第2話カップラーメンと肉じゃがA かごめの部屋からいい匂いがする。
グツグツグツ・・・。鍋の中でジャガイモと牛肉が程良く煮えていた。
「うん♪よく染みてるな。我ながらなかなか上手くできた★」
小皿でつゆを味見しながらつぶやくかごめ。本人が自負するとおり、弁当屋でバイトしているせいもあるのか、かごめの料理の腕はなかなかものらしい。しかしちょっと調子に乗ると・・・。
「・・・。作りすぎちゃった」
鍋にてんこもりのジャガイモ。一人では到底食べきれない。
そんなときは・・・。
コンコン。
かごめは鍋を持って弥勒部屋をノックした。
「はい★かごめ様、おまちしておりました♪」
なんと弥勒は準備のいいことに皿を箸を用意して待っていた。
「・・・。弥勒様・・・。ずっとそこで待ってたんですか・・・」
「いやあ♪あんまり二階からいい匂いがしてくるので・・・★」
なんと素早い行動・・・。かごめは呆れて良いやら笑って良いやら・・・。
お調子者の弥勒だが、幼い頃に両親を亡くし、叔父に育てられたという。
楓からおおざっぱに聞いた話だが、その叔父に反発して、実家を出たが楓の話では、仕送りをしているらしい。 こそんなちゃかかり弥勒とはうらはらに弥勒が抱えている背景はかなりシビアだと思うかごめ。
「おお・・・。これぞ母の味ですな」
弥勒の持つ皿に肉じゃがを盛るかごめ。
「じゃあ、弥勒様、覚まして食べてくださいね」
「はい♪それでは」
かごめは楓にもおすそわけをし、そして珊瑚にも。
珊瑚の部屋を尋ねると、中からダンベルを持って出てきた。
どうやらトレーニング中だったらしい。
「珊瑚ちゃん。肉じゃが作りすぎちゃって・・・。よかったら少し食べて」
「わあ♪おいしそう!かごめちゃん、料理うまいもんねー♪喜んでいただきます!」
元気いっぱいの珊瑚。が、そんなだが幼い頃に両親が離婚し、今は弟と離れて暮らしている。弟思いの珊瑚。きっと寂しいに違いない。
それでもいつも強く元気珊瑚の姿を見るとこちらまで元気になるな・・・とかごめはいつも思っていた。
皆、それぞれに何かを抱えてここにいる。
そして、新しい住人の犬夜叉も・・・。
犬夜叉の部屋の前に立つかごめ。
灯りがついている。帰ってきているらしい。
(・・・。食べてくれるかな・・・。でも「いらねぇ!」とかってつっかえすのがオチかも・・・)
「何であたしがあいつに気を使わなくちゃいけないのよ!そうよ!食べてもらうわ!うん!」
コンコン。
少し緊張気味にノックするかごめ。
「・・・」
誰も出てこない。もう一度ノックするかごめ。
また、返事がない。
(・・・。居留守つかってるな・・・よおし!)
「夜叉丸くーん!こんばんはー!!」
大声で犬夜叉の本名を呼ぶかごめ。
「てめえ!その名は呼ぶなっていっただろう!!」
犬夜叉が怒鳴って出てきた。
「なんだ。やっぱりいるんじゃない!どうして出てこないのよ」
「うるせえ!何だよ!俺になにか用かよ!」
「はい。これ」
かごめは犬夜叉に鍋をぐいっと見せた。
「ちょっと作りすぎたから・・・。もしよかったら食べない・・・?」
「・・・。いらねぇよ。そんなもん」
「そ、そんなもんとはなによ!」
「けっ。そんなもんはそんなもんだよ。何度いわせんだ!!俺は馴れ合いはしねえって!」
「そんな怒らなくていいでしょ・・・!同じアパートの住人じゃないの・・・。少し仲良くなろうよ!」
「うるせえッ!!」
ガシャーーーン!!!
