第15話ボディーガード
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『絶対にあなたをあきらめない』

という文かいた差出人不明の手紙が弥勒のポストに入っていた。

弥がで困惑した顔をして読んでいた。

「あ、おはよう!」

早朝、ジョギングをしていた珊瑚。まだスポーツウェアのままでタオルで汗をふいている。

「あれ?どうしたの?なんだか深刻な顔しちゃって」

「おはよう珊瑚・・・。いえ。珊瑚には関係のないことですから」

冷たくあしらう弥勒に珊瑚はカチンときた。

「何よ。心配してるのに・・・。って!!!!」

弥勒の手が珊瑚のおしりを朝っぱらから悪さを働きました。

「いや〜。こちらにも朝のご挨拶をと思いまして・・・」

「・・・。そう。じゃあこっちもお返しの挨拶をねッ!!」


バッチーン!!

「ふんっ!」

楓荘に、なんともいい響きのビンタの音がこだました。

「・・・いつもよりなんだか力がはいっていたような・・・。それにしても・・・」

弥勒は手紙をじっと見つめる。

心当たりはあるのだが、珊瑚には何もいえない。巻き込んだらと思うと・・・。

その一部始終を物陰から、女子高生風の茶髪の少女がじっと見ていた・・・。



夕方。大学帰りの珊瑚が駅前のレンタルビデオ屋から出てきた。

「さーて。帰ってかごめちゃんと帰ってビデオ鑑賞会しよ〜と」

背後から、少女が近づく。

「海野珊瑚さん?」

珊瑚が振り向くと、茶髪で制服姿の少女が立っていた。

「そうですけど・・・。あなた、誰?」

「あたしは西岡陽子っていいます。ちょっと貴方にお話があるの」

「話?」

「仏野弥勒の事で・・・」

少女は怪しく笑う・・・。

少し不気味に感じる珊瑚。

珊瑚はすぐ目の前の喫茶店に連れて行かれた。

「あの・・・。それで弥勒様のことであたしに話って何なの?」

「・・・」

少女は鞄から携帯を取りだし、珊瑚にあるアドレスをみせた。

そこには弥勒の携帯の番号が・・・。

「これが何だって言うの?」

「その番号ね。弥勒が自分から私に教えてくれたのよ。つまり・・・。弥勒とあたしはそういう仲ってこと」

一見、可愛い雰囲気の少女だが、制服のポケットからたばこを取り出し、慣れた手つきで火をつけ煙をふかせた。

正義感の強い珊瑚。町でこういう少年少女をみるとつい、一言言いたくなる性分だ。

「ちょ・・・ちょっとなにすんのよ!」

珊瑚は少女の口からたばこを取り上げ、灰皿にこすりつけ火を消す。

「人と会話をするときぐらい、たばこはやめなさい。そのくらいの礼儀ぐらい親から習ってないの?」

「・・・。ふん!!」

少女はふてくされる。

「・・・。さすが弥勒が好きだって言ってた女だけあるわね。まあいいわ。単刀直入に用件言うわ。あのアパートから出ていって」

「!!」

少女は更にブランドものと思われるバックのなかから、茶封筒をポンっとおいた。

「100万あるわ。手切れ金+引っ越し費用にあてて。返さなくていいから。だから、さっさとあのアパートから出ていって。弥勒の前から消えて欲しいの」

「・・・」

少女のあまりに一方的な要求に珊瑚は驚く。

「何よ。どうしたの?いい話じゃないの。あんなボロアパート引っ越せるのよ。早く受け取りなさいよ」

「・・・」

少女はプカプカとたばこを吹かす。

珊瑚は茶封筒を手に取る。

「へん。あんたも所詮、金になびく女なのね。たいした女じゃ・・・」

少女はビクッとする。ギロッと自分を見つめる珊瑚の視線に・・・。

「教えてやるわ・・・。あたしがこの世で一番嫌いのが1つは人に迷惑かけて平然としてる奴。2つ目は嘘をつくやつ。三番目が・・・金で何でもすまそうとする奴よ!!」」

珊瑚は乱暴に茶封筒を少女につっかえした。

珊瑚は乱暴に茶封筒を少女につっかえした。

その拍子で数枚、お札が床に散らばって落ちた。

「な、何よ。あんた、お金いらないわけ!?ただでやるっていってんのよ!!」

バン!!

