卯多の思い出



「わが青春の…」と先にも書いたが、坂本昌行に夢中になっている現在でも、卯多が一番好きな芸能人は星正人。
なぜこんなに好きなのか、どうしてここまで執着するのか、今もって不明。
だって大根だし、ルックスも芸能人としては十人並みだし、オーラないし、今思えばヘタレだし。
他にきれいな人も、上手い人も、独特の世界を作り上げる人もいっぱいいるのに。

なのに、なんで正人なんだ?

しかも彼が芸能界にいたのは、1975年から1987年の12年間のみ。
これを長いと見るか短いとみるか。
引退後20年近くが過ぎ、有名な作品にもあまり出ていないので、その姿を見られる機会は限られている…。
でも、やっぱり好きなんですよ。

ということで、大多数の方には何の興味もないとは思うものの、思い出の中の正人を語っていきたいと思う。
ただ、書き始めて思うこと。難しい!
書いている言葉がどんどん暴走していく。
つまるところ、私は正人については未だに冷静ではいられないのだろう。

結局、ルックス?
最初にこう言ってしまうと元も子もないけど、結局はそういうことかな、と思うことがある。

だって上手い下手抜きで「あ、この人いいかも?」と思う相手(限る芸能人)は、たいてい正人のルックスを踏襲している。
肩につく位の少し癖のある長めの髪、逆三角形の小さめの顔、吊り上がり気味の大きな目、長身で細身、手足の長いすらっとした体型。
そこにやんちゃな表情と少し気弱な影が見え隠れすれば、もう完璧。

かの坂本昌行だって、ぜんぜんその気なしにファンをやってたのに、彼が30になろうとしていたある日、ふと気付いた。
「あれ? パパって正人に似てる?」
それを従妹に言ったら、「あんた、なにを今更」と冷たく即答された。
だって、数年間自覚がなかったんだもん。しゃーないやん。

あるいは、キャラクター?
正人の基本キャラクターは、調子が良くて女好きで、軽くつっぱり野郎。でも実は純情?
これって当時のドラマや映画の典型的若者像。
つまり「正人じゃなくてもいいやん!?」ってやつ。

あえてツボを探すなら、弟キャラ。
ご本人は2人兄弟の上らしいが、誰かとコンビらしき設定になると、必ず年下の方。
しかも一見振り回していそうで、実は年上の方に振り回されているという。
卯多的黄金コンビ「大都会V」のジローさん&トラしかり、「ドーベルマン刑事」の矢吹二朗しかり、「影の軍団U」の江藤潤しかり、「愛のホットライン」の近藤正臣しかり。
「なんでよぉ、もう。しょうがねぇなぁ。」とぼやきながら、ほてほてと付いていく姿がたまらず好きだった。

加えて言うなら、一見「動」に見えて、実は「静」のところ。
卯多は、直感的に人を大きく「静」と「動」の性質に分類する癖があるが、正人は間違いなく「静」のイメージ。
動き回ることが持ち味の人に変かもしれないが、アクション・シーン等で体は激しく動かしていても、どこかもの静かなイメージがある。

それは、数少ない「演じていない」正人が見られたクイズ番組「クイズ・スクエア」での印象も大きい。
山城慎吾など個性溢れるパネラー陣の中で、いつも他人の言うことに黙ってにこにこケラケラと笑っていた正人。
一度だけ印象的な出来事があった。
この番組は一般人が解答者として出演していたのだが、パーフェクトを達成した熟年のご夫人が「お祝いに、パネラーの誰かからキスを」と言われ、正人をご指名。
正人は何の照れも気負いもなく、スタスタとパネラー席からやってきて、笑顔でそのほほに軽くキスをして、出てきたときと同じようにスタスタと席に戻っていった。
そのなんでもない仕種を、今でもクリアに覚えている。
思えば、あれが決定的に正人が特別になった瞬間かもしれない。