どの世界にいても・・変わらないものってある。
この光輝く夜空も・・数こそ多いけれど、
私の世界にも、確かにあったもの・・・
そして・・この気持ちにも・・隔たりはないみたい。
・・・一番大事にしたいこと・・・
でも・・もし・・この気持ちに迷いが出たら・・
あなたならどうする?
揺れる気持ち
〜プロローグ〜
「どうしましたか?さん。
なにか考え込んでいるようですが・・・。」
「あ・・弁慶さん。」
陣の休憩所で、考え事をしていた私に話しかけてきたのは
今、私が一番気になっている弁慶さん・・その人だった。
「憂い顔も、もちろんかわいらしいのですが、
できれば僕としては、あなたには笑っていてほしいのですが。」
「あ・・別にそんなに深刻に悩んでいるわけじゃないんだよ。」
「・・ということは何か悩みがあるのですよね?」
隠し事はいけませんよ・・と言いたげな、弁慶さんの
綺麗な笑顔に・・私は思わず話さずにはいられなくなってしまう。
本当にこの人には、隠し事はできない。
「え・・と。」
「姫君を追い詰めるような問い方は感心しないぜ、弁慶。」
「「ヒノエ(くん)」」
私が弁慶さんの質問に答えようかと・・迷っていたところへ
ヒノエくんがやってきた。
「悩みがあったら話して欲しいってのは、オレも同じだけど
神子姫が戸惑うような悩みをオレは無理に聞きたくないね。」
「あ・・ヒノエくん、いいんだよ。たいしたことじゃないから。」
私はあわてて弁慶さんを擁護した。
別に弁慶さんを困らせたりするようなことじゃない。
・・ただ恥ずかしかっただけ。弁慶さんにこの思いが
悟られるんじゃないかって・・そう思っただけ。
だって私が考えていたのは『バレンタイン』のこと。
こっちの世界にそんな風習はないだろうけど・・
・・チョコレートだってないし。
でも如月っていったら『2月』のことだもの。
・・・思う人がいれば、自然に考えるよね。
でも、弁慶さんが私のことをどう思っているかなんて知らない。
それにこんな戦乱のこの時に・・こんなこと考えていいか
どうかなんて・・考えなくてもわかる。
・・ただ人を思う心は・・とめられるものじゃないし。
「私たちの世界に如月にやる行事があって・・
『バレンタインデー』と言うんですけど・・。」
「『ばれんたいんでー』・・ですか?
それは一体どんな行事なのですか?」
「女の子から男の子へ告白する日なんだよ。
・・チョコレートと一緒に。」
「『ちょこれーと』ってなんだい?。」
「甘いこげ茶色のお菓子だよ。
固形のものなんだけど口の中で溶けるの。おいしいよ。」
「思いを告げる日ですか。あらかじめ決まっているなら、
思いも伝えやすいですよね。面白い行事ですね。」
「で、それでどうして神子姫は悩んでいたの?」
「え・・と・・それは・・その・・。」
うわぁ〜ん、ヒノエくんはっきりきかないでよぉ〜。
「おや、それは聞くまでもないでしょう?ヒノエ。
さんに思う人がいるからでしょう?」
べ・・弁慶さんまで・・。
「なるほどね。神子姫にそれほど思われる相手が
うらやましいね。・・神子姫に「ばれんたいん」
とやらをしてもらえるのは・・誰かな?」
そういわれて・・思わず弁慶さんを見てしまう・・
や・・やだ、ここで弁慶さんを見ちゃったら、
私が誰にあげたいと思っているかなんて・・
すぐにばれちゃうじゃない!!
「ふふ、さん。期待しても良いですか?」
弁慶さんは・・それはもう嬉しそうな笑顔で
そんなことを言ってる・・。
「弁慶、相手を決めつけるのは良くないぜ。
おまえじゃねぇかも知んねぇだろ?」
「おや、さんの態度に僕は素直に
お答えしただけですが?」
「・・たまたまそっち見ただけだろう。
なぁ、オレにだって希望くらいあるだろ?」
「え・・希望ってなんの・・。」
『なんのこと?』って聞こうとして・・
私は思いっきりヒノエくんに引き寄せられた。
『オレはのこと、今すぐにでも攫いたいよ。
こんな綺麗な姫を弁慶になんてやりたくないね。』
「ヒ・・ヒノエくん・・。」
耳元に聞こえてきたのは・・そんなストレートな告白。
・・こんないい声で囁かれて・・揺れない女の子って
いるんだろうか・・。
弁慶さんはもちろん一番気になっているけど・・
ヒノエくんだって嫌いじゃないもの・・
ううん、むしろ好き。大切な仲間・・ってだけじゃ
ヒノエくんのこと語りきれない・・。
「ヒノエ。抜け駆けとは・・また随分ですね。
なにもさんを慕っているのは、君だけではありませんよ。」
そういうと・・弁慶さんは私をひょいっと軽く
持ち上げて・・・弁慶さんの方へ引き寄せた。
「べ・・弁慶さん!」
「さん、その「ばれんたいんでー」というのは、
一体いつなのですか?」
「え・・あ・・2月14日です。」
「・・ということは、如月の14日目ですね。」
「・・・明日じゃん。」
「勝負は以外に早くつきそうですね。」
そういうと、私の顔を覗き込んで・・弁慶さんは・・
「明日、楽しみにしていますね。」
・・・にっこりと笑ってそう言った。
「べ・・弁慶さん。」
「おい、弁慶!だからを強制するなよ。
・・、オレ待ってるからな。
いつまでも、待ってるから。」
「さ、さん。そろそろ寝ないといけませんよ。
・・ばれんたいんでーはともかく・・怨霊には行事なんて
関係ないのですからね。」
その一言で、私は現実に戻された・・。
そうだ、今はそんなのんきなことは言ってられない。
・・このことは・・今すぐ結論を出さなくてもいいじゃない。
今日はとりあえず寝よう。
「わかりました。・・・遅くまでごめんなさい。
おやすみなさい、弁慶さん、ヒノエくん。」
そういって私は朔と寝ている自分の天幕へ戻っていった。
だからこの後の会話は・・聞いていない。
『オレはさっきも言った通り、のこと本気なんだ。
たとえ叔父だろうと譲らないぜ。』
『僕も彼女を譲るつもりはありません。
・・彼女が誰を選んでも恨みっこなしですよ。』
そして私が翌朝、いつもより早く目が覚めて・・
陣の中をうろうろしていて見つけたものは・・・・。
選択制です。あなたの思いつく先へお進み下さいませ。
鳥の羽が入り口に沢山ある天幕
茶色の花びらが入り口に沢山ある天幕
選択先へ続きます。どちらの気持ちを取るのかはあなた次第!
こちらの創作は翠月咲樹さまのリクエストにより作成しています。
詳しいことは進んだ先にある後書きへどうぞ。