34,「キツネノマクラ(リンドウ科)」


 誰がつけたのでしょう。キツネがまくらにして寝ている姿を想像するなんて・・・夢があって素敵ですね。
 キツネノマクラの本当の名前はツルリンドウと言います。花がリンドウに似ていてつる性の植物だからこの名前がつきました。山地の木陰に生える多年草です。花よりも紅紫色の果実が目立つのでご存じの方が多いと思います。
 子どもの頃,この果実を取ってホオズキのようにもみながら中から汁と種を出し風船のようにして遊んだ思い出があります。果実の皮を破ると真っ白の果実と扁平でまるい沢山の種が出てきます。少し甘みのあるこの実を食べていたので中の種のこともよく知っていました。
 風船にして遊んだり食べたりしながら,キツネはこんなに小さくまくらをして寝るのだろうかと子ども心に心配もしました。私の家の裏山は黒土で出来ています。その為キツネが穴を掘りやすく十数個のキツネの穴がありました。私は毎年,秋から冬にかけてキツネの観察をしていました。穴の回りに出てきて遊ぶ可愛い子ギツネに見とれながら,母さんギツネが子ギツネのまくらにキツネノマクラを用意してやる光景を想像したものです。木陰に生えて美しいキツネノマクラ,子どもの頃の思い出とともに大切にしたい花のひとつです。
                                       中西 正一 先生


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