第8話
お風呂でデート!?

現代の若者は一人暮らしをするとなるとバス・トイレは当たり前、エアコン完備は常識な今日。

それらがない築30年はあろうかという古アパート『楓荘』の住人達。

家賃は破格の値段で2万円台であるが、当然、入浴は銭湯。

その彼らには行きつけの駅前の老舗の行きつけの銭湯があった。

今夜は犬夜叉、かごめ、弥勒、珊瑚の4人は一緒に行くことにした。

「けっ。学校の修学旅行じゃあるまいし、なんでぞろぞろ4人で行かなきゃなんねーんだよ」

「何を言ってるんですか!犬夜叉これぞ本当の『裸』のつきあいなのですぞ?同じアパートの住人達が親睦を深めるにはもってこいじゃありませんか。ね?ね?女性陣の方々」

女性陣、かなり冷たい視線を送る。

「弥勒さまが言うとなんかやらしく聞こえるよね。ね、かごめちゃん」

「そうだね」

弥勒、犬夜叉にすり寄り味方をつけようとする。

「ああ、そうだ。皆さん、帰りにどうです♪犬夜叉の大工への道お祝い記念として・・・」

「ええい!なつくな!別にそんなもんせんでいい!」

「いいなじゃいの。犬夜叉。私も嬉しいからお祝いしたな・・・」

かごめが言う『お祝い』とは犬夜叉が高木の紹介で工務店に勤めないかといわれた。

“お前、大工に鳴る気はねぇか?俺の知り合いの所で修行して、一人前になったら俺の店に来い。俺はそれまで店をなんとか建て直すから。な!

高木にそう勧められた犬夜叉。

“犬夜叉ならきっとできるよ。頑張って”

かごめはそう言ったがいまいち気が進まない犬夜叉。

師弟関係の厳しい世界。指図されるのが一番嫌っている自分が果たしてできるかどうか分からない・・・。

「犬夜叉の新たな前途を祝って、パアッとさっぱり湯上がりに一杯どうです?ね?」

「まだ、決めたわけじゃねぇ!!余計な気、まわすな!」

しかし弥勒、犬夜叉言葉など無視して一人盛り上がる。

「では決まり!では皆さん、後ほど・・・ってあれ?」

銭湯についた犬夜叉達 。しかしがらんと静まりかえっおり、入り口には『閉店』の張り紙が・・・。

「何だか急ですなぁ・・・」

「寂しいな・・・。あたし、この銭湯好きだったのに・・・」

かごめ、残念そうにため息をつく。

「あたしも。お風呂から上がってここのね、ラムネ飲むのすっごく楽しみだったのに・・・」

戦後からずっと営んできたこの銭湯。値段も100円玉一つあれば何回でも入浴できる、庶民的な銭湯だった。この町の人々にも親しまれてきたのに・・・。


「仕方ないですね。大通りの『ラビナス』でさあっと汗を流しましょう!」

「ラビナス?あの健康ランドみたいな所?」

珊瑚の言う『ラビナス』とは、つい最近できた、風呂、サウナ、エステ等すべて揃った銭湯。

銭湯と言うよりちょっとした温泉宿みたいな感じだ。

「・・・仕方ないね。この辺でお風呂屋さんっていったらもうそこしかないし・・・」

「ですな。じゃ、行きましょうか?皆さん」

その場を離れようとしたとき、かごめが立ち止まり、閉店になった銭湯の大きな煙突を見上げた。

「どうした?かごめ」

「うん・・・。あの煙突・・・。この町ののシンボルだったんだって・・・ずっと・・・。おばあちゃんがいってたの・・・」

戦後、焼け野原だったこの町。不思議とこの銭湯だけは無傷で残ったという。家を失った人々の体と心を温かな湯で癒し続けてきたのだ。

「最近、おばあちゃんが元気ないなって思ってたけど・・・。こういうことだったんだ・・・。きっと哀しいだろうな・・・。おばあちゃん・・・。ん?何よ。犬夜叉。人の顔じっと見て・・・」

