実例に見る茅葺き屋根。職人と予算
1、HOW MUCH 予算は? |
2、職人の探し方 |
3、別の実例(高額過ぎると思われる例) |
4、“結(ゆい)”とは? |
1、HOW MUCH 予算は?
とかく高額と言われがちな茅葺き屋根の補修。業者に聞けば一千万とも二千万とも言われます。
安く上げるコツをお教えします。
まず第一に、直接職人さんに頼んでください。通例、文化財等の公共事業などでは、請け負うのは大手、実際に行うのは下請け、さらには孫受けです。
社寺建築など他の文化財でもそうですが、実際に工事できるのは職人さんなのです。コストがネックになる皆様方はよく覚えておきましょう。
★はっきりした証拠が残せる公共的なものだけ公開します。各自自分の目でお確かめ下さい。お調べください。
実例モデル1
千葉県干潟町、大原幽学遺跡内、旧林家。建坪58坪。
工期98年3月
屋根は軒も含めて全部降ろしました。
垂木竹が腐食していたので交換しました。
工費は600万円でした。
ほんとは650万円ほどにしたかったそうですが、値引き要請があったようです(当時の町長と聞きましたが?要確認)。
←その分、文化財として考えると、軒は一般的な作りになっています。
実例モデル2
千葉県芝山町、芝山公園内、県重要文化財“薮家”。建坪60(10間×6間)。
工期平成11年2月14日〜3月14(内、休み5日)。
後面と、左右の半分、つまり屋根全体の1/2葺き替えました。
通常は職人1〜2人と、下回り(地走りという)3〜4人で行いました。初日の、古い茅を降ろす日のみ5名ほどのボランティアが入りました。
、古い茅は下まで全部降ろしました。
軒は4層よりなるしっかりしたものを取り付けました。←ヨシ水切り が付いてます。
日の当たりにくい方角なので波板を挟む工程も加えました。
仕上がりも上々です(プロですから)。
この工事は350万円でした。文化財につき少々手の込んだ工法が取られています。普通の民家の場合ですと、簡単な方法で250万円以下にする事も十分可能です。
実例モデル3
千葉県成東町。伊藤 左千夫 生家
建坪48坪(8間×6間) 工期96年春
この工事では、軒は交換しませんでした。
、←ここの軒は本格的です。同じ職人が昔やったものです
工費は550万円要しました。少々高めになりました。その理由は、
☆文化財は皆そうですが、燃え易いものを夜間 周囲に残しておかない様 指導されます。ですから毎日かたずけなくてはいけません。人件費がかかります。
☆下ろした古い茅もさる事ながら、これから使う新しい茅も周囲に保管しておく事が出来ません。
☆敷地は狭く、屋根近くに古い茅や新しい茅を保管して置く場所が確保できませんでした。毎日トラックで運搬が行われました。
→いつもそうですが、工費の殆どは人件費です。(以下参照)
★価格参考
★茅
ススキ、ヨシなどは自然に生えてますので無料で入手します。
ただし、刈る手間、束ねる手間、運搬、加工、貯蔵などに人件費がかかります。一束120円と計算してるようです。
稲ワラも通常無料。
★茅の保管
その年に使うものはシートをかけて畑地に保管しています。一反部くらいの畑で作業しています。
特に倉庫と名の付くものでなくとも、雨がしのげれば十分であり、ビニールハウスでも構いません。
★足場
鉄パイプは4mのもので、一本800円くらいで販売されています。100本買っても8万円。一度買ってしまえば腐る事はなく、持ってる人にはただみたいなものです。一般住宅の建設などに用いられている足場、レンタルすると一ヶ月4〜5万円くらいです。
★運搬
まだトラックの値段を調べていないのですが、3〜4t車で350万くらいだと思います。くらいっとあやふやでは困るので今調べています。私がボランティアに行っている所の職人さんのトラックは3t車で450万なのですが、クレーンが付いていますので高いのです。
先代のトラックは2t車で、21年使ったとのこと。
なを、軽トラでも運搬は出来ます。
※東京から大阪まで、2トン車1台を占有して、東名高速利用で荷物を運搬すると、業界平均で\56000程と 日経新聞に書いてありました。大型トラックなら、もっと割安になるはずです。運搬費って、思ったほど高くないです。
