68,「フクジュソウ」(キンポウゲ科)

 福寿草は,新年を祝う花として親しまれてきました。しかし,中部以南では希にしか自生していない野草です。この県でも北東部の石灰岩域に生育し,県の希少種に指定されています。庭では見かけても,自然に生えているのを見ることは少ないと思います。町内には,自生地があります。地元の人の管理で自生種が群生しているのを見ると 「花を愛する人のおかげで咲いているんだよ。」と語りかけるフクジユソウの声が聞こえてくるようです。
 フクジユソウは早春の雪の中から黄色の美しい花を現します。日が当たると花を開き,夕方には閉じて眠りにつきます。それを何日も繰り返し葉が大きく伸びる頃に花は散っていきます。
 フクジユソウのように,キンポウゲ科の花の中には早春に咲くものが少なくありません。スハマソウ・イチリンソウ・オキナグサ・ユキワリイチゲなど。どれをとってみても可憐な花ばかりです。おもしろいことにこれらの花は,谷間の砂利が流れるような場所であったり,草原であったりと農耕には適さない場所に咲きます。自然の厳しさに長年耐えながらやっと咲かせる花に我慢すること,耐えることの大切さを教えられます。

                                    中西 正一 先生


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