第4話
傷心
〜そばに・・・いて欲しい・・・
B

夜、仕事から帰ってきた犬夜叉を呼び止め、楓は犬夜叉に刀々斉から聞いた話を犬夜叉に伝えた。

「というわけで・・・。申し訳なかったのじゃが桔梗の事を皆に話した。許せ。犬夜叉」

犬夜叉はかなり不機嫌そう・・・。

「あのおしゃべりじじいめ・・・。人のことペラペラしゃべってんじゃねぇよ・・・」

「そうはゆうが、お前、『無双』という奴を本当にしらんのか?」

「しらねーよ。そんな野郎は・・・」

しかし、『黒い手袋の男』というのが気になる・・・。


桔梗との約束の場所にいたあの男・・・。黒の皮の手袋をしていたのが今でも記憶にある・・・。


「ともかく気を付けることに越したことはないぞ。犬夜叉・・・。だたでさえお前は何かとケンカ沙汰なんかでうらまれてそうだからな・・・」


荒れていた頃・・・。あちこちでケンカし、犬夜叉に敵意を持っている者は何人もいるが・・・。

「でもお前だけならまだしももし・・・『無双』が今お前がここに居ることを知っていたら・・・。桔梗とうり二つなかごめを見過ごさないだろうな・・・」

「!!」


楓のその言葉にドキリとする犬夜叉。

「かごめ・・・が・・・?」

「お前よりむしろかごめの方が・・・」


不安になる犬夜叉に拍車をかけるように珊瑚と弥勒が楓の部屋にあわてて入ってきた。

「犬夜叉!かごめちゃんこっちに来てない?」

「かごめがどうかしたのか!?」

「うん・・・。さっき、あたしかごめちゃんにお醤油借りようと思って部屋に行ったらかごめちゃん、いなかったの!」

「さっき、私は、窓から長身の男の姿をチラッと見ました。それで急に心配になって・・・」

「・・・」

バタン!!

「犬夜叉!」

犬夜叉はドアを乱暴に閉めてかごめを探しに飛び出していった。

「珊瑚、私達も行きますよ!手分けしてかごめ様を捜そう・・・!」

「うん!」

弥勒と珊瑚も犬夜叉の後を追う・・・。

「かごめ・・・」

楓は心配そうに皆の後を見つめていたのだった・・・。



「お醤油切れてるの忘れてた」


コンビニのビニール袋入った醤油のボトルをぶらさげてかごめは夜道を歩く。


アパートから2,3分のところにあるコンビニにアパートの人間はよく買い物に行くのだ。


「それにしても・・・。ここって暗いなぁ・・・」

電柱に街灯もついてはいるが、かなり薄暗い・・・。

周りは住宅ばかりで人通りもほとんどない・・・。

楓から、外に出歩くときは気を付けろと言われていたことをおもい浮かべるかごめ・・・。

(・・・。早く帰ろう・・・)

かごめは少し歩くのを早める。


コツコツコツ・・・。

かごめの靴音に合わせて後ろからももう一つ足音を感じるかごめ。

(誰か・・・。つけてきてる・・・!?)

コツコツコツ・・・・。

明らかにかごめともう一人誰かが歩いている音がする。


(・・・。どうしよう・・・ッ。)

しかしかごめは突然、すごいスピードでダッシュ!

後ろの足音も速く鳴り響いてかごめを追う・・・!

曲がり角に来たとき、かごめは路上駐車してあった車の影に身を隠した。

すると、足音はピタリと止んだが・・・。

かごめは恐る恐る顔を出し、辺りを伺う・・・。

誰もいない・・・。

(・・・。もう大丈夫かな・・・)

そう思い、再び歩き出した瞬間・・・!


「ウウウ・・・ッ!!」


黒い手袋がかごめの肩を掴かんだ・・・!!