珊瑚はテーブルを思い切りたたく。

「未成年からお金もらう程、困ってもないし、落ちぶれてもないわ。こんな大 金・・・。親のお金かなんかでしょ?大事な親からもらったお金をくだらないことに使ってないで、もっと利口に誰かのためにつかうことね。あ、コーヒー代はあたしが払うから。じゃあさようなら」

そういうと、珊瑚はレジで少女の分も精算し、すたすたと喫茶店を後にした・・・。

「・・・。何よ。あの女・・・。偉そうに・・・偉そうに!!!!」

少女はグシャリとたばこの箱を握りつぶす。

「絶対に弥勒は渡さないわ・・・。誰にも!!誰にも!!許さないから・・・。あの女・・・」

少女は激しくそうつぶやいた・・・。



そしてその夜。この一件を弥勒の部屋で話す珊瑚。

「陽子ちゃんがお前のところに・・・!?」

「うん・・・」

弥勒は珊瑚にこぶ茶をいれる。

「ねぇ弥勒さま。その陽子って子、何者なの?」

「・・・」

弥勒は口をつむぐ。いざとなると、ダンマリな弥勒に珊瑚はちょっとイラだった。

「もう!!弥勒さま、もういい加減話してよ!!あたしには聞く権利、あるでしょう!!」

「・・・。そうだな・・・。お前にいらん心配をかけてはと思っていたが、もうそうも言ってられない・・・実は・・・」


一ヶ月ほど前の夜。帰宅途中、見上げると歩道橋から真下の道路をぼんやり眺めている少女を見つけた。

弥勒はなんとなく気になり、しばらく様子をみていると、突然・・・!


足をかけ、少女は身を乗り出そうとしていた!

『危ない!!やめるんだ!!』

すんでのところで助けた弥勒。

『何が合ったか知らないが、死ぬなんてもったいない・・・。どうです?私の子をうんでくださいませんか?』

そんな言葉で少女を助けた弥勒。

某有名私立高校の生徒で、両親が離婚する事に傷つき、発作的に身を投げようとしたらしい。

きっかけに少女は弥勒に何かと相談ごとをうち明けるようになりそしてつきあってくれと言うようになってきたのだった・・・。

「・・・。その子の命を助けたまでは格好いいとして。その後の台詞がねぇ・・・」

珊瑚は冷めた視線を弥勒に送る。

「こほん。まぁそんな訳で、陽子という子は・・・。傷ついているのです。両親の事で・・・。その矛先が私に向けることであの子はなんとか自分を保っている・・・」

「でもやってる事はわがままの子供じゃないの」

「すまない・・・。お前まで巻き込んで・・・」

本当にすまなそうに謝る弥勒に珊瑚は戸惑う。

「や、やだな。あたしの事は気にしなくていいけど弥勒さまが・・・」

きゃあああああ!!

二階からかごめの叫び声が突然してきた。

弥勒と珊瑚は急いで二階に上がっていくと・・・。


「な・・・なによ。これは・・・!」


『絶対に弥勒は渡さない』

珊瑚の部屋のドアに黄色のペンキでそう殴り書きしてあった・・・。

「・・・。珊瑚ちゃん、これって一体・・・」

「・・・ 」

弥勒と珊瑚はこれが誰のしわざかすぐにわかった・・・。

珊瑚の脳裏に少女の不適な笑みが浮かぶ・・・。

言いようのない不安感が珊瑚を襲った。

「・・・。珊瑚。私、明日からお前のボティガードします」

「え!??何急に・・・」

「陽子ちゃんには私から話をつけておきますが、念のため、2,3日お前と共に行動します」

「え!?ええッ」

「ケビン・コスナーが私で、お前はホイットニー・ヒューストン」

弥勒はそういうと、バケツに水を組み、スポンジを持ってきて、ゴシゴシとドアを拭く。

「ほら、何をしているんだ。珊瑚。手伝ってくれ」

「・・・。なっ何よ。何がケビンコスナーよっ。柄じゃないじゃないッ」

珊瑚もしゃがみ、たわしでペンキをこする。

「守りますからね。珊瑚。お前を絶対に・・・」

「・・・」


真剣な弥勒の声に珊瑚はドキッとした・・・。


二人、ゴシゴシとペンキを消す。


何がなんだか訳が分からないかごめだが・・・。


(なんかいい雰囲気だな・・・。お邪魔しちゃ悪いわね)

自分の部屋に静かに入っていった。


ちなみに今回台詞がなかったこの男は・・・。


「グー・・・」


カップラーメンの殻に囲まれ、爆睡中だった・・・。

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