったのである。


2010年12月25日 クリスマス会の準備

 メリークリスマス・・・・だけど、クリスマスの日に、翌日のクリスマス会の準備をした。
 新年に向け、図書館の飾りを新しくして、自分たちで帽子を作る。
 ボール紙を切って、三角帽子を作り、それにそれぞれ飾りをつけて作った。
「きらきらした紙があればいいのに。近くのお店で売ってるよ」と女の子たちが言うので、買ってきてもらい、それを切って貼って、それぞれが作る。最初、一枚そのままを、帽子に貼っつけようとする子がいるので、
「だめだめ。1枚は使っちゃだめ。節約してよ」
と怒鳴る私。子どもたちが工作をはじめると、まぁ、切り残しをそのまま捨てたりするので、もったいないこと・・・・・「誰が予算出してると思ってんだよ・・」と腹の中で思うわけで・・・「切り残しも使わなくちゃだめよ!」と私はけちけちと言う。
 30人くらいの子どもたちが、わいわいと帽子を作った。



 ちょっと遠くに引っ越したガキ大将、レェも来て、「ぼくも作る」と作り出した。最初は、「ぼく、できないよ。ねぇ〜作ってよぉ・・」とか言っているが、「知らないよ。もう大きいんだから、自分で作ってよ」と言うと、最初は「キアッドレーオ(ふん、怒った)」とか言っていたが、そのうちに、自分でやりだし、オレンジ色でひげまで作って、「ぼくはファンタだよ」などと言っている。


 弟や妹たちが常連の、おねえさんが枝を持ってきて、「クリスマスツリーを作るわ」と、枯れ枝に、キラキラの紙をまきつけて、綿で雪をつけて、小さなお手製クリスマスツリーを作った。
 こうして一日かけて、準備するのもいいもんだな・・・・と思う。




 さて、4時に子どもたちを帰したあと、私はてんやわんや。頭の中で、順番を考えつつ、パンのための粉を練り、発酵させるのに寝かせているうちに、バナナケーキを作る準備をして、ダンナに窯に火を入れてもらい・・・・発酵したパンを形づけて、それから、窯にパンとケーキを入れ、その後、パイナップルを入れたケーキを作って焼き・・・・その後、これじゃパンは足りないな・・・とまた粉を粉ね・・・それから、ダンナの友人が来たので、前に冷凍しておいたピザ生地で、ピザを作ってだし・・・ダンナが呆れた顔をして、
「お前は、なんで、そう、わざわざ仕事を作るわけ?」と言う。私も、我ながら、そんな気がしてくる。お菓子、買ってくればいいんであるが、わざわざ無駄なことをしたいタイプらしい。でも、薪を入れた窯でケーキを焼くなんていうと、イメージ的には、それこそ、「ぐりとぐらのおきゃくさま」で、サンタクロースが、ケーキを焼いて、動物たちにプレゼントするのと同じだな・・・・と、なんとなく嬉しくなるわけである。
 とは言っても、温度計もない窯で、まず最初のパンとバナナケーキは下が焦げ過ぎ、パイナップルケーキは温度が下がっていて、中がまだ生焼け・・・とまだまだ。

12月26日(日) クリスマス会

 朝5時に起き、市場に行って、コープン(ラオスの汁かけそーめん)の材料を買い込む。それはダンナの担当で、さっそく、手際よく準備に入っている。
 7時半過ぎには子どもたちが来る。一番先に来た、双子のきょうだいは、私がホウキを持つと、「ぼくたちが掃除する」とホウキで掃いたり、モップがけをやってくれる。
 大きな女の子たちは、コープン作りを手伝い、図書館の方では、風船をふくらませたりしてあれこれ準備。

