「異形の町」     混合技法  60×73p 2002
      千の灯が燈る 階段状の構造の町

      まだ明けぬ空は紫色に白む

      強烈な朝日が

      この町の忌まわしい形を白日の元にさらし出す

      ざわざわする家々

      家の上には2mほどの大きな水瓶があり


      人の頭と映り 私を凝視する

      港には船が係留される

      その船の異形は 港人の精神の現われ

      ただし船を使う時 人々は喜びにあふれ海に乗り出す

      漁から帰った船に

      夕方にはあふれる海の生物たち

      魚の鱗はキラキラひかり 蛸はぬるぬる足を絡める

      貝は苦しげに水を吐く

      輝く生命の光が満ちる

      しかし しだいに消えていく光の粒

      貝を煮る臭いが立ちこめ

      やがて家々から響く咀嚼音 

      私はこの町を静かに歩く

      黒い僧服をまとい

      切れた地面から染み出る血を探すため