86,「コンニャク」(サトイモ科)

 コンニャク畑を見ると昔の思い出が次々とよみがえってきます。私が子どもの頃は何処の家でもコンニャクを作っていました。玉植,しばふり,草取り,消毒,玉掘など,子ども達も大切な働き手でした。コンニャクの思い出の一番は何といっても中学時代にコンニャク玉をむかごと間違えて食べたことです。ガジッとかみ砕いた瞬間,口の中に針が立ったような痛みが走り大変なことになりました。台所に飛んで帰った私は,水や塩水や砂糖水やホウ酸水,お酒や酢など台所にあるあらゆる物でうがいをしました。ところが,口の中の戦争は収まりません。奮闘努力する内にやっと頭にひらめいたのが「ふくらし粉」 でした。私は,このふくらし粉を使ってラムネを作って飲んだ経験を思い出したのです。早速ふくらし粉を水で溶いてうがいをすると今までの苦しみがスーと消え嘘のように楽になりました。
 その時,私は考えました。初めてコンニャクを食べた人はあのあくの強いコンニャクの食べ方をどのようにして見つけたのだろうかと。コンニャクを作るのにソバがらの灰汁が一番といわれますが,コンニャクは芋だから,焼いて食べたと思うのです。焼くとどうしても芋に灰が付着します。灰が付着した芋を洗って食べている内に灰汁であくを取ることを見つけたのだと思うのです。皆さんどう思われますか。
 人は,あらゆる物を調理して食べます。でも,その方法を見つけるまでには大変な苦労があったことを今更のように考えさせられるのです。

                                    中西 正一 先生


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