茅葺き屋根
休みの時には、ボランティアにて葺き替えの手伝いをしております。要連絡。(私は職人ではありません)
1、茅葺き屋根に使う茅について。(あり余ってる茅)
2、茅葺き屋根の構造について。
4、実例に見る茅葺き屋根。もっと詳しく!(リンク先別ページ)
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1、茅葺き屋根に使う茅について。(あり余ってる茅)
茅とはどんな植物なのか知らない人が殆どなので、写真を交えて説明していきます。
実は、茅という植物はこの世に存在しません。
茅とは、総称です。
国語辞典によれば、「ススキ、チガヤ、スゲなどの総称」となっております。
1−a、茅の植生。
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ススキ(左)とオギ(右)
ススキとオギは大変よく似ておりまして、青い時には区別が難しいです。しかしススキは乾燥した所に生えるのに対し、オギはやや湿った所に生えます。河原などに生えているのは大抵オギです。
ススキは株になって生えますが、オギは一本一本生えます。
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ヨシ(左)と5月のチガヤ(右)
冬枯れのオギとヨシも非常に似ています。しかしヨシは水に浸かる様な所に生えます。又、ヨシの穂は少々黒っぽいです。冬枯れのオギには竹の様な節がたくさんありますので、すぐ区別がつきます。
チガヤは休耕田や湿地などに生えてます。秋に少々赤茶色になるので、草紅葉といったところです。大きさは稲と同じ位。春に穂花を出し、種がタンポポの様に飛んでいきます。
、
左は秋のチガヤの草紅葉です。右はカルカヤ(メガルカヤ)です。
5月の麦です。大麦より小麦が使い良いようです。
スゲは笹団子のひもに使われてるやつです。
麦藁も使えます。
稲藁やオガラ(麻の茎)も補助的に使われます。
岐阜県の白川郷では、ススキの他にカリヤス(ノガリヤス)も使うようです。ススキよりも細くて油分があり、長持ちするそうです。ただし、入手難から、使われてるのは殆どススキなようです。あちらではススキの事を大ガヤ、ノガリヤスの事を小ガヤと呼んでるようです。
トラックなどの運搬手段がなかった昔、茅にはその地域で採れる植物だけが使われた様です。
1−b、茅の性質。
結局の所、いろんな植物が使えます。望ましい条件としては、
1、その地で容易に得られる事。
2、濡れても腐りにくい事。
3、長いほうが手間が少なくなります。
4、細いほうが良い。硬いほうが良い。しなやかな方が良い。
前に揚げた植物の中で一番硬いのはオギです。硬くて長持ちはするのですが、刈り込みが難しいので軒によく使われます。(オギを使っている地域は殆どないと思いますが、部分的には使えます。ちょっと重いのが難点。)
軒は一番水が集まりますので、腐りにくいものが望まれます。軒の一番上の茅は 特に『水切り茅』と呼ぶ事もあり、水に強いものが使われます。同じススキでも太いのを使ったり、又、ここだけはヨシを用いたりもします。(特に細い茅を密集させて軒を葺いて長持ちさせる、という考え方もあるが、こちらでは、“水切り”という束を軒先に設置して軒を守っている。実例ページの写真参照の事)。
その地域が山間部ならススキ、河川や沼の近くならチガヤやヨシ、畑地なら麦藁となるわけです。
ススキは畑にもならない荒れ地でも育つので、都合が良かったのです。カヤとは総称ですが、一般的にはススキを指します。
又、茅葺き屋根は、最後にハサミで形を整える事から、『刈り屋根→刈屋→カヤ』となったという説もあります。
特に茅を育てておく場所を茅場といいますが、今でも地名で残っている所がたくさんあります。
何年も貯蔵して貯えた茅は、乾燥して、折れ易く、しなやかさに欠けます。
