82,「ウノハナ」(ユキノシタ科)

 「ウノハナの匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて忍び音漏らす夏は来ぬ」と歌にも歌われているウノハナが咲く季節を迎えました。皆さんはウノハナのことをウツギと呼ばれていると思います。これは,幹が中空であることから「空木」ウツギと言われるようになりました。子どもの頃,ウツギの枝葉を落とし一本の幹だけにした剣を振り回して遊びました。ピューツ,ピユーツと空気を切る音が出るので「真空切りだ」と赤胴鈴之助のまねをしたものです。そして「剣をとっては日本一の夢も大きな少年剣士親はいないが元気な笑顔弱いものには味方するがんばれ強いぞ僕らの仲間赤胴鈴之助」と大声を張り上げて歌いました。すっかり正義の味方になったつもりだったのです。
 あの中空のウツギにも利用価値があるものです。この辺りでは大きなウツギは太鼓の「ばち」として重宝がられています。
 ところで,最初の歌に歌われているようにウノハナが咲く季節になるとホトトギスが渡って来ます。「父ちゃん転けたか尻でも打ったか」 「てっペん欠けたか」と鳴くのがホトトギスです。ホトトギスはご存じのように托卵する鳥として知られています。にぎやかに鳴き叫んでは,静かにそっと忍んで行って他の鳥の巣に卵を産み付けます。そして,他の鳥に子どもを育てさせるのです。ホトトギスはとても正義の味方とは言えませんね。
 いずれにせよ,昔から自然の姿を歌い季節を感じ取り,遊びを通して心を育み,物を作る姿を見て自然を生活に活かす方法を学んだのでしょう。

                                    中西 正一 先生


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