無理矢理3部作に収めました(吐血)。
なんかもう・・・烈が別人28号だよー。つーか、もうホントにわけわかんないよー。







 ―――――2人はいつも、壊れそうな心を抱えてた





    SEQUENCE MEDITATION 3      


部活の試合は明日に迫っていた。
強化メニューに体はボロボロだったが、オレは内面に溢れてくる充実感に疲れなど感じなかった。

まるで、あの頃のような。
いつも兄貴と2人で走っていた時の。
もうずっと忘れてた感覚。
あれに、似ている。

隣に烈兄貴はいないけど。
今、オレの隣には"あいつ"がいる。



それは今まで俺がしてきたどの付き合いとも違った。
Fフードに寄ってみたり、
一緒にゲーセン行ってみたり、
手をつないで歩いたり。

そんなことで心が満たされていく。
未だに名前も聞いていない。
そんなことはたいした問題じゃないと思えた。
彼は・・・オレが会いたいと思うとき、ふっと現れる。
オレを見て、柔らかく微笑む。
それが全て。
こんな日常が、ずっと続けばいい。
それだけが今の望み。


きっと、初めて見たときから惹かれていた。




   ×××   ×××   ×××





いつものように、他愛ない話をしながら駅への道を歩く。
今度の休みには少し遠出をしてみようとか。
あいつは嬉しそうに聞いているだけだから俺が一方的に話を続ける。
少しでも時間が長くかかるように、ゆっくりと。


そんな時に、ふと感じる視線。

強い、視線。

だけど、俺は背中にのそ視線を感じながらも振り向いたりはしなかった。
振り向いたら、何かが崩れる気がして。
予感とか、そんなんじゃないけど。


俺が自分の背後に神経を集中していると、
あいつは心配そうに俺の顔をのぞき込んでくる。
顔に出したつもりはなかったんだけどな。
こいつにこんな顔をさせたことを悔やみながら、余計なことを考えるのはやめる。
俺には、こいつがいればイイ。








あいつと別れて家へと帰ると、入り口横の塀に寄りかかっている人影が見えた。
目を凝らしてみると、それは良く知った人物だった。


「烈兄貴、何してんだ?こんなトコで」

「・・・・・・別に」
「あ、もしかして彼女でも来んの?それで待ってるとか?」
「・・・・・・」
俺、何か変なこと言ったか?
「・・・兄貴?」
「お前のこと、待ってた」
「俺?」
「っそ」
「・・・じゃー、家の中で待ってりゃいいじゃん。こんなトコで寒いだろ」
「・・・・・・そーだな」
おおよそ、兄貴らしくない緩慢な受け答え。
そういえば、兄貴の声聞くの久しぶりな気がする。
「何か話あんなら中で聞くから入ろうぜ?」
「あぁ」
それでも動く気配のない兄貴に苛立って強引に手首を掴んだ。
驚いたのは、その細さと、冷たさ。
いつからここにいたんだよ?
こんな冷えきるまで!!

兄貴はボケッとしてた俺の手をゆっくりふりほどく。
「お前のマヌケ面見てたら、何で豪のこと待ってたのか忘れちゃったよ」
「なんだよ、それ」
「まー、たいした用じゃなかったと思うんだけど。
 思い出したら言うからいーや」

いつもの・・・烈兄貴に戻った?

「?・・・中、入るんだろ?」

そう言って、烈兄貴はキレイに笑った。


俺の好きな、烈兄貴の笑顔。



小さい頃、兄貴は俺に怒ってばっかだった。
まぁ、あの頃の俺は我ながら破天荒というか・・・
兄貴の小言癖は間違いなく俺によって培われたものだろうと思う。
兄貴に言わせれば、今もガキの頃とたいして変わらないらしーけど。
愛想いいくせに俺には怒ってる顔か呆れてる顔しか見せなくて、
だから、兄貴が笑うのをみると、何か得した気分になったのを覚えてる。
兄貴はもちろん、誰にも言ったことはなかったけど、
俺に笑いかけてくれる時のあの顔が・・・大好きだった。






「豪、明日試合だろ?」
夕飯を食べながら兄貴は思いだしたように喋り始めた。
「あぁ、そーだけど・・・」
「どこでやんの?」
「N高の近くのグランド・・・って何で?」
「ん?暇だから見に行こうかと思って」

・・・・・・はい?
兄貴が?
俺の試合を?

