27,「ノアザミ(キク科)」


 「山には山のうれいあり海には海の悲しみや まして心の花園に 咲きし アザミの花ならば」・・・あざみの歌に登場するあざみはノアザミのことです。路傍に咲くこの花は誰からも親しまれてきました。
 子どもの頃,この花を切り取って逆さまにして手のひらでポンポンとたたいた思い出はありませんか。不思議にも手のひらに黒色の小さな虫が出てくるのです。手のひらをはう小さな虫を牛と言い,ピンピンはねる虫を馬と言いました。花を手のひらでたたいては「牛が出た」「馬が出た」と言いながら遊んだものです。きっと皆さんにも同じ思い出があることでしょう。
 ところで,アザミの世界にも大きな変化が見られます。1970年代頃からヒレアザミという茎にひれのあるアザミが増えてきました。ピンクや白の花が咲くこの花は,本来,低地に咲いていたアザミですが,出稼ぎが激しくなるにつれてこの辺りにも広がってきました。
 一方,谷間の水田の辺りや湿地に生えているサワアザミは,休耕田の増加と共に減少し,これを食草として生息していたヒョウモンモドキという蝶は絶滅してしまいました。環境の変化はこの地方にしか生息していない貴重な動植物までも滅ぼしていくのです。
                                       中西 正一 先生

キセルアザミ(「野草と共に」より)


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