茅は、冬本番前に刈り取らないと、しなやかさが失せてしまいます。
今では珍しい茅場です→
”茅がない”といいますが、ほんとは沢山あるんです。ススキですから。でも少々意味がちがうのです。
後で説明しますが、茅葺き屋根は、茅を『押さえ竹』で強くはさみ込んで作っていきます。見た目以上に茅が使われています。ですから、少しづづ集めていたのでは効率が悪いです。又、勝手に人の土地の草を刈るわけにもいきません。
それから、育てた茅と勝手に生えてる茅とでは少々異なります。勝手に生えてるのは、他の草が混じったりもします。ススキの場合、密集させて育てないと、長さ、太さが均一になりません。又、曲がっている物も多いのです。(この後の構造参照)。
人の手が入る茅場は、毎年刈り込まれるため、他の植物が入ってくる余地がありません。春の野焼きにより、植物の遷移も止められます。他の草の種は燃えてしまいます。ススキは地下茎が残ってますので大丈夫。
チガヤや麦藁はあまり長持ちしませんが、利点としては、きめの細かい、見た目に美しい屋根に仕上がるということです。又、麦藁は畑地では手軽に入手できます。
ヨシは棒状なので、きめ細かくとはいきませんが、結構水に強く、又、長いので、押さえ竹で押さえる手間も少なくて済みます。
稲藁は、補助的に屋根の下のほうに使われます。水に濡れると腐りやすく、主材料としては使われません。
オガラ(麻の茎)は、今は麻の栽培が禁止なので入手が難しいですが(入手は可能なようです)、古くなると色が白くなるので、軒の表面などに化粧用として使われます。(オガラは今でも、お盆の時などに使われています)。大変軽いのも特徴です。水にも結構強いです。
〜多量にあり余ってる茅〜
“茅がない”なんて言ったら、この人は茅葺き屋根に付いて詳しい 、なんて思われて一目置かれるかもしれませんが、では、“ススキがない”なんて言ったら 馬鹿にされるんじゃないでしょうか?
使われない茅場を写真で御見せしましょう。
何百年も昔から続く茅場です。使う事はないのですが、地元部落の人が毎年刈り払ってくれるので、品質は上等です。→ 広さは2町歩以上あるものと思われます。 職人はこのタイプの茅(ススキ)をヨリトモと呼んでいます。ススキなのに株にならないのです。植物に詳しい方からの情報を待っています。 欲しい方は紹介してあげます。紹介料は無料ですが、そちらから地主に利用料を払わなくてはいけません(業者ではなく、普通の農家の人ですから、十分安いと思います。あなたと地主の交渉次第。) 業者の方がこの茅を欲しい場合→茅葺き屋根工事価格内訳詳細をインターネット公開している企業さんにのみ、無料で紹介します。工事価格が適正かチェックします。掲示板にも情報開示して頂きます。 |
ここもススキの茅場です。ここは放置されています。広さは、1町歩以上あると思われます。 需要があるのなら、整備もするのですが・・・ |
広大なヨシ原です。ここは1.7町歩です。 ヨシは休耕田にたくさん生えておりますので、入手は容易です。 冬の終わりに火入れをして、こんな風になってしまいます。 欲しい方は紹介してあげます。紹介料は無料ですが、そちらから地主に謝礼金を払わなくてはいけません(どうせ燃やしてしまう物ですから、格安だと思います。) 業者の方がこの茅を欲しい場合→茅葺き屋根工事価格内訳詳細をインターネット公開している企業さんにのみ、無料で紹介します。工事価格が適正かチェックします。掲示板にも情報開示して頂きます。 |
他にもたくさんあります。
全国的にも休耕田、休耕地が増え、茅確保の問題は解消されつつあります。
2、茅葺き屋根の構造
ここで示すのは一例です。
押さえ竹で茅を挟み込み、葺き上がっていきます。
いろいろな道具や材料が使われ、それも地方により呼び方が異なります。『押え竹』は東北では『押し木』となります。そもそも東北には竹が生えてません。
