第24話 かすみ草と松阪牛と肉まん

コトン・・・ッ。

郵便配達員がかごめのポストに一通の封筒入れる。

かごめが部屋から出てきてポストから手紙を取る。

『日暮かごめ様』

宛名は・・・。

『波田野佳奈子』となっている。

部屋に戻り、手紙を読むかごめ。

手紙には、手術が成功して術後の経過もいいと書いてあった。

「よかった・・・」

呟くかごめ・・・。

『草太は・・・大きくなりましたね。写真、拝見しました・・・。もう中学生なのですね・・・。大切にします。宝物にします』


勝手な言いぐさ・・・だと前なら思っただろう。


でも今は不思議とそうは感じない。

産みの親、佳奈子との再会を果たしたものの、ろくに話もできなかったかごめ。

ただ、窓越しにみつめあっただけだった。

簡単には13年の空白は埋められない・・・。

憎しみや哀しみが完全に消えたわけではない。

だが、少しずつ、少しずつ、こうして手紙から始めようと思う。

温かな日差しが氷を溶かすように・・・。

休日。昨日来た手紙を珊瑚に見せるかごめ。

昼間なのにパジャマ姿のかごめ。


「よかったね・・・。かごめちゃん」

「うん。色々ありがとう。珊瑚ちゃん」

「それより大丈夫?退院してすぐ長い汽車にに揺られて疲れたんじゃない?大学も無理しなきゃいいのに」

「うん。大丈夫。今日一日寝ればもう明日から行くから」

佳奈子に会いに行ってすぐ大学に復帰したかごめだったが、今日は朝から何だかからだがだるく、横になっていた。

「ったく・・・。かごめちゃんはまだ本調子じゃないっていうのに、隣のやきもち男とすけ平サラリーマンときたら・・・」

珊瑚はの言う、壁の向こうの『やきもち男』と『すけ平サラリーマン』。

昨夜、「おなごを口説き方おしえますぞ講座」等と称して、夜遅くまで飲んでいた。

二人とも抱き合ったまま、ベットでお休み中。

「ぐぉー・・・」
犬夜叉はぐうぐうよく眠っている。

弥勒は・・・。

「ああっ。珊瑚、そんな人がみていますぞ・・・ッ」

と怪しい寝言を言いながら犬夜叉の背中を撫でてていた・・・。


「ふふッ。でも、なんだかんだ言ってあの二人、気が合うのよ。犬夜叉は弥勒さまのこと、お兄さんみたいに弥勒様は犬夜叉の事、弟みたいに思ってるんじゃないかな」

「そうかなぁ・・・。にしても騒がしい兄弟よねぇ」


かごめと珊瑚はくすっと笑った。

コンコン。

ノック。

かごめが出ようとしたが、珊瑚が変わりに出た。

キィ。

「はい。どちら様・・・って。あ、貴方は・・・!」

ドアを開けると顔を出したのはかすみ草。

「あの・・・。坂上樹と言いますが・・・。かごめさん・・・いらっしゃいますか?」

白いジャケットに白のワイシャツ。

ちょっと母性本能をくすぐるような甘いマスクがかすみ草の影から顔を出す。

一瞬、ドキッとする珊瑚。

(ほ、本物だ・・・。写真でみるより格好いいかも・・・)

「あ、か、かごめちゃんですね。かごめちゃん、坂上さんが・・・」

「樹さん!?どうして・・・」

かごめはカーディガンを着てベットから出てきた。

「すみません。突然・・・。かごめさんが退院したと聞いて、一度お見舞いにと思って・・・。それに椿の事も犬夜叉さんにもご報告しようと思いまして・・・。あ、それと、これ、どうぞ・・・」

「ありがとうございます。樹さん」

かすみ草を受け取るかごめ。

かすみ草のいい匂いが香る・・・。

なんとなく珊瑚はその場の雰囲気を察した。

(・・・なんかあたし、浮いてる気が・・・)

「じゃあ、かごめちゃん、あたし、部屋戻るね」

「え?」

「じゃ、じゃあ、坂上さん、ごゆっくり・・・」

樹はにっこりと珊瑚に会釈した。

パタン。

”彼の笑顔に女心はドキドキ”

樹の事が載っていた雑誌にそんな見出しが踊っていたのを思い出す珊瑚。


(・・・。確かにあの笑顔は、武器になるよねぇ・・・)

そう思っている珊瑚は犬夜叉の部屋の小窓をのぞく。

(・・・)