 9時半頃に、やっとスタート。中心になる中1の子たちが、司会を買ってでて、はじまる。

 最初に、なぜか急に乗り込んできた?ダンスグループ?の子どもたち(一人をのぞいて、この図書館に来たことがない・・・)が踊りを踊る。5人のグループのうち2人の男の子は、まだ小さいのに女なのである。つまり、同一性障害?・・・ラオスでは、かなりオープンに人々は受け入れているが・・・腰のしなり方などを見ていると、どうして小さい頃からそうなるんだろう?と思ってしまうが、そういうものなんだろう・・・・さて、後で聞くことでは、ここの図書館の子どもたちは、彼らを踊らせたくなかったらしいが、私が「せっかく来てくれたんだから、踊ってもらおうよ」と無理やり入れた。ここの、ラオスの踊りが好きな子どもたちは、いきなり来た子どもたちの腰をくねらせ、髪を振り乱すダンスを、かなり神妙な顔をして見ていた。異文化と言ってもいい。彼らはいきなりやってきて踊って、「次の場所に踊りに行く」と去っていった・・・・図書館の敷地を出たとたん、髪の長い男の子が、いきなりカツラを取ったそうで、そしたら坊主頭だったそうだ。子どもたちが、わぁ〜っと見に行って大笑いをしている。そうか・・・・まだ中学生なんだろう。学校には長髪で行くわけにはいかない。すでにいろんな悩みや偏見なんかにもきっともうぶつかっているんだろう。でも、踊りを通してでも、それなりに自己主張をして、ちゃんと人前に出ている彼らをえらい!と言いたいような・・・これからどうなっていうんだろうか?複雑な気持ちで見送った。
 
 さて、子どもたちの司会で、会がはじまった。



 まずは、みんなで歌をうたい、それから、ゲーム。それ以降は、大人が仕切ってしまったので、この次からは、もう少し子どもたちに任せていかなくちゃいけなかったな・・・と思うが、子どもたちも、こうなると、仕切るよりも、ゲームに夢中になっている。
 まずは、マンパオ喰い競争。日本のパン食い競争のパンが、マンパオという梨に似た味のイモ?でも生で食べる・・・になったもので、でかいマンパオだったので、まぁ、なかなか食べられずに大変。最後は二人で一つのマンパオに喰いつく。

 

 菓子喰い競争。最初は、バナナ2本とビスケットを5つ食べ・・・・水を飲み、顔を洗い・・・・小麦粉を吹いて、中にある針を見つけて風船を割る・・・・というもの。「ぼくにこれ出させてくれよ」と最初から言っていたデブの男の子が1位。彼が風船を割った時には、女の子たちはまだ最初のバナナとビスケットを食べ終わっていない・・・・みんな、まだ口に入ったままもぐもぐさせながら、粉を吹こうとして、口の中のが出そうになったりして、大笑い。
「おいしかった?」と聞くと、「おいしいけど、息ができなかった」と。 
 風船割りも、大騒ぎ。小さい子の戦いでは、最後まで、女の子ポックが、自分より大きい男の子を相手に大健闘。大きな子たちの戦いでは、レェが、勝ち抜いて、ガッツポーズをしている。



 その後には、みんな家から持ってきたお皿やどんぶりに、コープンを入れてもらってお昼ごはん。そして、私の焼いた、ケーキとパンも配る。
 さて、お味は?
「なんで、このケーキ苦いのぉ?苦いケーキでまずかった」と、バナナケーキは言われ、がっくり。
「焦げちゃったんだよ。まずかった?」
「うん。でも、もうひとつのパイナップルケーキはおいしかったよ」と言われ、少しほっ。
「まだ、新米だからさ…この次は、もう少しうまくなるよ」と弁解。

 そして、ダンナのサンタクロースの登場。やせている彼は、服の下にクッションを入れ、そのあたりだけ太って登場。なぜか、しゃべり方や声が変わっているのがおかしい。プレゼントは、ノートや鉛筆などの文房具と、ちょうど日本から知り合いの方が送ってくださった、日本の子どもたちが使わなくなったクレヨンを配った。
 じゃあ、サンタクロースと記念撮影しよう・・・そして、私たちのクリスマスはお開き。



 その後、大人たちはビールを飲んで、お疲れ様・・・・と、コープンを食べたのでした。


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