第15話・ウルフ・ガイ
〜勝利のキスは誰の手に〜
A

ヒュー・・・。

グランドの芝生が激しくなびく・・・。

天気は快晴。

まさに男と男の勝負するにはふさわしい日かもしれない・・・。

鋼牙はユニフォーム姿で目を閉じて一人精神統一していた・・・。

「・・・。来たな。犬っころ」

鋼牙が目を開けると、犬夜叉とかごめ、そして何故か弥勒と珊瑚まで着いてきていた・・・。

「なんでい。犬っころ、怖じ気づいてゾロゾロと付き添い付きかい」

「勝手についてきやがったんだよ!!」

この勝負の事を珊瑚から聞いた弥勒。

“それはなんて面白そうなイベントでしょう”

と言って堪っていた仕事もそっちのけで付いてきた。

「ふん。まぁいいだろう。犬っころが負ける様を他の人間にもじっくり拝ませてやる」


「けっ!!それはこっちの台詞だ!!てめぇが負けてオレに謝る様をかごめに拝ませる!!」


今にも殴り合いが始まりそうな一発触発な雰囲気。

「んじゃ早速おっぱじめようじゃねぇか!」

「望むところでいッ!!」

犬夜叉はGジャンを脱ぎ、かごめに放った。

「もう・・・!!何よ!!犬夜叉も鋼牙君もあたしの事忘れてない!?」

「完全に二人ともムキになってるねぇ・・・」

「二人とも単純そうですからなぁ・・・。とにかくムカツク相手を負かす事しか頭にないのでしょう。それにしても賭けの対象がかごめ様の口づけとは・・・。私も参加しよっかな〜♪」

ギロッ!!

珊瑚の冷たい視線が弥勒を刺した。

「・・・。私は文化系の人間でしてやめておきまーす・・・っと」

そんな弥勒と珊瑚を鋼牙が手招きしてトラックの方に呼んでいる。

「おい。犬夜叉の付き添いA・Bちょっと来い」

(だ、だれが付き添いA・Bだ!)

珊瑚はムッとした。

「お前らはゴールでオレと犬っころのタイム計りな」

鋼牙は弥勒と珊瑚にタイムウォッチを渡す。

「まぁオレが負けるわけはねぇだろうが、この際だ。オレとこの犬っころがどっちが速いかはっきりさせてやるぜ。ふ。」


余裕の鋼牙に対し、犬夜叉は・・・。

「へッ!!てめーこそスタート早々転ぶんじゃねぇぞ!!」

余裕・・・というか意地はってます。

そして鋼牙と犬夜叉がコースに立つ・・・。犬夜叉が1コース。

鋼牙が2コース。

直線で100メートル。

一直線にゴールを目指す。

更にゴールの向こうにはかごめのキスが・・・。

そしてスタートの合図はかごめがすることに。

「かごめ・・・。とっとと勝負つけっからゴールで待ってな・・・。お前の唇まで一気に突き抜けてやる・・・」

と、かごめにウィンクを送る鋼牙・・・。

「く・・・っ。きざったらしい台詞をぬけぬけと・・・」

ピリピリする犬夜叉・・・。


そして二人は位置につく・・・。


「ね・・・ねぇ二人とも・・・。本当に勝負なんてするの・・・?やめようよ・・・」

「けっ。今更やめられっか!安心しなかごめ!お前にや狼ヤローにゃ妙な事させやしねぇッ!!」


「犬夜叉・・・」

犬夜叉の言葉がやっぱりかごめは嬉しい。

「へん。今の内にせーぜーつよがっときな。犬っころ。オレとかごめの熱いラブシーンおがませてやらぁ!」

鋼牙の言葉に犬夜叉のピリピリ度は極限値。

「ふっふ・・・ふふざけんじゃねぇッ!!かごめ!さっさとスタートさせやがれ!!」

「う・・・うん・・・」

かごめは右手を差し出し・・・。


「じゃあ、用意はいいわね?二人とも・・・」

頷く二人。

「じゃあ位置について・・」

両手をつき、ゴールを集中する二人。

「用意・・・。スタートッ!!!」


かごめの合図と共に二人はほぼ同時にスタートを切った!!


両者、手を思い切り振ってがむしゃらに走る!!


走る!!


しかしやはり、鋼牙が頭一つ飛び出てきた!

犬夜叉がんばってーーー!!」


(かごめ・・・!!)


かごめの一声に犬夜叉、体に力がみなぎって鋼牙追いつく!

(!こいつ!!案外速い・・・ッ)

「うおおおッ!!」


鋼牙も本気を出し、犬夜叉に並ぶ!!


(畜生!負けてたまるか!!犬っころなんかに!!)


二人の長髪がまるで川の様に軽やかになびく・・・!

そして・・・!!

これまた二人は同時にゴールイン!!

そして珊瑚と弥勒はカチッとタイムウォッチのボタンを押した!

