2011年1月9日(日) スマイルズのみなさんが訪ねてくれました。

 日本から「スマイルズ」のみなさんがやってきた。スマイルズとは、私の初めの職場、「おはなしきゃらばん」の時に一緒に仕事をした、元先輩が中心となって作っているボランティアお話グループ。その時々で、集まれる人をメンバーとして、日本の子どもたちにお話会をたびたび開いているが、毎年、タイやカンボジア、ミャンマー国境にも行って、子どもたちにお話をしているという。今回は、ラオスに来てくれた。メンバーは、代表の智子さん、スマイルズをすべて動かしている中心人物。同行した里恵さんは、やはり、元おはなしきゃらばんのメンバーで、その後ずっと幼稚園に勤め、今はご主人と、「子育てのんきサロンぶひぶひ」を開いている。そして智子さんの親戚で、美人で笑顔が素敵なお姉さん、操さんだ。
 
 今回の、訪問に先だって、スマイルズは、日本で子どもたちが使わなくなったクレヨン、色鉛筆などをラオスまで送って下さった。それらは、もうすでに12月のクリスマスの頃、郵便局に届いていて、一部は、クリスマスのプレゼントとして、ドンパレープ子ども図書館で、子どもたちに配らせてもらっている。

 9日は、ドンパレープ図書館を1日訪ねてくれた。 
 まずは、子どもたちにはっぴを着せ、鉢巻きを巻き、オニやひょっとこのお面をかぶって、日本のお囃子に合わせて、踊りながらぐるぐる歩く。踊るのは得意な子どもたちだが、最初はちょっと戸惑いながらも、だんだん乗ってきている。



 次は、ぞうさんの歌に合わせて、ぞうの人形を子どもたちに持たせて、動かす。じゃあ、今度は、ラオスのゾウの歌に合わせよう・・・「あれ、これタイの歌だっけ?」と言いながらも、「サーン、サーン、サーン・・・と歌いながら動かす。人形は全部、智子さんの手作りの手袋人形だ。

 次は大型絵本の「はらぺこあおむし」…子どもたちに、これも手袋から作ったあおむしの人形を持たせる。お話はここの子どもたちもよく知っているものだが、あおむしが果物を食べる時に、「あおむし、じゃあ食べて」と言うと、みんなが、大喜びで、あおむしを絵本にくっつけて、むしゃむしゃ果物を食べる真似をする。慣れてくると、構えていて「食べにおいで」と言うや否や、飛び出してくる。なんともうれしそうな顔。子どもは無邪気だな・・・と改めて思う。



 「はらぺこあおむし」 絵本の果物を食べにくるあおむしたち

 一番面白かったのは、「ガンピーさんのふなあそび」で、これは、ダンナがいきなりガンピーさん役で、舟に見立てた枠の中に入り船頭となる。お話の進行に合わせて、動物を持った子どもたちが、「ガンピーさん、乗せて」と船に乗り込んでくるというもの。大勢乗り込んで、最後には船の上で動物たちが喧嘩して、船から落ちてしまい、最後はみんなで歩いて帰って、おやつを食べる・・・という話だが、子どもたちもすっかり役になりきって、「ガンピーさん、舟に乗せて」とせりふを言って乗り込んでくるのは、なかなか愉快である。



 この他には、子どもたちの参加型の遊びの要素をかなり取り入れたお話会で、午後には、「私はまだやってなーい」と、中学生も、ガンピーさんの動物役になりたがったり、みんなもうやりたくてたまらない。
「へぇ、子どもたちって、やっぱり、結構みんな子どもなんだな・・・もっと、もっと、遊びの要素を活動に取り入れていいんだなぁ」ということを改めて教えてもらったお話会でした。午後の2回目には、様子がわかった子どもたちは、午前中よりもっと楽しんでやっていたようで、繰り返すことは大切だ・・・ということも、改めて思った。智子さんが、子どもたちが参加するプログラムを考え、お話会に使う人形や道具を全部考えて作っているということで、その努力はすごいなぁ・・・と脱帽する思いでした。
 
2011年1月11日(火) シヴィライ村、ソムサヌック村でお話


 スマイルズの人たちと、シヴィライ村を訪ね、お話会。シヴィライ村は、私が長く関わっている、帰還難民のモンの人たちの村。ちょうど、村の人のスークワン(幸福や健康を願っておこなう儀式+宴会)に招かれていたので、その儀式の前にお話会をすることになったが、大人も大勢集まっているので、小学校ではなくて、村の中の、儀式を行う家の前の小さなスペースに、小学校から子どもたちを呼んで来て、お話会を行うことになった。
 子どもたち、期待たっぷりで、子どもの誰かがはっぴを着せられたり、鉢巻きをされたりするだけで、もう会場が大笑い。その子どもたちが練り歩くだけで、大人たちも大笑いというわけで、楽しい気分が満々。