「・・・。何でお前って奴はそう、赤の他人の事なのにそんな心配するんだ。お前が心配したところでどうにかなるもんじゃねぇだろ?」

「そりゃそうだけど・・・。でも、あたし、ここのおばあちゃん大好きだったから・・・」

「・・・」

首を傾げる犬夜叉。やっぱりかごめのこういう所は分からない。

「おーい。かごめちゃん達なにしてんの、行くよー」

「あ、うん。いこ、犬夜叉」

「お、おう・・・」

チラッと煙突を見る犬夜叉。

かごめの気持ちまでは分からないが確かに、味のあるどっしりとした煙突だな・・・と犬夜叉は思ったのだった。


そして帰って犬夜叉達は銭湯が閉店になった事を楓に話した。すると・・・。

『仕方ないのう。そんじゃうちに風呂つくろうかのう』

「えーーーー!?このオンボロアパートに風呂なんかあんのか!まあ、管理人もオンボロだけどな!」

ボカ!

楓、犬夜叉の口を黙らす。

「ふっ・・・。それがな、あるんじゃよ。お前さんたちが産まれる前くらいまでは実際つかっておたんじゃ・・・。付いてこい。見せてやる」


懐中電灯を持って楓に導かれるまま、犬夜叉達はアパートの裏に・・・。

「こ、これは・・・」

小さな家一軒たっている。周りは伸びた蔦で覆われていた・・・。

「なんでい。ただの物置じゃねぇのか?今にもぶっこわれそうだぜ」

ボカ!

楓、犬夜叉黙らす、2回目。

「ふんっ。何を言うか!このアパートもこの風呂場も一流の大工に造らせたんじゃ。大工見習いが偉そうなこというな!」

ガラガラッ!

引き戸を開けると入すぐ脱衣場になっていた。

「わあ・・・。なんか小さい『銭湯』って感じだね・・・」

「ふ。どうじゃ。そら、中もなかなか古めかしくていいぞ。ちなみにガスと水道は通っておる」水色のタイル張りの風呂場だった。

浴槽もユニットバスではなく、丸いタイルが張り巡らせている。そしてなんと天上には天窓が・・・。

「キャー素敵!星を眺めながらお風呂に入れるね!」

「うん!」

女性軍は天窓に夢中。

しかしこの男は風呂場の壁や柱を見回して言った。

「けっ。きゃーきゃー言ってンじゃねぇよ。かごめ。天上も雨がふりゃ雨漏りしそうなくらいに腐ってるし、タイルだってはがれまくってやがる。風呂に入るつったって相当をなおさねぇと無理だな・・・こりゃ」

「じゃあ、みんなで治そうよ!」

「は?」

かごめは目を輝かせている。

「ね、みんな、せっかくこんな素敵なお風呂場があるんだよ?みんなでリフォームしよう♪」

「いいですな〜♪名付けて“楓荘新装風呂場リフォーム計画”!」

「あ、何か楽しそう♪ねーねー。壁の色何色にする?かごめちゃん」

「けっ。正気かよ。こんな今にもぶっこわれそうなモン、やったって意味ねーじゃねーか」

と、盛り上がっている3人を白い目で見ていた犬夜叉だったが・・・。

次の日曜日・・・。


「おい。なんで俺はこんなもんもってんだ?」

いつのまにか片手にのこぎり。片手にトンカチを持たされている犬夜叉。

準備万端。いつでもリフォーム計画発動できる。

「弥勒と犬夜叉は屋根の修理担当ね。あたしと珊瑚ちゃんはお風呂場と外壁ペンキ塗りします」

「おい、こら!かごめ!俺はこんなめんどくさいこと・・・」

犬夜叉の目をじいいっとのぞきこむかごめ。

「な、なんだよ・・・」

「あたし、どうしても星を見ながらお風呂に入りたいな。ね?犬夜叉、結構器用でしょ?協力してくれる?」

「・・・」

手を合わせてたのむかごめに犬夜叉、断れない。

「ちっ・・・。仕方ねぇな・・・」

「ありがと♪じゃあ、早速始めましょうー♪エイエイオー!!」

かごめ達3人張り切っている横で犬夜叉は横目でみていた。


トントンカンカン・・・!

