44,「カワセミ(カワセミ科)」



 カワセミはコバルト色の背と橙色の下面をもった,くちばしの大きな美しい小さな鳥です。
 9月のある日のことでした。「お客さんが持って来て下さったんですよ。何と言う鳥でしょうか」と保護者の方が一匹の鳥を持参してくださいました。段ボール箱の中にいる美しい鳥を見てすぐにはカワセミとは分かりませんでした。身近に見るのは何十年ぶりだったからです。
 私が中学時代の頃のことです。私の家の上空を「ピー ピー」と鳴きながらコバルト色の美しい鳥が飛んで行きます。何という鳥だろう。どこに巣があるのだろうか。私はずっと観察を続けました。
 ある夏の日のことでした。裏山のカヤ原に隠れて鳥が飛んで来るのを待ち伏せしました。「ピー ピー」と飛んで来た鳥が段々畑の土手でぱっと姿を消したではありませんか。「あれっ。変だなあ。どこに消えたのだろう」と,目を凝らして見ると土手に小さな穴が開いています。「あの穴の中に入っていったんだな。よーし。今度飛んできたら捕まえてやろう」と,待ち伏せしました。苦心の末やっとカワセミを捕まえました。初めてカワセミを手にした時の感動を昨日の如く思い出します。
 カワセミは,粘土質の土手に穴を開けて巣作りをします。巣作りには魚の骨を使います。カワセミにとって生きた魚と粘土質の土手は絶対必要条件なのです。魚を求めて家庭の池にも飛来するカワセミですが,自然が創り出すカワセミの美しさには誰もが心を打たれることでしょう。
 
                                       中西 正一 先生


戻る       次へ