かごめがチラリと後ろに視線をやると不適に笑う男が・・・。


そして男はかごめの耳元で不気味に囁く・・・。


「見れば見るほど桔梗ににてやがるな・・・。匂いは違うが・・・」


かごめは背筋に悪寒が走る。


「黒い手袋・・・。あんたもしかして・・・『無双!?』」


「へぇ・・・。俺はそんなに有名なのか。くっくっ・・・」

「あ・・・。あたしをどうするつもり!?」


「さぁあて・・・どうするかな・・・。犬夜叉の前であんたを傷つけるのもよし、あんたをかっさらってあわてるあいつの顔をみるのもよし・・・。どっちにしろあんたにはあいつを呼び出す餌になってもらう・・・」

かごめは大声を出して、助けを求めたいが、口を更にグッと塞がれかすれ声さえ出ない!

(・・・。嫌だ・・・。このままこいつの思い通りになんてさせない・・・!!)


かごめは右手に持っていた醤油の入ったビニール袋を思い切り後ろに振り上げた!!


バコンッ!!!


「うッ・・・!!!」


見事に男の顔面に命中!!


かごめはその隙に走って逃げた!!


「まちやがれ!!女!!」


そして向こうから犬夜叉の声が!!

「かごめーーー!!」

かごめは全速力で走った!!


「犬夜叉ーー!!」


「かごめ!!」


かごめは犬夜叉の後ろにガバッと身を寄せ、隠れる!

「かごめちゃん!」

「かごめ様!」


あとから弥勒と珊瑚もやってきた!


そして、犬夜叉とかごめを追ってきた男ははちあわせる!!


「てめぇか!!無双ってのは!!」


「・・・。ふっ・・・。久しぶりだな・・・。犬夜叉・・・。この2年お前をずっと捜していた・・・」


男・無双は2年前と同じように両手に黒い皮の手袋をし、長身だった。


「てめぇ!!今頃俺に何の用だ!!」


「“何の用だ?”だぁ・・・?大ありさ・・・。てめぇにゃ、たっぷりと桔梗の仇を打たなきゃきがすまねぇッ!!」

「桔梗の仇だと!?ふざけんな!!何でてめぇが・・・。てめぇと桔梗はどういう関係だ!!何で2年前俺の前に現れた・・・!!!」


「・・・くっくっくっ・・・。フハハハハハッ!!!」

無双は大声で高々と笑う。


「な、何がおかしい!!」

「てめぇは何にもしらねぇのか?きづかねぇのか・・・?何故桔梗があそこへこなかったか・・・」


「・・・何がいいたんいんだ!!てめぇ!!」


「桔梗はな・・・。お前との約束の場所には行ったさ・・・」


「嘘だ!!俺はずっと待っていた・・・。でもあいつはこなかった!!!」


「ふっ。そうさ行ったに行ったが“別の場所”にな・・・!!!」

「!!!!」


「俺が桔梗の携帯にお前の名前で落ち合う場所の変更をしたいというメールを送ってやった・・・。あいつはすんなり信じてその場所へいそいそとその日のコンサートをすっぽっかして行った・・・。そして俺は桔梗の代わりにお前に金を渡しに行ったんだ・・・。お互いに裏切ったと思わせるために俺がそうしたんだ・・・。でも、まさか桔梗があんな事故にあうとは思わなかった!!!俺は愕然としたさ・・・」


「・・・」


約束のあの日・・・。犬夜叉は夜になっても桔梗を待っていた。


でも桔梗は来ない・・・。


“裏切られたのか・・・俺は・・・ッ!”


