9,「ヒガンバナ(まんじゅしゃげ)」



 「紅い花ならマンジュシャゲ オランダ屋敷に 雨が降る・・・」と歌われたヒガンバナは,昔,中国から渡来したものが広がったと言われています。ヒガンバナ科の仲間にはナツズイセン・キツネノカミソリ等があり,この3つの花には共通した面白い秘密があります。それは私にとって子どもの頃からの疑問でした。
 ヒガンバナは水田の土手等でよく見られます。彼岸前には水田の畦や土手の草がきれいに刈り取られます。刈り取られてしまったはずなのに,なぜ,ヒガンバナが咲くのだろうか。これが,私の疑問でした。30歳を過ぎ,植物に興味を持つようになって初めてその疑問を明かすことができたのです。それは,3つともに葉が枯れ,無くなってしまってから花茎を出し花を咲かせるということでした。草刈りをする頃には葉は枯れて無くなり,花は土の下に隠れていたのです。
 特にヒガンバナは,花の後,周囲の草が枯れてしまった冬に線形の緑の葉を広げます。冬のわずかな日光を受けて球根を育てます。春,他の草たちが葉を広げる頃には枯れてしまい眠りについてしまいます。そして秋,あの燃えるような花を咲かせるのです。自然の草花たちは花の命を美しく咲かせるために,咲く季節を互いに譲り合っているのです。
                                      中西 正一先生

     
ヒガンバナ(「野草と共に」より)


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