「ハァハァハァ・・・。犬っころ・・・多少はやるじゃねぇか・・・」

「けっ・・・。ハアハア・・・。本気なんざ出してねぇ・・・」


息もきれぎれに憎まれ口・・・。

「おい・・・。で、タイムはどうなんだ・・・!」

ストップウォッチを見てみる珊瑚と弥勒・・・。

「・・・。すんでの秒差で・・・。鋼牙の勝ち・・・」

「!!」

犬夜叉、珊瑚と弥勒のストップウォッチを見比べるが確かに数字は鋼牙の勝ちを示している・・・。

「・・・おい。弥勒、珊瑚!!おめーたち、ちゃんと計ったのか!?押し間違えたんじゃねぇのか!!」

犬夜叉は何度もストップウォッチを見る。

「往生際が悪いぜ、犬っころ!!勝負は勝負だ!!」

「ふざけんな!!かごめ、鋼牙の言うことなんかきくことねぇぞッ・・・!」


「でも約束は約束よね・・・」

かごめはは鋼牙の前にスッと立った・・・。

「な・・・!???かごめ!!??」

「鋼牙君・・・」

かごめは鋼牙をじっと見つめる・・・。

「かごめ・・・」


(ななああああッ・・・・。そ、そんな・・・かごめ・・・っ)

犬夜叉ショックショック!!

しかし我慢できずにかごめと鋼牙の間に割って入ろうとした犬夜叉を弥勒は両脇を抱えてきっちりガード。

「弥勒!?てめぇッ!!」

まぁ犬夜叉。約束は約束だ」

犬夜叉は足をばたつかせて暴れる。

「離せ!!弥勒!!離しやがれッーーー・・・ッ!!!」

「じゃ・・・。鋼牙君目を閉じて」

鋼牙は言われたとおりに目を閉じる・・・。

(かごめの方からなんて・・・。案外大胆だな・・・)


ふわッ・・・。

「!?」


目を開けるとなんとかごめがキスしたのは鋼牙の右手の甲だった・・・。

「キスは口だけにするものじゃないでしょ?」

「だ・・・だけどな。かごめ。フツーは・・・」

「これがあたしの“フツー”なの。ごめんあそばせ。鋼牙君」

かごめはにこっと笑った。

「フ・・・。フハハハハハ!!かごめこの俺を言いくるめようってか!いい根性してるな。 惚れ直したぜ!わかった。じゃあ“本番”はあとのお楽しみにとっておこーぜ。おう犬っころ。今日のところはかごめに免じて痛み分けってことにしてやる」

「う、うるせえッ・・・!!」

グランドに犬夜叉の悔しそうな声が響いた・・・。


こうして・・・。


かごめのキスを懸けた対決は『引き分け』ということになったのだが・・・。


グランドからの帰り道。

駅にむかってレンガの歩道を歩く犬夜叉達。

鋼牙も途中まで一緒に帰ることになったのだが・・・。

やっぱり犬夜叉はまだ怒っています。

「犬夜叉・・・。仕方ないでしょ。鋼牙君も帰る方角同じなんだから」

「んなことじゃねぇよッ・・・。かぐめの奴・・・鋼牙なんかに・・・」

「手の甲とは言え、キスはキスですからなぁ」

後ろにいた弥勒がぬっと顔を出し犬夜叉の耳元でつぶやく。

「なによ・・・。あんたそんな事で怒ってるの?」

「んなっ・・・!そんなこととはなんだ!!怒ってなんかねーッ」

目一杯怒っている犬夜叉。拗ねてGパンに手を突っ込む。

「へん。短気やヤローだな。かごめ、こんな奴と一緒にいて疲れねぇのか」

「なんだと。やんのかコラ」


路上で長身で長髪の体格のいい男二人が睨み合い。

通り過ぎる人々はその迫力にふたりを思いっきり避けて通っていく・・・。

「二人ともこんな所でケンカなんかしないでってば・・・」

赤信号で立ち止まっても二人のいがみ合いは続き、かごめはなんとか二人をなだめようとするが・・・。

「うるせえッ女はひっこんでろ!!」

この言葉にかごめ、カチンと切れた。

「あっそう!!じゃあ勝手にすれば!もう知らないッ!!」


犬夜叉の言葉にカチンときたかごめは、横断歩道を渡り始めた。

しかし信号はまだ赤!!


「かごめ、アブネェエエッ!!!」

「え?」

犬夜叉の声にかごめが横をふりむくと向こうから大きなダンプがかごめに向かって突っ込んでくるッ!!


「キャアアアッ!!!」


キキキキキ・・・ッ!!!


ダンプが目一杯にブレーキをかけるがとまらない!!


「かごめーーーーーッ!!!」


犬夜叉と鋼牙は同時に飛び出すが犬夜叉の方が体一つ速い!


