脊柱管狭窄症で入院



第1章 脊柱管狭窄症とは
 
「脊柱管狭窄症」

聞き慣れない病名を告げられました。
数年前から「椎間板ヘルニア」と診断されて、マッサージや牽引を行っていましたが、
最近になって歩くのが困難になり再度病院へ。

そこでMRIの画像を見てビックリ。

「脊柱管狭窄症ですね」と先生。
「????」

 



「ヘルニアが腰の神経を圧迫しています」と、先生はMRI画像を指します。
なんとそこには とんでもなく変形した神経管が・・・しかも4箇所も・・・

神経の通っている管が狭くなり、神経を直接圧迫したり、神経周りの髄液が流れにくくなり
神経に栄養が届かず、痛みが出ます。

症状はとにかく痛くて歩けない。
3分間立っていると、足が攣るように痛くなり、5分後には痺れて感覚がなくなります。

おまけにいきなり腰に電気が走り、息が止まるほど痛くなります。
そんなときにはうずくまって、息を殺して嵐が通り過ぎるのを待つだけ。

表現が難しいですが、神経に何かが当たっているのが分かる痛み。
歯医者で麻酔をかけないで、「キュイーーン!」とされた痛み。
○○玉を、思いっきりぶつけた痛み。

「坐骨神経痛ですね」 と先生。 聞き慣れない難しい漢字がドンドン出てきます。

痛みを抑えるには、いったんしゃがんで腰を丸める事。
と言ってもいきなり道路で座り込んだら

「二日酔いか? そんなところでゲロ吐くなよ」
と、周りの視線が冷たく、

スーパーで買い物中にいきなりしゃがみこむと、
「万引きするなよ」 と 私服のガードマンに睨まれそうです。

腰を横から見たところ

正常な脊髄の神経 ヘルニアで狭まった神経

 


「先生 どうすれば治りますか?」

第1段階  「温存療法」

結局なんにもしないということです。
生活習慣を改め、運動を行い、血液を流れやすくする薬を飲みます。
長年悩んだ痛みが、こんなことぐらいで治るとは思えません。

第2段階  「ブロック注射」

腰に、痛み止めとステロイドを打ちます。
痛み止めの有効期間は短期間ですが、ステロイドで神経の腫れを抑え、狭くなった脊柱管でも
機能できるように改善します。

第3段階  「手術」

神経を圧迫している部分を削り取ります。
しかし場所が場所なだけに、難しい手術となります。
最後の手段と考えます。



そんな訳で第1段階から治療開始。

とりあえず、病院で処方された薬を飲みます。
  オパルモン・・・・・血液の流れを良くし、神経の回復を狙います
  ロキソニン・・・・・痛み止め・炎症止め。
  ムコスタ・・・・・・痛み止めが強力なので、胃を保護する薬。

牽引も良いのですが、病院に通う時間も無く、自宅に「ぶら下り健康器」を設置します。

「あの商品は今?」 といった特集で取り上げられ、「今では洗濯物干しになっています」と
オチのつく商品です。

探してみると、ちゃんと売っているもので、3,980円で購入。
これに毎日ぶら下ることに。

最初は体重をかけると足先まで痛みが走り、ぶら下るどころではなかったのですが、
慣れてくると「ジワー」っと足の感覚がよみがえります。



そんなある日。

完全にぶら下って10秒。
そのまま体を少し捻ったところ  「バキッ!」

「アウッ!・・・・・・・」
腰が思いっきり鳴りました。「シマッタ」と思ったのですが、これがまた不思議。
その後は腰の痛みも半減。
押されて潰されていた椎間板が、引っ張られて神経から離れたのでしょうか。

坐骨神経痛で歩けないのは変わらないのですが、息が出来ないほどの腰の痛みは無くなりました。

一瞬期待しましたが、まあ、この3,980円で治るほど甘くはありません。
第1段階の「温存療法」はこれ以上効果なし。
どう考えても自然に治るわけも無く、仕方が無いので第2段階の「ブロック注射」に進みます



