77,「ヤマシャクヤク」(ボタン科)

 この町にはヤマシャクヤク(白色の花)とペニバナヤマシャクヤク(淡い紅色) の2種類があります。どちらも大変貴重な花です。特にベニバナヤマシャクヤクは県の絶滅危惧種に指定されているほどです。
 私はヤマシャクヤクは知っていましたが,ペニバナヤマシャクヤクが自生しているとは知らなかったので,初めて見かけたときには実に驚きました。「世にも珍しい素晴らしい花があるものだ」とそっとしておいたのですが,砂防堤の工事により掘り取られたり,土砂で埋まったりして今では姿を消してしまいました。誠に残念なことです。
 ヤマシャクヤクもベニバナヤマシャクヤクも落葉広葉樹林に自生し,どちらも高さ40〜50センチになる多年草です。初夏になると,茎の先に径4〜5センチの白色・淡紅色の可憐な花を一個付けます。ヤマシャクヤクは雌しべの柱頭が短く,少し外側に曲がるだけですが,ペニバナヤマシャクヤクは長く伸び著しく旋曲します。
 これらの花はいずれも落葉広葉樹林が広がる谷間に自生しています。田畑の出来ない谷間だったのが幸いして自生し続け守られてきたのでしょう。
 このように,狭い谷間は我々人間にとって役立たないと思われがちですが,貴重な美しい花が自生できる宝庫として役立っているのです。

                                    中西 正一 先生


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