なんともいい軽快な釘をうつ音が浴室内に響く。

かごめと珊瑚は浴室内のタイルを崩れている部分だけに、新しいものを貼りつける。 。

今はホームセンターに行けば、オシャレなタイルが沢山売っている。

セメントで一枚一枚貼りつけていく。

「珊瑚ちゃん、上手だね。とってもきれいに貼れてる」

「うん。あたしこういうの結構好きだよ。でもかごめちゃんは料理がとっても上手じゃない」

「好きなだけだよ。それにしても・・・」


トントン、カンカン・・・。


素人でもそのリズム感のある音を聞くと『この人は大工仕事に手慣れている』と思う程、実に軽快なしっかりした音。

「犬夜叉、ホントに上手そうだね」

「うん。この間もね、楓おばあちゃんの部屋の窓の引きが悪いから、犬夜叉、簡単に直しちゃったの」

自転車には乗れなかった犬夜叉。でも、楓が『おい、お前のその馬鹿力でワシの部屋の窓なおしてくれんかの』と言ったら、トンカチ一つ持ってきてトントンと叩いてすぐに直してしまった。

だから、かごめは今回の高木の申し出は願ってもない話だと思ったのだが・・・。

「おー。女性軍、そっちの方はどうですか?」

丸い天窓から弥勒がかごめ達を見下ろす。

「大分貼れたよ。弥勒さま達の方はどう?」

「ええ。犬夜叉が頑張ってくれてますよ。とても素人とは思えませんね。おい、犬夜叉、お前、経験あるんじゃないのか?」

「うるせー!!そんなもんねーよ!!余計なことくっちゃべってないで、さっさと次の板貸せ!」

「はいはい」

天窓にチラッと見えた犬夜叉。

ちょっと照れくさそうにしている顔がかごめはなんとなく嬉しかった。

そして丸い天窓から見える青い空・・・。

澄み切った空・・・。

「・・・」

かごめは立ち上がり、弥勒に言った。

「弥勒さま、犬夜叉、ちょっと休憩にしよう!」

しかし、降りてきたのは弥勒だけ。

缶ジュースを飲んで一服するかごめ達をよそに犬夜叉は一人で屋根の修理の続きをしていた。

「あたし、犬夜叉にジュースあげてくるね」

そう言ってかごめはゆっくり脚立を登り始めた。

「かごめちゃん!あぶないよ!」

「平気平気・・・」

かごめが屋根に登ると、真剣な顔で瓦の下の板を取り付けている犬夜叉の姿がそこにあった。

「犬夜叉。休憩にしない?」

「か、かごめ!お前、なんで・・・」

「あたしも何だか青空みたくなったの」

「あ・・・青空ってお前・・・」

「はい、ジュース」

かごめは犬夜叉にジュースを手渡し、屋根に体育座りした。

犬夜叉も金槌を置き、かごめの横に座る。

プシュッ・・・。

かごめが栓を開けると炭酸ジュースの白い泡が吹き出した。

そしてゴクゴクと飲む。

「はー・・・。おいしい・・・」

「・・・」

実に美味そうにかごめをじっと見る犬夜叉。

「何?」

「お前、何でも本当に美味そうに飲んだりくったりするな・・・」

「だっておいしいんだもん。特にこんな青空みながらなんて・・・」

「そんなもんか」

「うん!そんなものよ」

犬夜叉は不思議そうにジュース缶を眺めてから一口喉を潤す。

「・・・。わからねぇが、まずくはねぇ」

真面目な顔で言う犬夜叉にかごめは可笑しくてたまらない。

「ふふ・・・。ふふふ・・・」

「笑うな!こら!」

「ごめんごめん・・・」

「ったく・・・」

かごめはこういう時の犬夜叉がたまらなくいいなと思った。

子供っぽくてで意地っ張りだけど妙に素直なところもあって・・・。

しかし、屋根を修理している時の真剣な顔もかごめは見ていた。

きっとこういう仕事が好きなんだ・・・。

そう思った・・・。

「ねぇ、犬夜叉、屋根しゅうりしてるときの犬夜叉、すっごくいい顔してたよ」

「な、何だよ急に・・・」