「では 2週間の入院となります」 
「注射で入院? 2週間も?」

腰に打つ薬は強力で、半身麻酔になるほど。
当日はもちろん入院となり、それを数回繰り返すため、合計2週間の入院です。

仕事も心配ですが、仕方ありません。
2008年。 新年早々入院の運びとなりました。

       

第2章 入院してブロック注射
 
   
 2008年1月。

入院の荷物を持って、病院に出かけます。
「パソコン・書類一式・充電器・カメラ・携帯電話・外付HDD・・・・」

いったい何処に行くのか? 仕事で長期出張か? 海外旅行か?
大きなカバン2つを持っての入院です。

今回は入院中の仕事も多いはず。奮発して個室を頼みました。 差額ベッド代 8,400円/1日。
バストイレ付き。広さだけは豪華客船の客室並みです。



入院し荷物を整理していたら、
「じゃあこれからブロック注射しますね」 と、看護師さん。

「ええッ? まだ心の準備が・・・・」

「ブロック注射は痛いぞー!」っと、入院前に周囲から脅かされていました。
「背骨に針が当ると 飛び上がるぞー!」 とも言われています。

「あのお~ 看護婦さぁん まだ準備が出来ていないんですけど」
「大丈夫ですよ すぐに終わりますから、そのまま待てってね」



さあ困りました。客船に乗っても、旅館に泊まっても、最初は探検から始まるのですが
そんな余裕はありません。

「しばらくトイレには行けませんよ」 との事なので、急いでタンクを空にします。
すかり重病人のように、ベッドで横になって待つこと数分。
看護師さんが物々しい機械をゴロゴロ押してきました。

「この機械何? 注射だけのはずだよねえ」 と怖くなって聞いたら 「自動血圧計です」と回答が。
薬の影響で急に血圧が下がるので、念のための常時管理し、無線でナースステーションに飛ばすんだそうです。

「看護師さん 注射って痛い?」
「大丈夫ですよー。 チクッとするくらいですよー」

安心させようと看護師さんは、ウソを言っているに違いありません。
背骨に針を刺すのに、痛くないわけがありません。



「さあ 始めましょうか」 とドクターがやって来ました。 
「横になって背中丸めて下さい」

ベッドで横になり、膝を抱えるように背中を丸めます。
なぜか、おせち料理の「車えび」を思い出します 

「初めに消毒しますねぇー」
冷たい消毒液が背中をつたいます。

「ウヒャヒャヒャ・・・・・」 突然へんな声を出してしまいましたが、実は背中が弱いんです。
後ろに他人に立たれただけでビクッと反応し、触られでもしたら、くすぐったくて我慢できません。

「では最初の麻酔打ちます」
初めに皮膚に麻酔をかけますとの事。

「チクッ」 っとしましたがその後は少し押される感じだけ。
しかし安心してはいけません。これからが本番です。

またまた押された感触が続きます。
「さあ 来るか来るか?」と いきなり来るであろう激痛に構えます。

  が・・・・・



「ハイッ 終わりましたよ」
「・・・ヘッ?」

なんとこれでお終いだそうです。
さんざん脅かされたのに、痛みは普通の注射並み。

実はブロック注射にも打ち方が複数あり、今回のは「硬膜外ブロック」と呼ばれる方法。
直接骨に打つのではなく、骨の外の膜に打つそうで効果は広く浅いとの事。

これよりきついのは「神経根ブロック」 こちらはリアルタイムでレントゲン見ながら、
骨の間に打ち込むそうで、効果は絶大ながら本当に飛び上がるほど痛いんだそうです。



さて、麻酔を打たれた後はしばらくベッドで安静に。
仰向けに寝ていると、だんだん下半身が痺れてきます。

比重が重いので麻酔は下に溜まり、お尻の感覚はなくなります。
お腹もだんだん痺れてきます。 しびれはドンドン広がって、胃の当りまで!