「・・・」
犬夜叉は勢い余ってかごめの持つ鍋を払いのけてしまった・・・。
肉じゃがは思い切り飛び散った。
犬夜叉、さすがに動揺する。
「・・・」
深く俯いたかごめはしゃがみこみ、飛び散った肉じゃがをすでて拾う・・・。
「し、しつこいてめえ悪いんだからな。お。俺は・・・」
「・・・」
うつむき黙りこくってしまったかごめ。
「・・・。な、なんだよ・・・。お、おまえ・・・な、泣いてんのか・・・?」
恐る恐るかごめをのぞき込む犬夜叉。
「お、おい・・・」
ギロ。
犬夜叉を睨むかごめ。たじろぐ犬夜叉。
「どうしてくれるのよ!あたしの夕飯なくなっちゃったじゃない!!」
「な・・・。ど、どうしろってんだ!俺は料理なんてできねぇ!!」
「あんたの家で何か食べさせて!お邪魔するわよ!」
「あ、おい、コラ!!勝手にはいんな!」
バタン!!
頭に来たかごめは強引に犬夜叉の部屋に入る。そこは・・・。
殺風景な部屋。
そしていきなり冷蔵庫を開けるかごめ。
しかし中はミネラルウォーター以外なにもない。
「やだ!何にもないじゃないの!あんた何食べていきてんの!?」
「うるせえ!てめえに関係ないだろ!」
かごめはチラッとガス台の下をみるとそこにはカップラーメンの山が・・・。
「なるほど・・・。これを食べて生きている訳ね・・・」
「別にいいだろ!俺はラーメンが好物なんだ!って何勝手なことしてる!」
かごめはやかんを見つけた。
「だってお湯湧かさなくちゃラーメン食べれないでしょ。あたし、味噌ラーメン好きなんだ」
「けッ・・・!どけ!俺がやる・・・!お前はその辺にすわっとけ!」
「あ、う、うん・・・」
かごめはちょこんと居間の座布団に座った。
「・・・」
何もない殺風景な部屋。あるのは、パイプベットとガラスのテーブル。それに古い型のラジオが一つ。壁に何枚かのTシャツが掛かっているだけだった。
引っ越してきたばかりなのは分かるが、それにしては・・・。あまりにも生活感がない部屋だ・・・。かごめはしばらく、部屋を見回していた。
「あんまりジロジロ見るんじゃねぇ。人の部屋を・・・」
やかんとラーメンを持って座る犬夜叉。
二つ、カップラーメンに皿を乗せてふたをする。
そして2分経つのを待つ。二人。
「・・・」
「・・・」
なせだか沈黙が流れ、2分たった。
ラーメンは程良く柔らかくなっている。
「ほれ・・・食えよ」
「う・・・うん。いただきます!」
かごめは軽快に割り箸を割り、ラーメンを口にした。
「あ、これ、結構おいしいーー!」
かごめはお腹が減っていたのかするするとラーメンをお腹に入れる。
「・・・。そんなに上手いのか。カップラーメンだぜ?」
「うん!おいしい!カップラーメンでも何でも人に作ってもらったものはすごく美味しく感じるもの!ね?そう思わない??」
「そ、そんなもんなのか」
「うん!そんなものよ♪」
かごめは本当に美味しそうに麺を吸う。
犬夜叉は何がそんなに楽しいのか不思議に思いながら、犬夜叉もラーメンを食べる。
そして、あっという間に全部食べてしまった。
「ごちそうさまでした!お腹いっぱい」
「けっ・・・。よくくう女だぜ・・・」
「だってお腹へってたんだもん」
「けっ・・・」
そっぽを向く犬夜叉。
確かに楓のいうとおり・・・根は優しいのかも知れないと思うかごめ。
こうしてなんだかんだいいながらも部屋に入れてくれたし・・・。
「あの・・・。犬夜叉が自分以外の人と関わるの嫌なら仕方ないけど・・・。弥勒様も珊瑚ちゃんも二人ともみんないい人だよ・・・。二人とも・・・。同じアパートの住人として仲間として仲良くなりたいだけなの・・・」