「物を造る事、好きなんだね。きっと・・・」

「けっ・・・。別に俺は・・・」

「高木さんもきっと犬夜叉のそう言うところ、見抜いてくれたんだと思うよ。犬夜叉の良いところちゃんと見てくれたるんだよ・・・」

「へん!高木のオヤジが見てるのは競馬新聞だけだぜ。オッサンの家には馬の人形まであって・・・」

「ふふ・・・。もう家族ぐるみなんだね。高木さんとは・・・」

「ち、違うワイ!酔っぱらったおっさんを家まで送っただけでい!」

高木の財布を盗ったと濡れ衣騒ぎはあったが、今では高木はすっかり犬夜叉を信用して、自分の家に招くほどでだった。

でもそれは・・・。あの雨の中、かごめが財布を見つけてくれたからで・・・。

「はー・・・。いい風吹いてる・・・」

かごめの柔らかい髪がフワッと風になびく。

かごめはじっと空を見つめている。

「ねぇ犬夜叉」

「なんだよ」

「空ってずっとみてても飽きないよね」

「そーかー?」

「うん。だってさ、毎日表情が違うんだよ。晴れた日でも雲の形とか、空の色とか全然違う。大学の教室の窓からいつも見てるんだ・・・」

かごめはジュースを一口含んだ。

「けっ。よーするに授業中ぼーとしてるってことだろ?」

「う・・・(確かにそうだけど) 。あたしが言いたいのはそういうことじゃなくて・・・」

「おまえみてーだな」

「え?」

「怒ったり泣いたり笑ったり・・・ 。降ったり晴れたりする天気といっしょじゃねぇか」

犬夜叉は空を指さして言った。

「・・・。それ、誉めてんの。けなしてんの?じゃああんたを天気に例えるなら雷そのものね。すぐ暴れるし怒鳴るし・・・」

「なんだとー!誉めてんのかけなしてんのかどっちなんでい!」

にらみ合う二人。

すぐムキになる犬夜叉の顔にかごめはクスッと思わず吹き出してしまった。

「何が可笑しい!!」

「ううん何でもない・・・。でも犬夜叉、あたし、嵐って嫌いじゃないよ。だって・・・。嵐の後ってね、すっごく綺麗な優しい空が見えるんだよ。時には虹も見られる・・・」


本当に不思議そうな瞳で、かごめが見上げる空。


何だか本当に虹が見えそうな気がする。


普段、何気ない空にこんなに色んな形の雲があるなんて知らなかった・・・。


屋根のてっぺん。

二人はもうしばらく同じを空を見つめていた・・・。


天窓から上の様子をうかがっていたタイル貼りの二人は・・・。

「上は上で盛り上がっているようですな。どうです珊瑚。風呂ができあがった暁には混浴など・・・。」

ポキポキと手を鳴らす珊瑚。

「あたし、最近運動不足なんだ・・・。ね、弥勒さま」

「・・・。はは・・・。さー。頑張ってリフォームするぞー!!」

弥勒、せっせとセメントを塗っていきます。

そして午後は、全員でさび付いていた外壁のトタンをペンキを塗った。

水色のペンキで。

「あははは。犬夜叉も弥勒さまも顔についてるよ」

「そういうお前らだって・・・」

「あはは。みんな同じ顔。なんか兄妹みたい」

みんなの頬、同じ位置についている。

みんな水色だらけになった。


そして、夕方には蔦が絡まって朽ち果てそうだった浴場が水色で天窓がついた浴場に変身した。

「わー。きれいーー」

「天窓、オシャレだねーー!!」

かごめと珊瑚のお気に入りの天窓。かごめのアイディアでステンドグラス風に色の付いたガラスを入れた。

ガラスは夕暮れに照れされて、浴室内がオレンジ色に染まっている。

「壁はレトロにしてみました。30年代風に・・・」

他に新しくシャワーを取付け、鏡もつけた。

「ほほう・・・。なかなかよくお色直ししたのう」

楓も出来映えを見に来ていた。

「へっ。どっかのばばあは化粧しても意味はねーがな」

バキ!