ここで昔の事件を思い出しました・・・・・・



あれは20年以上前。アメリカでスカイダイビングをやっていて地面に激突。
病院に運ばれて、右足の複雑骨折で手術。

「アンダー? OR オール?」 と麻酔のリクエストを聞かれ「半身麻酔」を希望したのに、
なぜか意識不明になって、呼吸困難に。

意識が戻った時は酸素マスクを付けて、おまけに肺炎で高熱。

原因は麻酔が胸や頭に回って、呼吸中枢が狂ったこと。
(だと思います。 自分の英語力では理解不能でしたが)

比重の重い麻酔は下に行くので、脳に回らないように頭を少し高くします。
(これは 渡辺淳一の「麻酔」という小説で知りました)



「胃まで痺れが・・・・マズイ! 枕は?」 と思ったのですが、心配にはおよびません。
麻酔はこれ以上登らず、呼吸も苦しくなることはありませんでした。

2時間後。「体を起こせますか?」と言われゆっくり起こします。
今までのように腰の痛みはありません。

「立てますか?」と言われゆっくり立ちますが、これは無理。
足に力が入らず、倒れてしまいます。
もう少し安静が必要なようです。



安静にしなくてはならないのですが、3時間も経つとそうも言っておれません。
「トイレ行きたい・・・・」

「ベッドから起き上がるときは、危ないのでナースを呼んでくださいね」
と言われていたのですが、こんな元気な男が、わざわざ看護師さんを呼ぶのも申し訳ありません。
頑張って1人で立ってみました。

フラフラするものの、手摺につかまれば歩けそうです。
個室に入ってよかったです。トイレまで3歩。

トイレまでは近かったのですがその後が大変。
「・・・・でない・・・」

タンクは満タンですが、排水コックが痺れたようで力が入りません。
このままではタンクが破れます。
力を入れて圧力かけたり、日本史の年表思い出して力を抜いたりの繰り返し。

なんとか時間をかけて排水成功。
次回からは、ブロック注射の前の水分は控えたほうが良いかもしれません。
           

第3章 病院食
    

第1段階の「温存療法」に見切りをつけ、ブロック注射を行うことになったのですが、
問題は何処の病院に入院するか。

普通なら 
 「評判の良い先生がいる所」
 「設備のしっかりしている病院」
 「看護婦さんが可愛い所」

といった条件で探すものですが、私の場合はただひとつ。

「飯が美味いところ!」

自宅の近所には、過去にも入院した「T病院」や、超有名な「B医大付属病院」などがあります。

「T病院」は量は多いのですが、味が物足りない。
といっても病院食としてはかなり良い方。

「B医大付属病院」は「あれは食えたもんじゃない」とT病院で同室だった人が言っていたのでパス。

いろいろ考えた末、以前に入院したことのある「N中央病院」に決定。
ここは、ご飯の量は少ないのですが、おかずの種類が多く、丁寧に作っています。
しかも暖かい物は暖かく、冷たいものは冷たいまま。

前回の入院は1泊だった為、どうしても長期で食べてみたくなりました。
「よし。N中央病院に決めた」


例えばこんなメニューです

  「朝飯」  がんもどきの餡かけ・味噌汁・おひたし・ふりかけ・ミルク
        「T病院」ではおかずなしでしたが、ここでは1品多いようです。

  「昼飯」  ひじきご飯・にら玉子・サトイモの煮物・おひたし
        このひじきご飯は美味いです。
  

  「晩飯」  メンチカツ・ヒレカツ・大根サラダ・茸サラダ・パイナップル
        揚げ物が美味い! 油が良いのかアッサリサクサク。



  「朝飯」  温泉玉子・おひたし・味噌汁・海苔
        玉子は生ではなく温玉でした。

  「昼飯」  酢豚・春雨サラダ・おひたし
        酢豚はボリューミー! 春雨サラダも良い味です。

  「晩飯」  ギンダラの粕漬焼き・フキの煮物・おひたし・バナナ
        量は少ないものの、ギンダラは脂が乗って美味。  


これでカロリーは1日2,000カロリー。

普段は 「ラーメン餃子セットに半チャーハンね!」と中華屋で注文しており、
おそらく1食で1,500カロリー。

ビールも酒も飲んで、1日の摂取は5,000カロリー程度。
とんでもないメタボリックでしたが、今回の入院生活で減量できれば1石2鳥です。