62,「オオミズナギドリ」(ミズナギドリ科)



 11月11日のことでした。
「ユリカモメだと思うのですが,保護しているので見てください。」
という電話が入りました。この辺りに海鳥がいることはありません。足に水かきがあるとのこと。
 カルガモの間違いではないだろうか。早速行ってみました。見てびっくり。見たこともない鳥だったのです。図鑑で調べオオミズナギドリだと分かりました。
 この鳥は,長い翼で海上を飛ぶ中型の海鳥です。日本では岩手県三貫島,東京都御蔵島,京都府冠島等の近海に集団繁殖しています。そのいくつかは天然記念物に指定されている貴重な鳥でした。冬季にはオーストラリアにかけての海域に渡って行きます。おそらくここの上空で敵に襲われたのでしょう。数日後,もう1羽が保護されていると聞き,2羽を一緒にしてやりました。1羽は翼を,1羽は足が傷つき治療には数ヶ月を要します。渡り鳥にとって,傷病は致命傷なのです。この鳥は,海の魚やイカを主食にしているため餌付けも不可能です。
 普通,野鳥を見ていると悠々と自由に大空を飛べていいなあ。と思いますが,実は常に外敵と戦いながら命がけで飛んでいるのです。傷つくもの,病に罹るものなど弱者は放置されるのです。このように,厳しい自然に生きる鳥たちから私達は,人としての生き方を考えさせられるのです。

                                    中西 正一 先生


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