モンの民話「ジャーの話」

ジャーとは、いたずら好きでウソつき、人をだましたり、からかったり、悪知恵を働かせてばかりいる若者の名。ジャーは身分も何もない貧しい家の出身ですが、その得意の悪知恵で、王様や金持ち、権力者たちをギャフンといわせます。きっと、そんなお話を聞いて、モンの人は、自分も痛快な気分になったのかもしれません。

これは、今はアメリカにいるモンの青年チュー・ブーが、タイの難民キャンプで過ごしていた頃に作った刺繍絵本です。オリジナルの刺繍の美しさが出ないのが残念ですが、楽しい絵を楽しんで下さい。

 

むかしむかし、ジャーという若者がいた。ジャーはいつもふざけたり、いたずらばかり。ジャーの父さんはある日、こう言った。「おまえを王様にあずけて見ていただくことにしよう。わしじゃ、もう手におえないよ」


 

父さんは、ジャーを連れて竹を切りに行った。「竹を切ってかごを編み、それをジャーに背負わせて、王様のところへ連れて行くことにしよう。」

川岸に着くと、父さんはジャーに言った。

「ジャー、わしが竹かごを編んでもどってくるまで、ここでおとなしく待ってなさい。」


  

ジャーが一人で川辺に座っていると、一人の中国人の商人が馬を引いてやってきた。

ジャーがいきなり、大声でわめきはじめたので、商人はいったい何事か?と立ち止まった。

「こいつ、頭がおかしいんだろか?」


商人はジャーに聞いた。「いったい何でわめいているんだい?おまえ、おかしいのかい?」

「ちがわい。おれはこの川をまたいで渡れないのが悔しくてわめいているだけだい」


 

商人は言った。「こんな川をまたいで渡るなんて、簡単じゃないか」

それを聞くと、ジャーはまたわめきだした。