 ちょうど、儀式のために音響設備がすべて準備されていたので、そのマイクを借りて、私がモン語に訳しながら進めたが、「はらぺこあおむし」は、図書館に来る小学生はお話を知っているが、あおむしの人形を渡されたまだお話がわからないような小さな子どもたちが、「りんごを一つ食べました」という文章のところで、他の果物をあおむしの人形でつついたりすると、それだけで、大人も大笑い。子どもたちはもちろんだが、村の人たちが、大口をあけて大笑いして、子どもたちとお話会を見ながら、大いに一緒に楽しんでいるのが、とてもあたたかく、よかった。

 この村は、農地も少なく、生活は結構きびしい村である。農繁期になると、昼間に村の中で大人たちの姿を見ることがないような時期もあるが、こうして、村のみんながそろった時に、子どもたちがお話をこんなに楽しんでいるという楽しい時間を、みんなで持ててよかったな・・・・と思う。



シヴィライ村の子どもたち


 午後、隣村のソムサヌック村の小学校へ行く。ここは、図書館が入っていないので、あまりお話を知っている子はいない。始めて見る絵本だろう、1ページ開くごとに、「お〜」と声が上がる。とても元気がよく、おおいに楽しんでいるんであるが、子どもたちは200人以上おり、後ろの子が見えないということと、マイクの調子が悪く聞こえない・・・ということもあったかもしれないが、押すわ押すわ・・・「前に出てくるな!」というのに、おしくらまんじゅう状態になり、気が気ではないが、子どもたち、たくましいのか、結局、泣き出す子も一人もおらず、なんとか怪我もなく終わった。
「日本の子どもだったら、泣き出したり、怪我したりしてるよね。こっちの子はさすがね」
と、日本から来たスマイルズの人たちも感心?


 
ソムサヌック村の子どもたち。


 隣の村のシヴィライは、こちらが慣れているということもあるし、子どもたちがお話を聞くことに慣れているというせいか、ここまでわぁわぁの大騒ぎにはならなかったが・・・・この村が、モンとラオの両方の子がいるということや、村の大きさやら、いろんな原因があるのだろう。でも、こんなおしくらまんじゅうの中でも、これだけ楽しそうな顔していたから、子どもたち、よっぽど楽しかったのだろう。今日は、わぁわぁになってしまったが、 きっと、こういうところの子どもたちは、繰り返し来ることで、お話を聞く姿勢も変わってくるんだろうになぁ・・・・と思いながら、その日、宿泊するワンヴィエンに向かう。

 
2011年1月13日(木) ナーファイ村にて
 ナーファイ村は、ダンナの実家。両親ときょうだいたちがいる村である。その村の小学校を訪ねた。いつも実家を訪ねるのは、土日が多いせいか、小学校を訪ねたことがなかった。130人ほどのこじんまりとした小学校で、村のはずれ、田んぼが見渡せる場所にあった。図書室は、日本のNGO「ラオスの子ども」が設置した図書室があり、本もかなり数が揃っていた。結構、NGOの地道な活動が隅々(?)まで届いているなぁ・・・・と思う。
 さて、先日と打ってかわって、ここの子どもたちは、わぁっと盛り上がるところは盛り上がるが、聞くところでは、シーンと聞き、とてもやりやすかった。1回も静かにしろ・・・ということは言わずにすんだ。参加するところはみんな「はーい、はーい、やりたい」と手を挙げるが、「一度もやっていない子を、やらせてあげてね」と言うと、「私、やった」と正直に他の子にゆずったりしていて、とてもしっとりしている子どもたちだった。



「ぞうさんのかさ」を演じる里恵さん



ナーファイ小学校の子どもたち

 最後に、エリック・カールの絵本「できるかな?」を歌にしたものに合わせて、いろんな動物の真似をするリズム遊び?をやる。これはなかなか楽しい。「ゴリラみたいに胸たたける?できる?できる?」と歌いながら、胸をたたく振りをする。その後、「できる!」とみんなで叫んで、走り回るのであるが・・・単純だが面白い。みんなできゃあきゃあ言いながら走り回るのは、結構楽しいんであるが、日本の子どもだったら、小学校高学年じゃ、やらないだろうけれど、ラオスの子どもたちは、とても楽しんでやる。斜に構えてかっこをつけるところがないのである。大人もそうかもしれないのだが、直球で素直に楽しめるっていうのは、素敵なことだなと思う。
 終わった後、片付けを子どもたちが取り囲んで見ていた。ずっと以前、おはなしきゃらばんで巡回をしていた時、都会の子どもたちは、終わると、わぁっ!とあっさりと帰ってしまうが、田舎の子どもたちは、いつまでも名残惜しそうに残っていて、片付けを見ていたり、手伝ったりしてくれたのを、思い出した。
 やっぱり、おはなしを伝える仕事は楽しいなぁ、と思った。

