83,「キジ」(国鳥)

 毎年のように5月になると「草刈り機でキジを刈り取ってしまった。卵がたくさんあるんだけど,どうにかなりませんか」と言う知らせが入って来ます。同じような経験をされた方は多いと思います。このような時,親が無事なら「刈り取った草で巣の周りを元に近い形に囲ってください」 と言います。時間の経過が少ないと親が戻って来ます。でも,しっかり囲った草原にしてやらないとカラスに卵をやられてしまいます。
 キジは人家付近の草原に巣作りをするので大変身近な鳥として親しまれてきました。火に囲まれても,草刈り機で斬り殺されても卵(雛) を守る親としての生き方に心を打たれた方も多いと思います。私にも色々な思い出があります。私の住んでいる行政区で人家火災が起こった時のことです。夜の火災でその家は全焼してしまいました。朝,区民全員が灰かきに集合しました。丁度家の前には細長い水田が横たわっていました。田のあぜを歩いて火災跡に行こうとしていた私はあぜに巣作りをしていたキジを踏んづけてしまいました。「ケン,ケン」 と羽毛を蹴散らしながらキジが飛び立ちました。昨夜の火災の火の粉や放水を全身に浴びながら守り続けた親の姿に心を打たれ,孵卵器で照化し育てました。普通,卵を抱くのは雌だと言われていますが,その時は確かに雄でした。
 たかがキジ,されどキジ…キジたちの親としての生き方に触れ,自分自身が人として立派に生きているのだろうかと反省させられるのです。

                                    中西 正一 先生


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