犬夜叉はかごめをガバッと抱きしめると二人はそのまま道路のガードレールの脇まで転がっていった!!


キュルルル・・・!

ダンプは間一髪で、横断歩道の白線を5メートル先でようやく止まった・・・。


タイヤから煙がでている・・・。

「かごめちゃん!!犬夜叉!!大丈夫!?」

珊瑚と弥勒が駆け寄る。

かごめを全身でかばうように倒れる犬夜叉。かごめはゆっくり起きあがる・・・。

「あたし・・・。あ、犬夜叉・・・」犬夜叉も静かに体を起こす。

「か・・・。かごめ・・・。ケガはねぇか?」

「う、うん・・・あたしはどこも・・・。犬夜叉の方こそ大丈夫・・・?」

「へん・・・。俺の体は頑丈なんだよ。痛・・・」

頬がすれて血がでていた・・・。

「ホントにホントに大丈夫・・・?でも血が出てる・・・。ごめんね。犬夜叉。あたしのせいで・・・」

かごめはハンカチでそっと血を拭う・・・。

「お前こそ、どっか痛いところあったら言えよ。病院いかなきゃなんねぇから・・・」

「うん・・・ありがと・・・。ありがとう・・・。犬夜叉・・・」

自分が赤信号に飛び出したせいで犬夜叉が・・・。かごめの瞳はうっすら濡れていた。


「けっ・・・。いちいち泣くんじゃねーよ・・・」


「だって・・・」


自分のために泣いてくれるかごめ。


犬夜叉は照れながらも自分のTシャツをしっかりと握るかごめ後ろ髪を少し不器用にになでた。


「やれやれ・・・。我々の事など目に入ってないようですな」

「でも、流石犬夜叉だね。誰より速くかごめちゃんを助けて・・・」

全力で鋼牙は、飛び出した。

だが、遙かに犬夜叉の方が速く迫り来るダンプへ飛び込んだ・・・。

「・・・」


鋼牙はかごめ達に背を向けて腕を組む。

(へっ・・・。今だけは見逃してやる。だけど・・・。俺はかごめをあきらめねぇぞ。犬っころ・・・)

鋼牙の後ろで犬夜叉とかごめは・・・。

「犬夜叉。今日は引き分けだったんだよね・・・」

「だから何だよ」

「だったら犬夜叉にもあげなきゃいけないね。その・・・あたしの・・・」

かごめはちょっともじもじしながら・・・。


「!!」

犬夜叉の頬に優しく口づけ・・・。

「助けてくれて本当にありがとうね・・・」

「べ・・・べつに・・・」


犬夜叉は必死に照れくさいのを隠そうとするがかなり嬉しそう・・・。


「どーだ!!鋼牙!うらやましーか!!」


「へん!ほっぺにチュ!だ!そんなもんキスにはいるか!!」

「てめぇなんか手の甲じゃねぇかッ!俺の勝ちだ!」

「なんだとーーー!!」

またもやいがみ合い勃発・・・。

かごめ達はもう諦めた顔で見ている・・・。

「もう!どうしてすぐケンカになっちゃうの?犬夜叉達は・・・」

「類はともを呼ぶといいますからね。ケンカすることで仲良くなってるのですよ」

「だとしたらなんてはた迷惑なケンカだろうね・・・」


かごめ達は諦めた様に同時にふうとため息・・・。


犬夜叉と鋼牙・・・。

こうしてかごめを巡る熱き(?)闘いが始まったのだった・・・。>

ちなみに。


鋼牙と別れ、アパートに戻った犬夜叉とかごめ。

「今日は色々あったけど、楽しかったね」

「お、おう・・・。んじゃおやすみ」


犬夜叉が部屋に入ろうとしたとき。かごめが呼び止める。

「何だよ」


背伸びして犬夜叉の耳元で何かをつぶやくかごめ。

耳元にかごめの息がかかり、犬夜叉なんだか身悶え

「今度は・・・誰もいないところでちゃんとキスしようねv」


かごめは更に背伸びして。


チュッ

「んなッ・・・!!!」。


可愛い音がかすかに廊下に響く。


犬夜叉の左耳の裏辺りにおまけのキス★


犬夜叉の左耳は一気に赤く染まった。

「じゃおやすみ♪」

パタン・・・ッ。

上機嫌でかごめは部屋に入っていった。そして犬夜叉は・・・。


(何で今じゃないんだ!)


と、悔しがり、昼間のかごめのキスの感触を一人頬を赤らめて思い出していたのだった・・・。


ぬおお!!ってことで(何)なんだか思いっきりバカップル書いちゃいました(爆)何だか今までの話の流れからしてキャラのイメージ違ってきそうだと思ったんですが、やっぱり頬チューだけじゃおさまらず耳チューも!!だ、だって耳チューの方が犬、感じるかと・・・(撲殺)でもいずれは本番チューおば・・・。