57,「マンリョウ(ヤブコウジ科)」



 花の少ない季節の中にあって,私たちの目を和ませてくれる物の一つにマンリョウがあります。果実の可憐さから広く観賞用として栽培されています。きっと,みなさんの家のお庭にも植えておられることでしょう。マンリョウはやぶこうじ科の植物です。ヤブコウジをご存じの方は「そうだ,ヤブコウジを大きくしたものがマンリョウだ」とうなずけることでしょう。
 雪の降り積もるお庭にマンリョウの赤い実を見るとほっとした気持ちになります。マンリョウのように寒い冬になっても赤い実をつけている植物を思い浮かべてみましょう。ナンテン・ピラカンサス・センリョウ・ウメモドキ・ツルウメモドキ・ソヨゴ・ガマズミ・ヤブコウジ・ツルリンドウ等たくさんありますね。いずれの実も赤く熟し,私たちの目を引きつけます。ところが,これらの実は人間にではなく野鳥たちに気付いて欲しいのです。野鳥に食べてもらい糞といっしょに種をばらまいて欲しいのです。自然に生える植物の種は,人間が撒くとなかなか発芽しないのに,野鳥が食べて糞といっしょに撒かれた種の発芽率は80パーセントを超える物もあります。植物の実と野鳥は共存共栄の関係なのです。
 せっかく大事に育てたマンリョウやセンリョウの実を野鳥に食べられて落胆されることもあるでしょうが,食べ物の少ない冬を懸命に生きている鳥たちにも思いを寄せてやりたいものです。

                                  中西 正一 先生


戻る       次へ