「なんだよ、何かおかしーか?」
「いや、そーじゃねーけど・・・今までそんなこと言ったことねーじゃん」
「そーだっけ?」

よく言うぜ。
見に来いっつっても見に来なかったじゃねーか。


でも、今までなら、結構嬉しかったであろう烈兄貴の言葉に俺は複雑な気持ちになった。
明日の試合。
あいつも見に来るハズで。
別にそれはいいんだけど。
烈兄貴はどう思うだろう・・・。
自分の弟が男と付き合ってるなんて知ったら。
俺だって、未だに信じられねぇもんな。


誰に何言われても、そんなこと気にするような性格じゃないつもりだけど。




「ごっそさん。俺、先風呂入って寝るわ」
「食器くらい片づけてけよ」
「へいへい」


粗雑に食器を重ねてシンクに持っていく俺の背中に兄貴の声がかかる。


「明日、何時から?」
「・・・10:00」
「気が向いたら行くからイイトコ見せろよ」
「おう」





なぜか、兄貴に軽蔑されるのだけは恐かった。











   ×××   ×××   ×××











空は晴天。
試合は1点リードで形勢有利。
盛り上がるギャラリー。
熱くなる自分。
そのままロスタイムに突入。
後はこのまま守り抜けばいい。




守る。

何を?

いつからそんな保守的な考えになったんだよ?



ここの所、ずっと胸にあった疑問だった。
無難な道を選ぶなんて弱いヤツのすることじゃないのか?
それとも、俺はそんなにも・・・



「星馬っ、ボケッとすんなっ!」


先輩の声にはっと顔を上げる。
瞬間。
目の端に映ったのは、ギャラリーの中でも目を引く赤い髪。
それがどちらの髪なのかまでは遠目でわからないけれど。
瞼に浮かぶのは。






俺にとって最強のライバルの顔。



  たとえトップを走っていても気を抜けばいつ抜かれるかわからない緊張感。
  ゴールするまで絶対に崩さない攻めの姿勢。
  挑戦的な視線と不敵な口元。



フィールドのボールは敵が持ってる。
なら奪ってやろーじゃん。
守って勝とうなんてセコイ真似――――やめだ。




試合終了のホイッスルと同時に俺のシュートが決まった・・・・
なんてことにはならなかったけど。
点差は変わらず、俺らの勝利。
だけど、俺は試合に勝ったことよりも、最後まで勝負しきった充実感に満たされていた。
















「けっこーやるじゃん」


一度控え室に引き上げ、着替えたものの、
さっきまでの体の熱がおさまらず、俺は勝利の喜びを分かち合うチームメイトからこっそり離れ
一人グランドに戻っていた。

突然頭上から降ってきた声。
フィールドより高い、ギャラリー席から聞こえるのはよく知ったライバルのそれ。
声のした方を見上げると、もう人もまばらになったギャラリーから烈兄貴が俺を見下ろしていた。

「やっぱ、兄貴だったんだ」

「何が?」
「べっつにー。それより、オレ格好良かっただろ?」
「べっつにー」


俺はなんだか上機嫌で兄貴が呆れた顔をするのさえ、楽しかった。


「でも、まぁ・・・ロスタイムでのバカっぷりはお前らしくてよかったかもなー」
「なんだよ、バカっぷりって」
「普通、あそこは守りに入るだろ」
「いいの。あれがおれのサッカーなんだから」
なんて、さっき気づいたんだけどな。
「だからバカだってゆーんだろ。
 サッカーは団体競技だって知ってるか?」

  『豪っ!なんでお前はチームワークを乱すことばっかりするんだよ!』

「ま、関係ないところから見てる分にはお前のそーゆートコ
 見てて飽きないからいいけど」

"関係ないところ"・・・?
あぁ、そーだよな。
オレと兄貴の立っている場所は今、こんなに遠い。

急に指先がつめたくなってきたように感じるのはなんでだ?
すっと熱が冷めていく。
せっかく、いい気分だったのに・・・この冷やかな感覚が煩わしい。


「ウチのキャプテンは、どっかの『リーダー』みたく口うるさくねーもん」
「言っても聞かないから諦めてるだけだろ、きっと」


呆れ声の割に楽しそうな声。
そして、その笑顔。
好きだったはずなのに、何故か今は見たくない。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
無性にアイツの顔が見たい。
助けて欲しい。
今日は、来てくれなかったのか?

