63,「ミヤマフユイチゴ」(バラ科)



 飽食時代の子ども達でもミヤマフユイチゴを食べさせると「甘酸っぱくて,おいしいね」と言います。冬に食べられる珍しさもあるでしょう。
 ミヤマフユイチゴは山地の木陰に生えています。また,竹藪の入り口等にもよく見られます。周りの草が枯れる冬になると熟した赤いイチゴと紅葉した葉が斜陽に照らされ目立つようになります。フユイチゴの葉には鳥の糞がよく付いています。餌が少ないこの時期の鳥たちにとって格好の餌となるのでしょう。食足りた現在では「私たち人間が取って食べたらいけないな」と思うのです。
 イチゴと言えばグミの色々,提灯イチゴ,びーびーイチゴ,あずきイチゴ,モミジバイチゴ等々手当たり次第に食べたものです。熟すのが待てなくて,よく熟していないイチゴを食べては下痢や腹痛を起こして親に心配をかけました。
 イチゴばかりではありません。しんざ(スイバ),しゃりんぽ(イタドリ),ずんべえ「ツバナ」(チガヤ),かんす(ナツハゼ),いっしょ(ガマズミ),あけび,またたび,のいばら等々食べられる物は何でも食べたものです。ですから,誰もが何が何処にあるかをよくよく知っていました。
 このように,お菓子もおやつもあまりない時代の子ども達は自然を駆け回り自然の物を食べ歩きました。食べ物も着る物も,家も貧しくてもたくましく生き,限りない思い出を残してきたのです。
                                    中西 正一 先生


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