2011年1月23日(日) みんなで、パンを作ったよ

 その後、パンは失敗だらけだったのである。何度も機会あるごとに挑戦したのだが、かまどの火加減がうまくいかずに、焦げ過ぎたり、焼けなかったり・・・・みんな、お世辞で、「でもー、おいしいですけどねぇ・・・」とか何とか言ってくれていたけれど、やはり、1日置いたら、もう固くて食べられなかったりして・・・犬は大喜びだったのである。
 さて、明日、日本に発つ私は、やはりこのままでは、自分の気がおさまらないこともあるし、一度、図書館の子どもたちと一緒にやってみたかったこともあり、いきなり、今朝、「パンを焼いてみない?」と子どもに聞いてみたら、「もちろん、やりたい!」とのことで、再び挑戦。前回は、全部自分で、火を入れて見事に失敗したので、今回は、ダンナにかまどの火入れから火加減をお任せする。
 さて、まずは、パンこね。
「みんな、よーく手を洗ってよ。手あかを全部、こねちゃうんだからね」と。
 女の子たちが来て、私が混ぜたパンだねをこねる。一番シンプルな、粉と水と塩とイーストという配合は、うまくいけばおいしいけど、失敗すると固くてどうしようもなくなってしまうので、牛乳とバターを入れる配合のものにした。
 さて、みんな順番こに、こねる。疲れた疲れた・・・と何人か交代しながらやる。
「もう、これでいいよね」
「でも、すぐは焼けないよ、待つのよ」
「え〜?待つの?」
と、こねたパン種に、濡れふきんをかけて、日向に置く。40~50分後、ふくれたふくれた。
「うわあ、ふくれたぁ」
と歓声。今度は、
「みんな手を洗って」と、小さい子も一緒に、パンを粘土細工のように、形にする。
 顔やら、カタツムリやら、それぞれが、あれこれ作る。レーズンを目にしたり、口にしたり・・・・・きっと、これからは、「しょうがパンぼうや」のお話を身近に感じることだろう。私が、長細くのばして、「へび」を作ろうとしていたら、4歳の男の子、アイが、「わぁ、キー(うんこ)だ。キーだ」と嬉しそうに笑う。だいたいこれくらいの年の子が、うんこが好きなもんだが・・・・違うよ「ヘビ」だよ。


「まだ、かまどには入れないのよ。あと、30分くらい寝かせてからよ」
 二次発酵とかいうヤツである。
「えぇ、パンって時間がかかるんだねぇ」と子どもたち。
 さて、やはり待ちきれない私は、20分くらいで、「もう焼こうか」と、かまどに。
 ダンナが、火の番をしていて、入れてみるが、なんせ、何度かわからないので、やっぱりよくわからないが、今回は、炭を多くいれたのと、時間をかけて熱したので、黒い煙はなくなっていて、かまどは熱くなっている。
「うまく焼けますように」
 さて、約20分後。かまどを開けると、子どもたちが、「わぁ〜」という声を挙げた。こういう時の子どもたちの声って、なんて素敵なんだろう・・・と、思った。
 焼けた、焼けた。今回は、今までで一番よく焼けた。
 ちょうど、お昼だったので、これで昼ごはんには足りないけれど、みんなで食べる。
「おいしいね」「また、焼こうね」「おいしいね」
と子どもたち。
 今回は、1kgの粉だったが、あっという間に、パンはなくなってしまった。明日まで置いておくと、固くなるかどうか?とか、知りたかったが・・・・残らなかった。犬は、少しだけ、子どもたちからおこぼれをもらっていた。


 さて、もったいないのは余熱である。図書館が終わって、子どもたちが帰ってから、ケチな私は、にわかに余熱がもったいなくなり、そして、「あっ、犬のご飯を、朝から忘れてた」と、急に思い出し、ボールに、残り飯と、水と、小魚を入れて、かまどに入れてみた。犬用のおじやができた。
 それから、まだもったいなぁ・・・と、のこりご飯にピザソースを混ぜて、チーズをかけて入れてみた。グラタンのようなものになった。それから、アルミ箔にサツマイモを包んでいれた。焼き芋ができた。
 それから、スペアリブに塩コショウをして、入れた。こんがりとよくやけた。
「今度やる時は、パン、ピザ、焼き芋、焼き肉、それから、きっとシチューのような料理も、この熱で、一度にできるぞ」と思う。そうしないと、薪や炭がもったいない・・・・と、ケチな私は思うのである。ただ、こういうことを前もっていっぺんに準備するのはなかなか大変で・・・・なかなかうまくはいかないけれど・・・・。
 図書館だけど、、子どもたちがいろいろな経験ができて、楽しい時間を過ごす場であればいいと思っている。
 やたら、走り回ってなかなか悪戯な男の子たちがいる。大きな女の子たちが、「キードゥ(悪戯、きかんき)よね」と言う。「キードゥだね」と答えると、「きよこもキードゥだよね」と言う。そうか・・・この年齢で、子どもにそう言われるか・・・と思いながら、こんな仕事は、キードゥじゃなきゃ、やってられるか・・・と思ったりしたわけである。
 煤と煙だらけの1日であった。
 

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