32,「トリカブト(キンポウゲ科)」


 トリカブト・・・何を連想されますか。この花は,烏帽子(えぼし)のような紫色の美しい花の裏に恐るべき猛毒を隠しています。猛毒の主成分はアコニチンなどです。漢方ではトリカブトの母根を烏頭(うず),子根を附子(ぶす)といいます。
 小学校6年生では国語で附子という狂言を学びます。この狂言の「附子」は,主人が砂糖をぶすだと言って太郎冠者,次郎冠者に預けて外出します。ところが両人は,大事な物を壊したので死んでお詫びをしようと全部食ったのだが,まだ死ねないと主人に嘆いて見せます。子どもたちは屈折した狂言の面白さに触れながら伝統的な日本の文化の面白さを学んでいきます。このように,トリカブトは猛毒を持つ植物として昔から知られていました。トリカブトは,不老長寿の薬としても知られていますが,調合を間違うと死に至らしめます。
 このような恐るべきトリカブトですが花は大変美しくリンドウと共に秋を彩る花として味わい深いものです。この町でもごく限られた場所に自生しているのを見かけることがあります。自然に生えていて美しいこれらの野草を写真に撮ったり描いたりするのも面白いのではないでしょうか。
                                       中西 正一 先生

トリカブト
(「野草と共に」より)


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