22,「ヤツデと
ヒメシロコブゾウムシ(ゾウムシ科)」


       
       ヤツデの木      ヒメシロコブゾウムシ
 「そんなところに登ると折れるじゃあないか」と大声で叱りました。細いヤツデの木に一人の男の子が登っていたのです。
 「ゾウムシを採っているんです。この木にしかいないんですよ」
 「えっ。ゾウムシ?」何のことか分からずにポカーンとしている私に男の子は木から降りてくると手のひらから白色の虫を出しました。
 「先生これは,ヒメシロコブゾウムシです。しらないのですか?」と不思議そうに私の顔をのぞきました。
 「こうやると面白いよ」と男の子は廊下にその虫をはわせました。虫は急いで逃げようと早足で廊下を歩きます。しばらくすると,その男の子が廊下をトンとたたくのです。するとどうでしょう。虫はころんと転がって仰向けになり死んだようにじっとするのです。
 ヤツデを見る度に10年も前の小学校での男の子との出会いを思い出します。みなさんも夏になったらヤツデの木にいる真っ白のヒメシロコブゾウムシを探して見てください。きっと見つかると思います。
 ところで,ヤツデは秋の終わり頃に白い花を咲かせます。他には花がない季節ですからハチが群がる姿をよく見られることでしょう。花が咲いていつ実が付くのだろうと不思議に思われるでしょう。じつは,果実は球形で翌年の初夏に熟して黒くなるのです。面白いですね。
                                       中西 正一 先生


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