そう思った・・・。無双の言うように住む世界が違う・・・。自分との逢瀬はひとときの天才バイオリニストの“気まぐれ”だったのかと・・・。


そしてその後すぐ・・・。桔梗の死をテレビで知る・・・。


『一体、何がどうしたんだ!!なんで桔梗があの日こなかったんだ・・・!!』


訳の分からないまま恋人を失い、何もかもが嫌になった・・・。


「俺はずっと桔梗のマネージャーをしてきた・・・。アイツの天才的な才能を育ててきたんだ!!それをてめぇなんぞと出会ったせいで、あいつはふぬけになっちまった!!挙げ句に駆け落ちなんぞ馬鹿なこと考えがって・・・ッ!!!!全部てめぇのせいだ!!!てめぇのせいで桔梗は死んだんだーーーーー!!!」

「て・・・てめぇええええええーーーーーッ!!!ふざけんじゃねぇェえええーーーーーーーッッ!!うわあああああ!!!!」

バキィッッ!!!

犬夜叉は、わき上がる激しい怒りを拳に代え、無双にぶつけた!

ドカッ

!!バキ!!

容赦なく犬夜叉は無双を殴る!殴っても殴っても気が収まらない!!

「犬夜叉!やめろ!!」

「うるせえ!!!はなしやがれ!!ブッ殺してやる・・・ッッ!!この野郎!!桔梗の仇うってやる!うおおおおおおッ!!!」

弥勒は必死に犬夜叉を後ろから両手で止めようとするが、犬夜叉はものすごい力で暴れ、振り払われる!

「てめぇえええーーー!!」

「犬夜叉もうやめて!!」

かごめは無双の襟をつかむ犬夜叉の腕に掴んで、必死に止めた。

「うるせえ!!どけ!!かごめ!!」

「お願い・・・!!もうやめて・・・ッ。これ以上そんな犬夜叉見たくないの・・・ッ」

必死に訴えるかごめの瞳に・・・涙がにじんむ・・・。

「・・・」

犬夜叉はフッと無双の襟を離した・・・。

「俺は・・・。俺は・・・ッッ!!!!!」

辛い・・・。辛い・・・ッ。

桔梗は・・・。桔梗は・・・ッ!

「あッ・・・犬夜叉ッ!!」

犬夜叉は、その場にいるのが堪らず暗闇の中へと走っていってしまった・・・。

「く・・・。くくくく・・・」

不適に笑う無双・・・。

「情けねぇ野郎だ・・・。にげていきやがった・・・。やるならやっちまえばいいものを・・・。まぁどっちにしろ桔梗はもうかえってこねぇ・・・。桔梗は永遠に俺のもんだ・・・。永遠にな・・・。くっくっくッ・・・」

バシッ・・・ッ。


かごめの平手が無双の頬を強く打った。

そして険しい表情で無双に告げる。

「あんたの事なんて・・・。桔梗だって誰だって愛さないわ・・・ッ!誰も・・・ッ!!」

そしてかごめはすぐに犬夜叉を探しに後を追いかけた・・・。

「あ、まってかごめちゃん・・・ッあたしも・・・」

珊瑚も行こうとしたが、弥勒が止めた。

「ここはかごめ様にまかせた方がいい・・・」

「・・・。うん・・・」


その後・・・。無双は弥勒達がの手により警察に引き渡された・・・。

弥勒、珊瑚、楓の3人はただ、犬夜叉とかごめの帰りを待っていたのだった・・・。


暗い街の中をかごめは息を切らし、犬夜叉を捜した。

しかし、どこにもいない・・・。

(どこ行ったの・・・。犬夜叉・・・)

かごめはその時、『日暮神社』がなぜか頭に浮かんだ・・・。

御神木の下で蹲る犬夜叉の姿・・・。

かごめの足はすぐさま日暮神社に向かった・・・。


「犬夜叉・・・」

御神木の前で、ただ、ぼう然と立ちつくす犬夜叉・・・。

その背中はひどく痛々しく見えた・・・。

かごめは少し近づこうとした・・・。

ドカッ!!!

