第2話 カップラーメンと肉じゃが

かごめの隣の部屋の住人・犬夜叉。引っ越してきてから2週間経った。

楓の知り合いだということで、このアパートの新たな住人になったわけだが、その素性はかなりベールに包まれている。

当の本人もかごめ達となかなかうち解けようとしなく、かごめが 声をかけても

「けっ」 と言って、何とも無愛想に無視されてしまう。

なので、余計に弥勒などはさりげなく犬夜叉の様子をかごめに聞きにくる。

今朝も、大学へ行くかごめをアパートの前で引き止めていた。

「かごめさま、犬夜叉と昨日、何か話ましたか?」

「いいえ・・・」

「そうですか・・・。まぁ、あまり詮索するのもなんですが、妙に親近感が湧くのですよ。ほらこのアパートで男は私一人でしたので・・・」

「あたしは弥勒さまに親近感湧かないけど」

白い武道着を背中に担ぎ、黒のバイクのスーツを着た珊瑚が部屋から出てきた。

珊瑚は大学へ自慢の愛車・

「雲母」で通っているのだ。

「おお、珊瑚。おはよう。今日もなんともいいおしりで・・・」

珊瑚はギロリとにらむ。

「はは・・・。冗談冗談。しかし、犬夜叉の奴、一体仕事は何してるんでしょうね。」

「弥勒さまの方が怪しいよ。なんかね、工事現場で働いてるみたい。作業着干してたもの」

だからか、夜かなり遅く、犬夜叉の部屋電気がつく。

何の音もしない。きっと疲れてすぐ眠っているんだ・・・とかごめは思った。

「あ、かごめちゃん、犬夜叉だ・・・」

珊瑚に続いて、TシャツにGパン姿の犬夜叉がムスッとした顔で階段を降りてきた。

なんとも不機嫌そうな顔だ。かごめ達の前を通り過ぎて行く。

弥勒と珊瑚は声を掛けようかどうしようか迷っていると

「おっはよう〜!夜叉丸君!」

元気よくいい響きかごめの挨拶。

犬夜叉、本名を大声で呼ばれ、さすがにかごめの方に振り向いた。

「なっ・・・。て、てめぇ・・・。なんで俺の本名を・・・」

「楓おばあちゃんに聞いたの」

「楓ばばあの奴・・・。いいか!二度とその名前を呼ぶんじゃねえぞ!」

「だって!あんたあたしが声かけても無視しちゃうからでしょ?ちゃんと挨拶しなさいよ!そっちこそ、人の事、てめえだなんて呼ばないでよ!かごめって名前があるんだから!」

「う、うるせえ!言っただろ、俺はなれ合いはしねぇって!それと二度と俺の事あれこれ詮索するんじゃねぇ!わかったか!ふん!」

犬夜叉はそうかごめ達に言い放つと、すたすたとアパートを後にした・・・。

その犬夜叉の後ろ姿を、少しあきれ顔で楓が見つめていた。

「すまんな・・・。皆の衆・・・」

「楓おばあちゃんが謝ることないです。あたしが犬夜叉の本名を言っちゃったから・・・」

「いや、そうではないんじゃが・・・。子供の頃に色々あってな・・・。ちょっとばかり他人を信用できなくなってしまっているんじゃ・・・」

「確かにあの性格から察して、明るい少年時代だったとは想像しにくいですな・・・」

腕組みしてうんうんと頷く弥勒。 “お前もだろ”と皆、突っ込みたくなる。

「まあ、なんじゃ、気長に見てやってくれ。根は悪い奴じゃないから・・・」

「ああ、おまかせください。楓さま。というわけで、今月の家賃、もう少しお待ちを・・・」

手を揉みながら、弥勒、楓に交渉するが・・・。

「却下。2ヶ月分+利息分つけておくからそのつもりでな」

「そ、そんな・・・。家賃に利息なんて、ご無体な・・・(ぐすん)」

「ほれ、皆、そろそろ時間じゃ」

時計の針は既に8時をまわっており・・・。

「いっけない!朝練あったんだ・・・!じゃあ、かごめちゃん先行くね!」

珊瑚はあわててバイクにまたがり、ヘルメットをかぶった。

「ああ、珊瑚、私も乗っけてくだされ!」

ちゃっかり弥勒。珊瑚の後部席に便乗する。

「ちょっと!降りてよ!」

「いいではないですか。私も早朝会議がありまして。珊瑚、時間がありませんよ!」

これみよがしに腕時計を見せる弥勒。

「もーーー!今日だけだからね!」

「はいはい」

といいながらも、どさくさにまぎれてにこにこしながら珊瑚の腰に手を回す弥勒。

「じゃ、かごめ様、楓さま、いってきます」

軽快にエンジンを鳴らし、珊瑚のバイクは猛スピードで走っていった。

「弥勒様って本当に調子がいいんだから・・・。さて、じゃあわたしも・・・」

「かごめ」

楓はなぜかかごめを呼び止めた。

「世話になったな」

「え?」

「行き倒れになっていた犬夜叉を助けてくれたんじゃてな・・・」

「どうして、そのことを・・・」

かごめは犬夜叉が話たのかと思った。

「あいつに代わって礼を言わせてくれ。ありがとう」

楓は深々とかごめに頭を下げる。

かごめは驚いて、恐縮してしまった。

「や、やめてよ。おばあちゃん、頭を上げて」

「す、すまん・・・。でも、本当に感謝しとるんじゃ・・・。かごめに助けられてなかったらあいつは・・・」

楓はひどく哀しい顔をした。

「おばあちゃん・・・?」

「いや・・・。なんでもないんじゃ・・・。さ、かごめ。お前も急げ」

「え・・・。う、うん・・・。じゃ・・・。いってきます・・・」

かごめは楓の様子を気にしつつも、大学へと向かう・・・。

そのかごめの後ろ姿に楓はつぶやいた・・・。


犬夜叉を・・・頼む・・・。

と・・・。