空のビール缶で囲まれたベットで抱き合って眠る『やきもち男』と『すけ平だラリーマン』

「珊瑚ぉ〜。そんな、大胆な・・・!あぁあっ。だめですぞ・・・ッ」

妙な寝言で夢の中の男達だが・・・。

(ったく・・・どんな夢みてんだか・・・。でも、かごめちゃんと樹さんふたりっきりだな・・・)

犬夜叉を起こそうと思った珊瑚だがやめた。

(どうせ起きたところで、騒がしくなるだけだし・・・。さて。トレーニングの続きでもしようっと・・・)

そんな珊瑚をよそに犬夜叉は、爆睡、まっただ中だった・・・。

そして一方。かごめと樹は。

「お花、ありがとうございます。狭いところですがどうぞ」

「あ、お気遣いなく・・・」

かごめはいそいで湯をわかし、コーヒーを入れる。

(・・・。外国のティーを飲んでいる樹さんにインスタントコーヒーっていうのは・・・。でもこれしかないし、仕方ないか)

樹の口に合うかどうか心配そうに、かごめは樹にコーヒーを差し出す。

「どうぞ・・・。お口に合うかどうかわかりませんが・・・」

「すみません。いただきます」

ゴクリと一口、飲んでカップを置く樹。

(や、やっぱり口に合わなかったのかな・・・)

「う、うまい!!」

「・・・。え(汗)」

「かごめさん、これ美味しいですね!こんなコーヒー初めてですよ!どこの国のものですか?」

何だか大感激の樹。

(・・・日本の国のスーパーの398円のコーヒーですなんて言えもせず・・・)

樹は、結局一気にゴクゴクと飲み干した。

「ふぅ。本当に美味しかったです・・・!」

「そ、それはどうもです・・・」

(・・・。樹さんて味覚は庶民的なのかもしれない・・・。ふふ)

少し親近感が沸くかごめ。

考えてみれば実に不思議だ。もし、樹が駅前を歩こうものなら人だかりができるだろう。その天下の『坂上樹』が目の前でインスタントコーヒーを飲んでいるなんて・・・。

人の縁とは不思議なものだと思うかごめ。

「あの・・・。かごめさん。今回の事、正直、助かりました・・・」

「いえ・・・」

事件の後、警察から事情を聞かれたかごめだったが、椿を訴えるようなことはしたくないと言ったのだ。

「椿はイギリスの楽団に暫く預けることにしました・・・。そこで、一からバイオリンを勉強し直すと・・・」

「そうですか・・・」

椿のしたことは確かに許せない。草太を巻き込んだことは。絶対に許せない・・・。

だが、椿の樹を想う気持ちは理解できる・・・。相手をどんなに好きでも、その人には他に想う相手がいて・・・。その心は誰にもどうにもできないということが・・・。


「本当にかごめさん達には僕や桔梗絡みのトラブルに巻き込んでしまって・・・。本当に申し訳ないです・・・。僕が貴方達に近づいておきながら言うのも何ですが・・・」

「い、いえそんな・・・。頭を上げて下さい。もういいですから・・・」


深々と頭を下げる樹に腹立たしさも薄れる。


「でも・・・椿さんのしたことは正直、腹立たしいけど・・・。一途に樹さんを想う気持ちはなんとなくわかるかも・・・。どんなに相手の側にいても・・・。相手には他に想う人が居て・・・。想いが届かない歯痒さ・・・。切なさ・・・って。何いってんだろあたし・・・」

