調子に乗って続編をば。
しかし、何一つ謎は解明されていないらしかった・・・(死)。
っつーか、コレ本当にゴーレツなのか?







 ―――――迷うほどに、心は君を求めて





    SEQUENCE MEDITATION 2      



くあー。
疲れた。
今週から部活の練習メニューが強化された。
試合が近づいてる為、妙に気合いの入った先輩たち。
・・・そういう雰囲気は嫌いじゃない。
いや、むしろ好きかも知れない。
試合の前の高揚感は、昔を思い出させる。



「お疲れさんでしたー」
声をかけて、部室を出る。
と。
そこには。

あいつ・・・!

忘れもしない、オレのファーストキス(対男)を奪ったアイツだ。
いや、ファーストも何ももうこれっきりにしたい体験だけどな。
ウチの生徒だったのか?
一瞬そう思ったが、着ているのは私服でウチの制服ではない。
先輩の誘い、断んないでおとなしく一緒にラーメン食いに行きゃぁ良かった。
とりあえず、関わるのはめんどうだ。
俺は無視して歩き出した。




あーぁ、練習キツかったなー。
晩飯なんだろ。
今日って、なんかおもしろいTVあったっけ?
えーと、それから・・・

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・っつーか。

なんで、アイツついて来るんだ?!


そう。
校門を出てから駅までずーっと後をついてきてる。
たまたま方向が同じなのか?とも思うが
あんなことがあった後なだけに過剰に後ろからの視線が気になる。
細っこいから、何かあっても勝つ自信はあるけど。
そーゆうタイプじゃなさそうだよな。
あーもー、なんなんだよ?


タイミング良く来た電車に乗り周りを見渡すが車内には見あたらない。
なんだ、やっぱたまたま駅の方に来ただけで
全部オレの思い過ごし?
ほっとすると同時に、自意識過剰だった自分を恥ずかしく思いながら
ふとホームに目を移す。

・・・・・・いるじゃん。

しかし、同じ電車に乗る気はないらしく、
発車ベルと同時に閉まるドア越しに、ヒラヒラと手を振ってやがる。
やっぱり、オレの後ついて来てたんじゃねーか!
何のつもりなのかと襟首の一つも締め上げたい衝動に駆られるが
無情にも電車は発車した。
こーゆーのはイライラしてどうしようもない。
今度会ったら、絶対、問いつめてやる!



その"今度"は、すぐに来た。
翌日、部活が終わって部室を出ると。


全く同じシチュエーションとは芸がないな。
いや、今はそんなことはどーでもいい。
お前は一体誰で、一体、オレに何の用なんだ?ってコトだ。
はっ!まさか、これがストーカーってヤツ?
ふふん、オレ様の魅力は性別をも越えるってことだな。
って、浸ってる場合じゃねぇだろ。
オレ、そんな趣味ねぇし。

頭の中でストーカー説をうち立ててみたところで何にもならない。
いくら仮設を立ててみても無意味だ。
本人が目の前にいるんだから、聞きゃぁいい。


俺は数歩歩いて、ヤツがついてくるのを確かめると振り向き様に声をかけた。
「おい、お前!一体・・・」
なんのつもりだと続けようとして、言葉が途切れた。
振り向いた俺に、そいつは驚くでもなく、小首をかしげて見上げてくる。
その仕草。
この感じ。
・・・知ってる。
でも、どこで・・・・・・?


奇妙な沈黙を破ったのは、あいつだった。
といっても、言葉を発したわけじゃない。
俺の腕を掴むと、そのまま何も言わずにずんずん歩き出す。
一瞬、頭が真っ白になり、そのままひっぱられるようについて行きかけた。

が、すぐに流されてる場合じゃないと気づく。
「・・・っ」
乱暴に手を振り払うと、そいつの顔が初めて歪んだ。


頼りなげな顔を見せられて、なんだか胸が痛んだが
俺が情けをかける筋合いはないんだと言い聞かせ、駅のあるほうへ方向転換する。



あいつは、ついてこなかった。



ホッとしたというのも正直なとこだけど。
なんか、それだけじゃない"何か"が。


乗り込んだ電車は人もまばらで、俺は空いている席に腰掛けた。
車窓に流れる見慣れた景色が、何か全然違う世界に見える。
あいつは誰なんだよ。
なんでこんなに気になる?
電車に揺られながら、自分の気持ちと格闘してると
正面に立った誰かの影で視界が暗くなった。
何気なく見上げると、そこには。
「豪・・・お前、何難しい顔してんだ?」
「・・・烈、兄貴?」
兄貴が着てるのはウチの学ランとは違う、紺のブレザーの制服。
兄貴の学校から家まではこの電車は使わないはずだ。
俺の疑問を見て取った烈兄貴は俺の隣に腰掛けながらご丁寧にも説明してくれた。
「S駅に参考書探しに来てたんだよ。駅前にでかい本屋あるだろ?」
なるほど。
「いつもこんくらいの電車で帰ってくんのか?空いてていいな」
「あぁ。通学ラッシュと通勤ラッシュのちょうど間なんだよなー」
「ずるい」
「この時間まで部活で走りまわってんだからずるかねーだろ」
「まー、そうなんだけどさ。
 なんか豪はいつも座って帰ってくるのかと思うとムカツク」
「なんだそりゃ」

・・・なんとなく、兄貴にあいつのことを話す気になれなかった。

「豪・・・あのさ」
「ん?」
「・・・・・・・・・・やっぱ、いー。なんでもない」
いつもなら、こういう言い方はすげぇ気になるけど
今日は自分の方にも隠し事があるやましさから、しつこく聞き返す気になれなかった。






   ×××   ×××   ×××






それから、毎日。
あいつは現れた。
いや、正確に言うと"毎日"ではない。
俺が一人で帰るときだけ。
先輩とか、友達とかが一緒の時には現れない。
(おれから見えてないだけでいるのかもしんねーけど)
だからといって、何をするでもなく。
ただ、学校から駅までの短い間、ついてくる。



名前も知らない。
声さえ聞いたことがない。



だから、それはちょとしたイタズラ心だった。
いつものように、一人で電車に乗って。
ぱっと振り返るとこっちから手を振ってやった。
いつもは、あいつが見送るのを一瞥するだけの俺がそーしたら、どーゆー反応するか。
あいつの無表情がそうそう崩れるとも思ってなかったけど
ちょっと興味があった。
別に、それだけ。
なのに、あいつときたら。


俺は、思わず、閉まる扉をすり抜けて、電車を降りていた。

だって、あいつが。




あいつがあんまり嬉しそうに微笑うから。





そっと手を伸ばすと、軽く手が重なって。
すごく、くすぐったい気持ち。
こーゆーの、何ていうんだっけ?



幸せそうなこいつの顔を見ながら・・・、
ぼんやりと、頭の奥に烈兄貴の泣き顔が浮かんだ気がした。









 ―――――もう君なしで歩けない












続・・・・いちゃう。

ってことで、3部作構成と相成りました。 次こそは烈に出番を!!
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