図では一層のみとなっていますが、実際には、何層にも葺いて厚みを増していきます。押え竹は、最初のうちは、屋根裏の木や竹まで縄を通して結び付けます。茅を強く挟み込む程丈夫な屋根になります。(水が漏れにくく長持ちします)。茅の使用量は見た目以上となります。
巨大な針の様なもので、茅に縄を通して結び付けます。厚さが厚くなってくると、厚さ途中の押え竹と結ぶ事も行われます。
長い茅なら押え竹の設置数は少なくて済みます。短い茅では押え竹をたくさん設置しないと茅が抜けてしまいます。
次に曲がった茅は良くない理由(一例)を説明します。
曲がった茅を一本入れてみましたが、茅を伝ってきた水が、曲がった茅で止められ、水が漏れやすくなります。家の中まで漏れなかったとしても、屋根の中まで水が染み込み、乾燥を遅らせ、結果的に寿命を縮めてしまいます。
その他の理由としては、ガギが効き難くなる事が上げられます。
次に『逆葺き』と、そうでない葺き方について説明します。
(説明のため図は極端に書いてあります。)
束ねた茅は、根側は太く、穂側は細いので、台形の様になります。
ほんとうは、長方形に近い方が理想です。太さ、長さが均一で、長いほうが使いよいのです。ですから、自然に勝手に生えてるものよりも、育てたもののほうが品質が一定していてよいのです。
↑茅の根側が屋根表面に出るのが正統派の葺き方。
茅の穂側が屋根表面に出るのが逆葺きです。↑
屋根表面は、雨、風にさらされますので、硬くて太い根側が屋根表面に出たほうが長持ちすると一般には考えられています。
しかし逆葺きにも利点がたくさんあります。茅の束が台形をしているのを見れば、逆葺きのほうが茅が抜けにくい事が理解できるかと思います。
正統派の葺き方の場合、茅が抜けやすくなります。対策として、押え竹はかなりきつく締め付けなくてはいけません。
逆葺きの利点としてもう一つ。水色の矢印←の傾きを見て下さい。逆葺きのほうが急になっています。排水性の事を考えれば、この傾きは急なほうがよいのです。平らだったら排水できません。対策として、正統派の葺き方の場合、赤線部分に短めの茅を敷き入れて傾きを補正してやります。
結局のところ、正統派の葺き方は、逆葺きより余分に茅が必要となり、作業にをいては時間と技術を要します。縄文時代の遺跡などは皆 逆葺きです。
逆葺きは素人向け、正統派の葺き方は玄人向け、と言えるでしょう。
(ただし、ほんとにきちんときれいに葺いた逆葺きやねは高度なんです)
上の写真は、茅が抜けてしまい、押え竹が見えてしまったものです。
*茅葺き屋根はなぜ夏涼しいか?
日本の夏は高温多湿であります。茅は優れた吸湿材であります。
夏のひざしに照らされた茅は乾燥していきます。水分が蒸発する時に気化熱として熱を持ち去っていきます。
トタンや瓦では、温度は上がる一方です。
茅葺き屋根は“呼吸している”と言えそうです。
H24年3月21日より、私のプロバイダー(BIGLOBE)がシステム変更を行ったため、掲示板(cgiプログラム)が使えなくなっています。現在、代わりの掲示板(BIGLOBEで使えて、画像投稿出来て、無料で、広告のないもの)を探しています。
H24年3月27日、とりあえず新掲示板設置完了しました。すでに書き込み、画像投稿できますが、もう少し改良する予定。
↑質問は掲示板でだけ受けます。メール不可。(個人の場合にはこの限りではありません)
茅葺き屋根に関するリンク(相互リンクのみ)
岩手で茅葺き技術の伝承を促進する委員会 |
現在は茅場の造成に力を入れているようです。 |
白川郷観光協会 | 白川郷に出かける際には目を通しておくとよいでしょう。 |
古材情報少々 | |
田舎暮らし友の会 | 田舎暮らし情報。不動産情報も含む。 |
リンク基準→茅葺き屋根に関するもの。企業の場合には、工事価格内訳詳細まで明示しているもの。
よくある質問→業者さんからの質問。メールは受けません。掲示板に書き込んで下さい。