楓、犬夜叉黙らす。

「ま、これで風呂の問題は解決じゃな」

「そうですな、これであの高い『ラビナス』に毎日通わなくてすみますなー」

「そうだよね。あそこ、高いんだもん。一回汗流すだけ600円も取られちゃうんだから、学生の私達はきつかったよね。かごめちゃん。早速入ってみようよ。」

「うん。そうだね。みんなペンキだらけだし。でもその前に・・・。みんな、ご苦労様でした!これにて『楓荘お風呂場リフォーム計画』これにて終了ーー!」

かごめ達は拍手して喜んだ。

そしてすぐに風呂を沸かし、かごめと珊瑚は一足先に入浴中。

「きゃははは・・・」

かごめ達の楽しそうな声が中から聞こえてくる。

「けっ。どうして女ってのはいちいち騒ぐんだ」

「いいじゃないですか。楽しいのですよ・・・。皆で力を合わせてリフォームしたことが・・・。なかなか体験できる事じゃありません。私も今日1日、仲間を何かをした今日という日は結構楽しかったですよ。犬夜叉お前はどうですか?」

「けっ・・・。俺はそういうなれ合いは好きじゃねぇ。必要だと思ったから手伝った気だ。もうこんなめんどくさいことは絶対しねぇからな!」

「はー。そいういいながら屋根の上でかごめ様といい雰囲気だったくせに・・・」

「なっ・・・。だ、誰がいい雰囲気・・・」

犬夜叉が照れている間に弥勒、何故か風呂場の玄関の引き戸に手がかかっている。

「なんだ、てめえ。この手は・・・」


「いや・・・。おなご衆の背中を流そうかと・・・。」

弥勒の言葉に、犬夜叉、ギロリとにらむ。

「とどのつまりは覗きだろうが!!」

「まさかそんな。私がそんな事する顔に見えるか」

「充分見えすぎる!」

「信用ないですなぁ・・・」

きゃああああーーー!!

その時、風呂場からなんとも言えぬ悲鳴が・・・!!

弥勒、突然キリリとし、

「はっ!!女性が私に助けを求めている!いかねば!」

スーパーマンの如くに風呂場へ直行した!

「どうしたました!!かごめ様ッ!珊瑚!!」

バッと浴室の引き戸をあけるとそこには・・・。


「おおーー♪弥勒殿、良いところにきてくれたのうー♪お湯が熱かったんじゃ」

弥勒の期待する光景とはほど遠い、楓の入浴シーンがそこに・・・。

「・・・」

弥勒、しばしコンクリートのように固まる。

(こ・・・この世で見ては行けない物、NO.1を私は見てしまった気が・・・)

「どうじゃ?よかったら一緒にはいらんか?」

「え、遠慮しておきます!!ではッ!!!」

弥勒はあわてて引き戸をしめるとそこにじろりとにらむかごめと珊瑚が・・・。

「なにしてんの?弥勒さま」

「な、何って悲鳴が聞こえたので・・・って。あの・・・。いつのまに着替えたんです?お二人さん・・・」

「問答無用ーーーーー!!!」

バッチーン!!!

風呂場からいい音が響く。

その一部始終をみたいた犬夜叉は・・・。

「死んでもなおんねーな・・・。アイツの悪い癖は・・・」

ふと暮れゆく空を見上げた犬夜叉。

薄暗さと夕暮れが混じった幻想的な色。すじ状の雲が微かに見えて・・・。

「・・・」

“空って不思議。見てて飽きないの・・・。見てると自分は何でもできそうな気がする・・・”


少しだけ、かごめの言葉が分かった気がする。

釘を打ちこむ音は気持ちいい。

それから、木の匂いも・・・。


犬夜叉の心が少し動いた。

明日、高木に返事をしようと思う。

『よろしく頼む』と・・・。


そう思いながら空をみあげる。


初夏の風を感じた夜だった。

back next
犬かごの間TOP

「一刻館にお風呂ってあったけ?」とふっと思ってしまって、この話を書いてみたんですが・・・。自分の昔の風呂場を思い出しながら書いたんですが、風呂場の雰囲気がいまいち上手くかけなかったです・・・(汗)
 犬がみんなで一緒に何か一つの事を実行して何かを感じる様子が少しでも伝われば幸いです・・・(滝汗)