40,「オトシブミ」

ヒメクロオトシブミ

オトシブミの巻いた葉
 「先生,木の葉をくるくると巻いた物がいっぱい落ちているんだけど何でしょうか」とおばあちゃんから電話がかかりました。「それは,きっとオトシブミですよ。巻いた木の葉をそっと開けてみてください。中から面白い物が出てきますよ」と話しました。すると,おばあちゃんは,花のこと,虫のこと,野鳥のこと等いっぱい教えてくださいました。私は,お礼にオトシブミ等の標本箱を持っておばあちゃんの家を訪れました。おばあちゃんは,4〜5oのオトシブミを見て「こんなに小さな虫が木の葉を巻くのですか」と驚いたり感心したりしておられました。「先生にお会いしてよかった。虫をいっぱい見せてもらったし,自然のお話をいっぱいきかせてもらった。今日はいい1日でした」と話されるおばあちゃんの顔は生き生きと輝いていました。
 数日後,美しいシクラメンの鉢植え(手作りの造花)をお礼にくださいました。そのおばあちゃんは昨年ご逝去されました。今もオトシブミを見るたびにおばあちゃんのことが懐かしく思い出されてきます。
 オトシブミの仲間は,日本に約85種が分布しています。成虫は,葉を巻いて産卵する習性があり,幼虫は,その中で葉を食べて育ちます。葉を巻いた物はゆりかごと呼ばれています。ゆりかごは地上に落ちて転がっているので,それを手紙に例えて「落とし文」と名付けました。「落とし文」をそっと開いてみましょう。ゆめとロマンがありますね。
                                       中西 正一 先生


戻る       次へ