2008年04月24日

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適当RPG【3rd edition】リプレイ




【第4部】 迷宮組曲


幕間3  墓 標 。 





 誰も訪れることのない小さな森の中に、小さな墓標が立っている。

 墓碑銘はない。
 ただ、小さな2つの印が並び刻まれているだけ。

 そこには誰もいなかった。
 それが反目する2つの忍、イザリとジュレイを示す忍文字と知る者も。


 ――――誰も訪れることのない小さな森の中に、小さな墓標が、ただ立ち続けている。




今回の参加メンバー


カイマ
魔導師

ニイ
忍者

ジン



◆Scene01◆ 発端

 今回のイベントは、カイマ、ニイ2人のプレイヤーの意向により実現しました。
 マサカドの犠牲となった忍者達を弔ってやりたい、と。
 最初は、カイマとニイの2人のエピソードのつもりだったのですが……


ニイ : それを提案するのはジンさんの方が自然な気がしました。
カイマ : ……ジン、寝込んだことに、しましょうか?
ニイ : カイマはジンさんとは一緒に行きたくないの?
カイマ : いや……。ジンにいいとことられそうな気がして(笑)
ニイ : ……真相を知ったら、一番行くべきなのはジンさんだと思うんですよね。あの出来事の唯一の生き残りとして。
カイマ : なるほど。じゃあ、師匠からの提案で、カイマがニイも誘いに来るって言うのはどうかな?
ジン(ニイPL) : 「……そうですね。あの忍の少女、ニイといいましたか。彼女も呼んできてはいかがでしょう」
カイマ : 「そうだな。いろいろ、気にしてたみたいだし…」

カイマ : じゃあ、ニイを迎えに来たところから…でいいかな?


カイマ : コンコン。
ニイ : 「……どうぞ」
カイマ : 「よう。今、空いてるか?」
ニイ : 「……任務中ではないけれど?」
カイマ : 「実は、……この間行った、マサカドの部屋のことなんだけど」
ニイ : 「?」
カイマ : 「師匠があそこで死んでた忍者を弔いたいって言うんだ、俺もそれに賛成で、……二人で話して、ダンジョンに近い森の中に墓つくろうってことになったんだ」
カイマ : 「……それで」
ニイ : 「……私も、行っていい?」
カイマ : 「……え。あ、おう。それを、聞きに来たんだ」
ニイ : 「ううん。私も、行かないといけない。きっと。多分」
カイマ : 「そう…だな」



◆Scene02◆ 弔いの儀式
ジン : 「こんにちは。ニイさんも来てくれたのですね」
ニイ : 「……はい」(こく)
ジン : 「助かります。ジュレイの方々の弔い方が、私達と同じでいいかわからなかったので…」
ニイ : 「弔い方と言っても……」
カイマ : ちなみにイザリは弓を撃ちます。
ニイ : 弓を?
カイマ : 空に向かって矢を放ち、弔うって形を。
ニイ : イザリとジュレイって反目し合ってる同士ですけど、もともとどういう関係?
カイマ : イザリとジュレイは、元々一つの目的のために同盟を結んでいた種族でした。
カイマ : でも、その目的が失われようとしたとき、互いの思想が相反していさかいが生まれたのです。
ニイ : ん。ならやっぱりここは。
ニイ : 「弓。ジュレイも同じことを」 そのあたりの風習は、同じところから端を発してるってことで。
カイマ : なるほどー。ニイも弓得意ですしね。
ニイ : 魂を空に届ける……のかな?
カイマ : どっかの仕来りみたいなんですが、意味は知らないのですよ(汗)

 そこには、完成したばかりの小さな墓標がありました。
 亡骸もない、形見の品もない、墓碑銘すら刻まれない形ばかりのお墓です。
 刻まれているのはイザリとジュレイを示す忍文字。反目する2つの組織の印が並ぶ墓標など、他のどこにもないでことでしょう。


カイマ : 「借物ですまないが……」
カイマ : 「できればダンジョンでやるべきだろうけど。……この人数じゃ自殺行為だしな」
カイマ : 「じゃあ、撃つぞ」
ニイ : 「うん」