「・・・」
二人ともそれぞれ、何かを背負ってこのアパートにいる。
若い二人ならば、もっと綺麗なマンションがあるはずなのに、ずっとこのアパートにいる。二人ともここが好きなのだ。
「・・・」
「ありがとう。犬夜叉」
「なに・・・?」
「だってほら。ラーメンくれたし、それに・・・」
「それに何だよ」
「定期拾ってくれたお礼、まだいってなかったから。あの写真、大切なものだったから・・・」
犬夜叉はなぜ、かごめがお礼を言うのかわからない。自分の作った料理を投げ飛ばされたというのに、何故、かごめは“ありがとう”なんて・・・。
「・・・」
無言でかごめに背を向ける犬夜叉に、かごめは少し落ち込む。
こうして話してもやっぱり、少しも気を許してくれないのかな・・・と。
「あ・・・。もうこんな時間。じゃ、あたし、そろそろ行くね。ラーメンごちそうさま・・・」
かごめはスッと立ち上がり、部屋を出ようとした。
「あ、おい・・・。かごめ・・・!」
(!)
かごめはピタリと立ち止まる。
「あの・・・。その・・・。」
“悪かったな”
とりあえす、肉じゃがをだめにしてしまったことを謝りたいのだが、人に謝る事など未だかつてしたことがない犬夜叉。
言葉が空回りする。
「だ、だから、その・・・。あの・・・って何だよ!」
かごめ、振り向き、犬夜叉をじいいっと見つめ、にこっと笑った。
ドキッとする犬夜叉。 「なっ・・・?」
「“かごめ”って今、あたしの事、、ちゃんと名前で呼んでくれた・・・!なんか、すごく嬉しい・・・!」
ほわっ・・・。
かごめはそんな感じに柔らかく笑って言った。
「うん。そうだけど、でも名前呼ばれるのはやっぱり嬉しいよ」
「・・・」
「あれ・・・?犬夜叉、どうかしたの?」
「べ・・・。別になんでもねぇえよ・・・!」
「そう。じゃあ、おやすみ!犬夜叉」
「お・・・。おう・・・」
パタン・・・。 閉められたドア・・・。 犬夜叉は不思議な感覚を感じていた。
「・・・」
なんだ・・・?
この感じ・・・。穏やかな・・・。
何が・・・。
何が嬉しいんだよ・・・。
名前・・・。呼んだだけじゃねぇか・・・。
犬夜叉はGパンのポケットに入っていた一枚の写真を取り出す。
そこには・・・。
憂いに満ちた美しい微笑の桔梗が映っていた。
日暮かごめ・・・。
桔梗によく似た女・・・。
でも・・・。
違う・・・。
同じ微笑みでも、桔梗とは違う・・・。
春風の様に柔らかくこちらを捉える・・・。
初めて感じた感情・・・。
「けっ・・・。なんでい!よく喰うだけの女だ!」
桔梗とは違う・・・。 桔梗・・・。
愛する者を失った胸の痛みが蘇る・・・。
写真を見るたびに・・・。
ただ・・・。今、一瞬だけ、その痛みが和らいだ気がした。
一瞬だけ・・・。 「桔梗・・・」
写真の中の桔梗は、ただ、黙して犬夜叉を見つめていたのだった・・・。 早くも犬君、かごめちゃんの笑顔にクラリときているご様子vう〜んでも、心理描写的にちょっと早すぎるかな・・・と思いつつ書いている本人は至って幸せで(爆)こう長編だとキャラの気持ちの流れとかどうかくかって、すごい難しいですね。 言語的に技術全くなしな私。犬かごラブだけは頑張って書きます(だめじゃん)それにしても、現代版のミロサン書くのもすごく楽しいです。将来は結婚させようかな・・・なんて目論んでおりますがそれはかなり先のことですが(笑)
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