第17話ミッドナイトなかごめちゃん★ A 従業員室。 6畳ほどの畳の部屋。部屋にはガス台と、子供の遊び道具等やぬいぐるみが散乱している。 「そうなの。なんだかごめちゃんの彼氏だったのねぇ〜。残念だわ〜」 「なっ。だ、誰が彼氏でいッ・・・。それに妙な目つきでオレを見るんじゃねぇッ!」 犬夜叉、腕を組んであぐらをかく。 かごめは布団で眠る少年に毛布をかける。 少年は『猫夜叉』という漫画のキャラクターの人形をぎゅっとにぎりしめて。 「ふふ・・・。まあくん、このぬいぐるみ、すきなのよね。なんかあんたと似てるね。うふふ」 「んなっ・・・。そ、それよかなんでかごめ、こんなとこでガキの面倒なんかみてやがるんだ。」 かごめに話によると少年は蛇骨ママの妹の子で、妹が入院中なのでしばらく預かっているという。しかし、蛇骨ママには夜、店がある。特に週末の夜は面倒が見られないので、かごめにみてもらっていた・・・とのことだった。 「かごめちゃんは、桜木町の託児所ではアイドル的存在でねぇ。時々ボランティアしにきてたのよ。でもその託児所もなくなって・・・」 犬夜叉、事情を知り、安心した。 「蛇骨ママとはずっと知り合いでね。犬夜叉。あんたこそなんでここに来たの?どうしてわかったの?」 「弥勒に聞いたんでい」 「で、わざわざ見に来たって訳?」 「ばっ・・・。と、通りかかっただけだ!!」 「へ〜・・・」 かごめはちょっと意地悪くチラッと犬夜叉を見た。 「う・・・うるせえ!オレがどこ行こうがオレの勝手だろうが!!」
「・・・あら・・・?」 かごめはなにげなく少年のおでこに手をあてるとかなり熱い・・・。 「まあくん・・・熱があるわ!ママ、体温計ある!?」 かごめは、体温計をわきにさした。 「38度5分もあるわ・・・ 。すぐお医者様に診せないと・・・!」 かごめは少年を毛布でくるみ、だっこした。 「かごめちゃん、オレも行くわ!大事な甥っ子だもの!」 「ママにはお店があるじゃない。早く病院へ連れて行かなくちゃ!!」 「あ、おい、かごめッ!」
「犬夜叉ちゃん!!」 追いかける犬夜叉を蛇骨ママは呼び止め、財布を渡す。 「かごめちゃんたらお金も持たずに行っちゃって・・・。犬夜叉ちゃん、まさおの事、よろしくお願いします。オレも店、すぐ、片づけて行くから・・・」 犬夜叉は蛇革の財布を確かに受け取る。 「わかった!」 犬夜叉は自分でも驚くほど素直に返事をした。 人に何かを頼まれる・・・。 これほどうざったい事はないと思っていたのに、それが今は『なんとかしたい』という気持ちがあるのに気がつく犬夜叉・・・。 一番近くの病院を尋ねるかごめ。 しかし緊急外来はやっていないと断られてしまう。 その間にもかごめの腕の中の少年は苦しそうな息づかい・・・。 かごめは懸命に走って3件めの病院を尋ねた。小児科もやっているので、なんとか診てくれないかとかごめはドンドンと何度もガラスドアをたたいた。 「はい、どちら様です?」 玄関先のインターホンに看護婦らしい女がでる。 「夜分遅くすみません!!子供が・・・。熱を出しまして!」 「・・・。申し訳ありませんが、うちは時間外の診察は受け付けておりませんので」 なんとも冷たい言い方。 かごめも犬夜叉も一瞬ムッとした。 「そこをなんとか・・・。お願いします!!もう病院何件もまわって・・・。お願いします!!お願いします!!お願いします!!!」 かごめは何度も何度もインターホンに頭を下げる。 (かごめ・・・。ガキ一人のために・・・) 「だからうちは時間外の診察はしてないってい行っているでしょう!?悪いけど、他の病院あたってくださいません!?」
(か・・・かごめ・・・) ものすごい声ででインターホンに怒鳴るかごめ。 犬夜叉もその迫力に驚く。 「医者が苦しんでも患者目の前にして、診察しないってどーゆー了見よっ!!!どうしても診察しないってんなら、このドア壊してでも中に入るからね!!それでもいいのっ!????」 かごめは息を荒くしながらドカンと看護婦に言い放った。 「・・・わ・・・わかりましたよッ・・・。」 看護婦はドアを開け、かごめ達はすぐ診察室に通された。 レントゲンをとり、少年は診察台にねかせられて診察。 ガウン姿の初老の医者がカルテを書いている。 「ふむ・・・。肺炎はおこしてないようだし・・・。多分風邪からくる熱でしょう。抗生物質をだしておきます。もし熱が下がらなかったら、解熱剤食後に飲ませ下さい」 「はい・・・。ありがとうございました・・・」 かごめはホッとして少年のおでこを撫でた・・・。 心なしか、診察台に寝かされた少年の息づかいも少し落ち着いてきた様だ・・・。 「それにしてもずいぶん若いお父さんお母さんですねぇ」 「へッ!?」 医者は二人をじろじろ見る。 かごめと犬夜叉。互いに顔を見合う。 