何気なくギャラリーを見渡すがそれらしき人影はない。

「・・・・・・誰か探してるのか?」

「・・・・・・・・・」

「彼氏なら、来てないぞ」


かれ・・・し?
誰の?
オレの。
なんで烈兄貴が?
混乱で頭がいっぱいのオレに兄貴はため息を落とす。

「わからないなら、いい」

わかんねーよ。
わかるわけねーじゃん。
なんなんだよ。

きびすを返した烈兄貴の後ろ姿を、オレはただぼぉっと見つめていた。












   ×××   ×××   ×××









あれから。
数日経つけど、兄貴とはほとんどしゃべらずにいた。

アイツも・・・姿を見せない。
連絡一つとることもできない関係だったことに今更気づく。

何故か、わからない。
兄貴との溝が深まるごとに、俺は自分の中のアイツの影を追っていた。




違う。


本当は、心のどこかでわかりかけてる。

  彼に会いたい。

まるで、その答えから逃げるように。

  好きなんだ。

  大切で・・・・壊したくない。

誰を?

  恐いんだ、認めてしまうことが。

でも、認めなきゃ始まらない。
・・・・・・・・・・・答えは、自分の中にしか存在しないんだから。










   ×××   ×××   ×××










『豪』


振り向くと、そこに居たのはアイツで。

初めて聞いた、その穏やかな声は。




耳慣れた、あの優しい声と同じだった。


アイツの声を聞くのは初めてで・・・でもその声に違和感は感じられず。
認めてしまえば案外と簡単で、「あぁ、やっぱり」なんて思ってしまう。


『まだ、迷っているの?』


オレは、静かに首を横に振った。
ずっと会いたかった、彼。
でも、オレが本当に欲していたのは・・・・

『じゃぁ、これからはいつも一緒だね』

この笑顔を、俺は知ってる。
俺の大好きな笑顔。
だけど、彼の微笑みは・・・少し、淋しそうに見えた。




















ジャッという思いきりよくカーテンを開ける音と瞼越しにも眩しい太陽の光で目が覚めた。
いつもなら、これくらいで目が覚めたりはしない。
それだけ眠りが浅かったのか。


「休みだからっていつまで寝てる気だ?」

ポーズだけ怒ってる烈兄貴の声。

兄貴が起こしにきてくれんの久しぶりだな。
なんて、ぼんやりと思った。

瞼越しにもつき射すような光に目を細めながら声のする方に顔を向け、
窓から外を見ている兄貴の背中を視界に入れる。

「・・・はよ、烈兄貴」

「早くもないけどな。・・・・豪?」

俺の声に振り返った烈兄貴は不思議なものでも見るように俺の顔をのぞき込む。

「な、なんだよ・・・?」
「・・・お前、何泣いてんだ?」
「へ?」
慌てて目元に手をやったが、それより早く烈兄貴の親指が俺の眦に溜まった涙を拭った。
「恐い夢でも見たか?」
からかうような口調で「お前にしては妙に寝起き良かったしなー」なんて付け加えられて、
なんだか無性に悔しかったから。
ベッドに引きずり込むように、その細い体を抱きしめた。


「誰のせいで泣いてると思ってんだよっ」
「そんなの自業自得だろ。
 お前こそ・・・どんだけこの俺を待たせたら気が済むんだよ?」


・・・・・・烈兄貴。
どーゆーイミで言ってんの?


顔に熱が集まるのがわかる。
抱き込んでおいてヨカッタ、こんな顔見られたくない。
って、こんなに心臓の音がバクバクいってたら意味ねーか。


「で、答えは出たのか?」



その聞き方、もう俺の答えわかってんだろ?



「あぁ、俺、烈兄貴のこと―――――――」






 ―――――迷いは、もうない。




−END−

で、何なんですか?この話。(爆) 一応、これで完結なんですけど・・・どーでしょー? ごめんなさい。こーゆー話書くの初めてでどーしていいものかわかりません(滅)。 掲載当初から話題になっていた子は やっぱり烈のドッペルゲンガーなんですかね?(お前が聞くなよ・・・) 基本的にドッペルゲンガーってゆーのは自己像が見えることなのですが・・・ まぁ、他人のドッペルゲンガーを見たという事例も(すっごく稀に)あるらしいので 目をつぶって下さい。 ペケペケで烈の方がアプローチする話って初めてかなぁ? いろんな意味で難しかった・・・もう無理はするまい(自戒)。
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