 ばしゅっ



 カイマの放った弓は、はるか高く打ち上がり、やがて大きな放物線を描いて森の中へ消えていきました。





◆Scene03◆ 弔いの緋
ジン : 「これで一通りいいですかね……」
カイマ : 「いずれ、仏さんも移してやりてぇな」
ニイ : 「…………」
カイマ : 「あの場所に一生置いておくのは、かわいそうだ」
ニイ : 『あの部屋』の有様を思い出し――
ニイ : 墓所の前に佇んで――
ニイ : 「カイマ……私、私ね」
カイマ : 「…ニイ?」
ニイ : 「ジュレイの追っ手が皆死んじゃって……本当は喜んでいるのかもしれない 。だって、これでもう、追われることなんてないのだから……」
カイマ : 「……」
ニイ : その声は、初めて会った頃のような冷徹さをはらんでいて――
カイマ : 「……でも、今。ニイは悲しんでる」
ニイ : そう。カイマにはわかります。顔を伏せたニイが今、言葉とは裏腹に、今にも泣き出しそうな表情をしていることに。
カイマ : 「喜んでる時は、そんな顔しない…」
ニイ : 「…………」
カイマ : 「理由なんてないよ、そういう気持ちに」
カイマ : 「……俺も、そうだから」
ニイ : 「カイマだって立場は私と同じはず。なのになんで――」
ニイ : 「――なんで、そんな風に割り切れるの。だって、私、私は――」 泣いている。
カイマ : 「………」
カイマ : 無言で、肩を抱く。……抱いちゃいますよ。
ニイ : 初めて見せる涙。初めて見せる、感情の昂ぶりに……
ニイ : 「……ぅ」 なら、小さな嗚咽だったのが、ほとばしるように、本格的に泣きます。ええ、泣きますとも。
カイマ : 戸惑いながらも、ニイの背中をポンポンと叩いて…
カイマ : 自分も泣きそうな顔して踏ん張っている。

ニイ : うわ、カイマがなんだかかっこいい。そんな様子を黙って見ているのかな、ジンさんは。
カイマ : ジンもさすがに、これぐらいの空気は読めるようになっているはずです。なっていてくれ(笑)


ジン : 「感情表現が苦手な娘かと思っていましたが――そうでもなかったようですね」
カイマ : ニイが泣くのは初めてかぁ……
ニイ : 多分、初めてまともな感情表現をしたんだと思う。
ニイ : 普段は何言ってても表情に乏しかったはず。

ニイ : ギャグ時は除くけど(笑)
カイマ : ギャグ時は除くんだ(笑)
ニイ : ジト目とかよくしてたと思うしね! マンガ的には!(笑)


カイマ : それで、しばらくして……
カイマ : 「……落ち着いたか?」
ニイ : 「……うん」
カイマ : 「……初めて、ニイのそういうとこ見たよ」
ニイ : それは、はっとして、少し離れますね。
カイマ : 「少し、嬉しかった。見せてくれたのが」
カイマ : 「……頼ってくれる気がして、さ」
ニイ : 「…………」 また顔伏せてます。
ニイ : が、今度はさっきとは違うということが、当然カイマにはわかるわけで。
カイマ : 「これからは、そうでいいんじゃないかな。…もう、忍びじゃないんだし」
ニイ : 「そう……って言われても、まだ……よくわからないよ」
カイマ : 「まぁ…言われて判ることじゃないか……」

ニイ : そのとおりですね(笑)
カイマ : まったく(笑)
ニイ : 今はカイマの前でだけ、ということで良しにしましょうよ。
カイマ : それは嬉しいかも(笑)
ニイ : きっと、普段のニイは相変わらず普段のニイなんだろう。けど、オレは知ってる。みたいなー(笑)
カイマ : うわー、すごいおいしいー(笑)


ジン : 「さて、もう日が暮れますね。ニイさん、よろしかったらお夕飯ご一緒にどうですか?」
ニイ : 「え、あ。はい」 KYっぽい割り込み万歳ですねさすがジンさん(笑)
カイマ : KYも役に立つときが。話の収束のためなら空気さえ分断する男、ジン!(笑)
カイマ : 「ちょ、師匠、居たのかよ」
ジン : 「なにをー、ずっとお墓磨いてましたよー?」
ニイ : 「……光沢が」
カイマ : 「むしろ輝きすぎだろこれは……」

 このリプレイは、yu-kiさんの書いたこちらの物語にリンクしています。
 ほんとはリプレイにしなくても良かったくらいにこちらの物語がよくまとまっていますので、是非ご覧になってください。
 小話サード『弔いの緋』【mixi】






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