★人件費
職人の頭領は一日\18000前後。通常の職人は一日\15000くらい。地走り(下回りのこと)は一日\8000くらいのようです。
★大まかな工事費総額見積もり。 建坪×1、8=屋根坪数 屋根坪数×7=工事費(万円) 通常の葺き方で、一番下から葺いた場合。(遠征費は含んでいない) これで結構いいものが出来ます。(お勧めグレードです) |
※今迄 屋根工事を行った一般民家の所有者も このページを見る可能性があります。ですから 特に安い事例のみをここで示しているのとも違います。(自分のとこだけ高額だったら、苦情が来てしまうよ。)
2、職人の探し方。
☆工事は職人さんに直接頼みましょう。大企業に任せるのに比べ1/3程度の予算で出来てしまいます。
☆職人さんを見つける為には、もちろん普段からアンテナを張っておく事は良い事です。
☆普通の屋根屋さんにも何軒か当たってみましょう。戦後しばらくまでは茅葺き屋根の方が当たり前でした。昔は茅葺きもやっていた可能性があるからです。また、同じ屋根であり、茅葺き屋根職人の情報を持っているかもしれません。
☆自分の住んでいる近くで、状態の良い茅葺き屋根があったら、家主さんに聞いてみましょう。屋根の状態が良いのは、誰かが手入れをしているからです。この方法はかなり有効です。
☆職人は少なくとも数人は探し出しましょう。悪質と思われる人は断った方がいいです。工事費は、私のホームページを参考にしてください。
☆千葉県だけでも、私の知っている限り、10人以上出来る人がいます。(平成11年度現在)
☆見積もりをしてもらったら、すぐにその根拠を問い正してみて下さい。即答できるかどうか?
私は職人を紹介するか?→しますが、工事価格内訳詳細など金銭的情報は全て掲示板↓で公開してしまいます。
ガラス張りですね→“民家専用掲示板(画像可)”
3、別の実例(高額過ぎると思われる例)
※どこかの業者さん(大手ゼネコン)がやったものです。公平を期す為に、公共工事の実例です。皆さんの実例も無料で載せてあげます。
実例モデルその1
旧水田家(千葉県鴨川市)3000万円の実例
※もちろん屋根のみの工事費です。そこの管理人さんの話。
登録有形文化財第12-0042号
建坪54坪 平成15年初句 |
↓その軒の作りですが、もっともシンプルなものです。
少々荒いです。
この家に関する情報はこちらに良く書かれています。
税金は大切に使いましょう。
4、“結(ゆい)”とは?
→持ち回りで工事費の一部を負担することにより、その何倍もの補助金をみんなで山分けする制度?!
補助金の出る地域では現実に9割の補助が出ています。
こちら千葉県では500万ほどで出来る工事が、補助金のある地域では現実に3000万ほどかかっています。
NHKで放送された実例 作成中ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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補助金対象地域にある20件の茅葺き所有者が組合をつくり、500万の工事を3000万と申請して毎年1件づつ工事をすると、
工事を受ける家主の負担 1割 20年に1回 |
300万円 |
一人当たりが毎年もらう金額 3000÷20人 |
150万円 |
一人あたりの20年間総収入 150×20年 |
3000万円 |
一人当たりの平均年収 ((150×20)−300)÷20 |
135万円 |
※20年で一人当たり2700万円の実収入。
日本では起こりえるかも。事例を知ってる人は↓掲示板へ。
民家専用掲示板(画像可)民家に関する限り書き込み制限なし。
H24年3月21日より、私のプロバイダー(BIGLOBE)がシステム変更を行ったため、掲示板(cgiプログラム)が使えなくなっています。現在、代わりの掲示板(BIGLOBEで使えて、画像投稿出来て、無料で、広告のないもの)を探しています。
H24年3月27日、とりあえず新掲示板設置完了しました。すでに書き込み、画像投稿できますが、もう少し改良する予定。