ビクッとするかごめ・・・。

犬夜叉は思いきり御神木に拳を叩きつける・・・。

「・・・。。俺がもっとあいつを信じていれば・・・。死なずにすんだ・・・。俺が・・・!!あんな野郎の嘘を見抜いていれば・・・!!俺にな俺が・・・ッ!!俺が・・・ッ!!」

天才バイオリニストとしての安定して輝く未来。才能・・・。

もしかしたら桔梗は生きていたら今、世界にもっと羽ばたいていたかも知れない・・・。

「くそッ!!!クソッツォオオオーーーッ!」

ドン!!

地面をを叩きつけ、崩れるように座り込む犬夜叉・・・。



痛い・・・。痛いよ・・・。


全身が、犬夜叉の全身がそう言ってる気がする・・・。


どこへぶつければいいか分からない怒りと哀しみと悔しさが犬夜叉の全身を 覆って 痛めて 傷つけて・・・


私は何をすればいい・・・?


私はどうしたらいい?


私には何もできない・・・。何も言えない・・・。


でも・・・。私は・・・。


今・・・。犬夜叉のそばに・・・いたい・・・。


今・・・。とてもそばに・・・。


かごめは夜空の月を見上げた・・・。


太陽ほどみたいにあたたかくないし、明るくない。けど・・・。


今夜の月は気持ちが優しくなるくらいに綺麗だ・・・。


「犬夜叉・・・」


かごめはゆっくりと犬夜叉の隣に腰を下ろした・・・。


微かに・・・優しい匂いがして・・・。


二人・・・御神木を背もたれに座っている・・・。


「・・・」


「・・・」


犬夜叉は俯いたまま、かごめは月を見上げたまま二人は何も話さず、しゃべらない・・・。


でもその静けさが・・・興奮していた心を落ち着かせて・・・。


そしてとなりが・・・。なぜかあったかい・・・。


怒りも哀しみも悔しさも少し・・・柔らかくなる様にあたたかい・・・。


言葉はいらない。言葉なんていらない。


ただ黙って お互いを感じて・・・。


となりに在る温もりが・・・。何よりも生傷だらけの心を・・・。


そっと照らし温める・・・。


優しい匂いと一緒に・・・。


俯いたままの犬夜叉・・・。


フッと顔を上げた・・・。


「犬夜叉・・・」



かごめが


笑ってた・・・。


ただ・・・。


ワラッテ・・・た・・・。



怒りでこわばった体が一瞬にして軽くなる・・・。


つめたい氷の中に灯るろうそくの様にゆっくりと優しい温もりが犬夜叉心に染みこんで・・・。


疲れ切った体を受けとめてくれる柔らかなベットの様にホッとして・・・。







−オマエノエガオガホシイヨ・・・−



「犬夜叉・・・。ずっと黙ってるね・・・。もし・・・邪魔ならあたし・・・行くね・・・」


かごめが立ち上がりその場を離れようとしたとき・・・。



(・・・え・・・?)



力強い力がかごめの腕をガッと掴んだ・・・。



『・・・行くな・・・』



すがるような・・・。


心細そうな・・・。


そしてとても愛しげな・・・瞳で犬夜叉は言った・・・。


(な・・・なんて目してんのよ・・・)


「そばに・・・いて欲しい・・・。頼む・・・」


「・・・」


かごめは腕を掴まれたまま静かに座った・・・。


「犬夜叉・・・」

「・・・」


何も言わなくていい・・・。


桔梗の事はわすれちゃいねぇ・・・。でも・・・。今だけ・・・。


このぬくもりと笑顔の側にいたい・・・。


かごめは掴まれた犬夜叉の腕をそっと離し・・・。


「!」

代わりに・・・。犬夜叉の右手をそっと握った・・・。


小さな手だった・・・。


“大丈夫・・・。大丈夫・・・”

そう言っているようで・・・・
犬夜叉の心に元気を与えるようだった・・・。


やっと第4話まで来ました。この後、もっと犬かご的にしようかと思っております。あとミロサンももっと書きたいので、かなり長めになりそうな気配ですが、引き続き読んでいただけたら嬉しいです。また、原作編も執筆中なので、そちらの方もよろしくおねがいします。