14,「ハシリドコロ(ナス科)」



 春になると「ハシリドコロによる中毒で亡くなった」という新聞記事を見ることがあります。ハシリドコロには猛毒があり,中毒すると走り回って苦しむことから名付けられました。私が初めてハシリドコロと出会ったのは1996・5・13のことでした。この町のある谷間の湿った木陰に美しい黄緑の葉を開き暗紅紫色のナスビに似た花を咲かせていました。初めて出会った野草に胸が高鳴りました。早速2本ほど採取して持ち帰りました。
 図鑑で調べ猛毒植物と知ると急いで手洗いをしました。ハシリドコロは地下茎のロート根に猛毒を持っています。ロート製薬という会社をご存じだと思いますが,このロート根から鎮痛薬や目薬に使う物を取り出し目薬を作り出したのでしょう。ハシリドコロを知ることによって,初めてロート製薬とロート根が結び付いたのでした。
 毒は薬にもなるとよく言いますが,ハシリドコロのロート根から目薬を作り出した人々の研究の素晴らしさ,自然の物を生活に生かすために多くの犠牲をはらいながら役立つ物と役立たない物を見極めて来た先祖の歩みに見習わなくてはならないと思うのです。
                                      中西 正一先生


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