「い、いやあの・・・あたし達はそんなんんじゃ・・・」 「子供の体は繊細です。ちゃんと見てあげてくださいね。ね。お父さん」 「えッ 。え、あの・・・その・・・」 犬夜叉、なんだかもじもじ、ポリポリ頭かく・・・ 「いや初ですなぁ。こんな可愛い奥さんと子供に恵まれてワシが変わって欲しいものですぞ。ワッハッハ」 豪快に笑う医者に犬夜叉もかごめも好感をもつ。 しかし看護婦はかごめに冷たい視線を送る。 「でもねぇ。こんな子供みたいな若い夫婦に子供なんて育てられるんでしょうかねぇ。子供の行く末がすごく心配ですわ。こんな若い母親なんて・・・。今日だって遊びほうけて子供をほったらかしにしてたんじゃなのかしらねぇえ・・・そういう事件もあるし・・・」 「うっせーんだよ!!ばばあ!!」 とうとうキレました。犬夜叉。 かごめは犬夜叉のTシャツを引っ張って止めようとするがとまらない。 「さっきから何なんだ!!かごめがどんなに必死でガキだっこしてここまで走ってきたとおもってんだよッ!!インターホンの前で何度も何度頭下げて頼んだと思ってんだよ!!若かろうがとしくってようが母親は母親じゃねぇかッ!!見てくれや年で判断してんじゃねーよッ!!帰るぞかごめッ!!」 「あ、ちょ、ちょっと犬夜叉ッ!!」
診察室のドアが壊れるかと思うくらいに思い切り乱暴に閉めていった犬夜叉。 犬夜叉のぶちギレ具合に医者も看護婦も圧倒・・・。 薬をもらい、かごめと犬夜叉は早々に病院をあとにした・・・。 少年を無事蛇骨ママのマンションまで元へ届けた犬夜叉とかごめ。 店の玄関で薬を蛇骨ママに手渡すかごめ。 「。朝と晩飲ませてあげて下さいって・・・」 「ありがとうかごめちゃん、犬夜叉ちゃん。本当に助かったわ・・・。本当だったらオレが医者に連れて行かなきゃならないのに・・・」 蛇骨ママはハンドバックから茶封筒を取り出した。 「かごめちゃんこれ」 封筒の中には数万はいっている。 「蛇骨ママ、これ・・・」 「かごめちゃんはまさおの面倒見るのにお金なんていらないっていってたけど、やっぱりそれじゃあアタシの気持ちがすまないの。今日のことだってあるし・・・」 しかしかごめはお金を突っ返す。 「ママ。お金よりもっと貴重なものあたしもらったから・・・」 「え?」 「まあくんの元気な笑顔。お金なんかかなわないものでしょ?ね?ママ!」
「じゃあ、蛇骨ママ、おやすみなさい!」 少年を抱いた蛇骨ママ。犬夜叉とかごめを玄関先で見送り・・・。最後に一言。
犬夜叉に投げキッスを何度も送ったのだった・・・。
※ 帰り道・・・。もう既に時間は午後2時をまわっていた。 桜木町も通りは少なく、大分静けさを増している。 明るい電灯がかごめと犬夜叉を照らす。 「んふふふ・・・」 かごめはなぜかにこにこ笑う。 「な、何だよ。人の顔見て・・・」 「さっき、嬉しかった・・・。看護婦さんに言ってくれた言葉・・・」
心にじんときた・・・。 「けっ・・・。あのばばあにむかついただけでい・・・」
「それにしてもお前ってよ・・・。ホントにあっちこっちでガキの世話してんだな。タフっていうか、なんていうか・・・」 「・・・。楽しいんだもの。子供達と遊んだり、喧嘩したり・・・。」 「オレはガキなんてめんどくせーだけだけどな。うるせーだけだ」 犬夜叉は空き缶を軽く蹴った。 「確かに子供達は可愛いってだけじゃないよ。泣いたり笑ったり怒ったり・・・。毎日戦争みたいなものだもの。私だって何度かんだり蹴られたりしてる。でもね。それがすごく私、ワクワクしちゃって楽しいの!ほら、この前ねここ、まあ君にガブってやられちゃった。『名誉の負傷』なんちゃって」
歯形がくっきりついていた。 「もう。すごいのなんのってやっぱり男の子よね。小さくても力もちなの。」 街頭の下で楽しそうに、本当に楽しそうに、子供達との話をするかごめ・・・。 犬夜叉にはそんなかごめがとてもまぶしく見えて・・・。
「ね。コーヒーでいいよね!」 「あ、ああ・・・」 ガタンッ。 取り口からホットコーヒー缶を取り出すかごめ。 「はいっ。これは今日のお礼よ!」 犬夜叉に投げ渡す。 「・・・けっ・・・」
ホッとさせる・・・。 自動販売機の前に二人座り、カチッと、同時に缶を開け、一口含む。
犬夜叉、かなりふきだす。 「な、なんでもいいだろッ。た、たまたま入ったらおめーがいただけだ!」 「ふーん・・・」 かごめ、犬夜叉をじろじろ見る。 「な、なんだよ」 「ううん、なんでもない。でも、今日はホントありがとう。すごく心強かった・・・」 「お前ホントに子供すきなんだな・・・」 ”日暮は辛い過去、あるのに・・・”
「なぁ・・・。かごめお前・・・」
「!!」
「・・・。なんだよ。眠ってやがる・・・」
犬夜叉はかごめに何か尋ねようと思ったが、それは胸の奥に閉まった。
かごめの優しい寝顔を・・・。
|