
| 「寒いと思ったら・・やっぱり降ってるよ・・・。」 放課後窓の外を見ていた友人はそうつぶやいた。 「ホントだねぇ。」 ちらちらと降りてくる雪達は、もう随分前から降っていたのか 校庭にひしめき合っていた。 まるですべてを真っ白にしたいかのように・・・。 「ねぇ!あかね。ちょっと、ちょっと!!」 校庭を眺めていた友人がふいに私を呼んだ。 「どうしたの?」 「きれいな男の人がね、門のところに立ってるの!! しかも傘さしてないよぉー。こんなに雪降ってるのに・・。 誰か待ってるのかなぁ。」 「え?どこどこ?」 私も興味深々で窓の外を見る。こんな雪の日に傘もささず いい男が校門で待ってるなんて・・。 「ほら、あそこ。」 友人が指を指す。 そこには友人が言う通り一人の男の人が立っていた。 校門に背を向ける格好で立っている。 肩まで伸びたきれいな髪が雪に・・かなり濡れていた。 もう随分前から待っているだろうか・・。 顔は帽子をかぶっているのでここからは良く見えない。 でも背格好が・・・永泉さんに似てる気がするんだけど・・・ まさかね・・。そんなはずは・・。 「あっこっち向いたよ!!って・・あれ・・男の人だよね・・。 凄くキレイなんだけど・・・・。」 「え??あ・・あれって・・やっぱり・・」 永泉さん!? 遠くてはっきりは見えないけど・・ 間違い無い!!あれは永泉さんだ!!。 「え??あかねの知り合い??」 「たぶん・・永泉さん・・私見てくる!!」 「え・・ちょ・・あかね???」 私は友人の声をふりきって、机に置きっぱなしていたかばんを わしづかみにして、あわてて教室を飛び出した。 私が校門にたどり着いた時、永泉さんは門にもたれかかり 空から舞い降りる雪を顔で受けとめていた。 ぽたぽたと雫が永泉さんのきれいな髪をつたって 地面をぬらしている。こんなに濡れるまで・・私を・・・。 「永泉さん!!」 そう声をかけると永泉さんはゆっくり、ゆっくりこちらを振り返り にっこりと微笑んだ。私の大好きな永泉さんの優しい笑顔。 「お待ちしておりました。」 雪に溶けてしまいそうな、優しい声。 私はその声をきいていてもたってもいられなくなって・・ 力いっぱい飛びついた。 「・・今まで・・何してたの?・・ここのところ何時電話しても 留守電だったよ・・・。寂しかった・・。」 力いっぱい飛びついたのに、永泉さんはびくともしなかった。 飛びついた私を・・そのままふわっと抱きしめてくれる。 「申し訳ありませんでした。どうしても・・どうしても、本日 お渡ししたいものがありまして・・・それを用意するのに 今までかかってしまいました。・・・ ご心労をおかけしてしまいましたね・・。」 「渡したいもの?」 身体を永泉さんに預けたまま、顔を上げて永泉さんを見た。 優しく微笑んではいるけれど、目の奥は一本の強い光が差している。 「はい。濡れてしまうといけないと思いましたので、家に置いて来ました。 ご一緒して頂いて、よろしいですか?」 何時なく強い意思の目をした永泉さんに、私はただ黙ってコクリとうなずいた。 |
次でラストです。永泉さんの用意してくれたもの、想像つきますか?
もう少しお付き合いくださいね。