「・・・」

樹は無言で頷く・・・。

かごめの言葉は自分たちの事を言っているようにも聞こえる。

一番近くにいるのに、心は遠い・・・。

ちょっと重たい空気が流れる。

その時、樹は本棚のCDラックに目が止まる。

「あれ・・・。かごめさん、”江田和正”がお好きなんですか?」

「え・・・。あ、はい。澄んだ声が好きで・・・」

「今度、彼の曲を作曲することになったんです。そうだ。できたらかごめさんにプレゼントしますよ」

「ほ、ホントですか!?ありがとうございます」


何だか話が盛り上がってきた。

かごめと樹の笑い声は犬夜叉の部屋にも聞こえているが、やはり、まだ爆睡中。

「へぇ。そうなんですかー。あの曲も樹さんが?」

「ええ・・・。あの曲は特にクラッシック調にしてみたんです・・・」

好きな歌手の話題で盛り上がる二人。

二人の胸には、よく似た切なさを抱えている。

それだけは互いに感じていた・・・。

一時間近く話したかごめと樹。

そして・・・。

「長いしてすみません。じゃあ、僕はそろそろ失礼します」

「いえ・・・わざわざ有り難うございました」

アパートの前の狭い路地にシルバーのベンツ。

場違いの様な風景。

「では失礼します。かごめさん、くれぐれもご無理をなさらないように」

紳士的な言葉を残し、樹は颯爽とベンツに乗り込み、走り去っていった・・・。

車の後ろのベンツのマークが光っていた・・・。

「ふう・・・。何だか眠くなってきたな・・・。ん?」

かごめがアパートに戻ろうとしたとき、もの凄いエンジンの音をたてて一台のバイクが近づいてくる・・・。

「あのバイクは・・・」

派手な赤のバイク。かごめの前で止まる。

ヘルメットを取り、長い髪がフサッと下ろされた。

そして一目散にかごめの手を握る鋼牙。

「かごめ!!お前が入院してたって聞いたが、大丈夫なのか!?犬っころになんかされたのか!?」

「そ、そんな事じゃいよ。鋼牙君、あのね・・・」

鋼牙はなにやらバイクに積んでいた大きな茶色い包みをかごめに差し出す。

「何・・・?これ」

「松阪牛だ。肉喰って、早く元気になれ!!かごめ!!うまいぞ!」

包みを開けると確かに霜降りのピンク色の牛肉が・・・。

「あ、ありがとう・・・。みんなでいただくね・・・。って、鋼牙くん!?」

鋼牙はかごめをいきなりお姫様だっこし、部屋に連れていく。

そんなかごめと鋼牙の”匂い”でも嗅ぎつけたのか、犬夜叉が部屋から出てきた。

「鋼牙・・・!!てめぇ!!なにしてやがる!!」

「あぁ?何ってかごめを部屋まで連れて行くんだよ。どきな。犬っころ」

「な、なんだとぉ!」

まるで王子様がお姫様をだっこしている様に犬夜叉には見えた。

(こ・・・この野郎・・・かっこつけやがって)

(へっ・・・。犬っころ、今日は俺の勝ちだな)

階段で、にらみ合う二人・・・。

「じゃあな。犬っころ、これから俺はかごめにうまいモン作ってやんなきゃいけねぇんだ。どきやがれ犬っころ」

「ふんッ。誰がッ!!」
目には見えない火花が散る。

PPP!

鋼牙の携帯が鳴った。

「ちっ。こんなときになんだ」

鋼牙はかごめをおろし、携帯に出る。

「ん?何だって?銀角が?わかったすぐ行く!」

携帯を切ると鋼牙はいつも通りにかごめの手をギュッと握る。

「かごめ。悪りぃ。ヤボ用が入った。俺は行かなきゃなんねぇが、肉喰って早く元気になるんだぞ。じゃあなッ」

鋼牙は颯爽とバイクにまたがり、ヘルメットをかぶると、エンジンを思い切り吹かせる。

「おい、犬っころ。かごめは病み上がりなんだから無理させんじゃねぇぞッ!」

「てッ・・・てめぇに言われる筋合いはねぇッ!!」

犬夜叉の啖呵も無視して鋼牙は風の如く、去っていった・・・。

おもしろくないのは犬夜叉。

自分が寝ている間に鋼牙が来たことが。

「犬夜叉。そんなに怒らないで。鋼牙くんはあたしを心配で来てくれたのよ」

「けっ。知るか。そんなもんッ・・・」

犬夜叉、自分が寝ている間にかごめと鋼牙が何を話していたのか気になって仕方ない。

「・・・何よ。あ、あんたまた、妬いてるの?」

「ば、馬鹿、妬いてねぇッ!!」

口をとらがせてそっぽむく犬夜叉。

思いっきり妬いてます。

「ん?」

鼻をクンクンさせる。

匂いには敏感らしくかごめから何か花の様な匂いを感じた。

「おい・・・。お前、なんか花の匂い、するぞ」

「かすみ草だわ。樹さんが持ってきてくれたの」

「樹・・・?樹が来たのか?」

犬夜叉、意外な訪問者に驚く。

「うん。ほら、椿の事で・・・。椿さんね、イギリスに行ったんだって・・・。もう一度一からバイオリンをやるために」

「そうか。ま、俺達にはもう関係ねぇがな。あいつのせいでかごめは辛い思いをしたんだからな」


やはり椿を許せない犬夜叉。でもその元凶が自分にあると思うと、椿ばかり責められない気がした。

「でも、そのためにわざわざアパートまで来たのか?花持ってよ」

「お見舞いよ。でも樹さんて正直最初は、おぼっちゃまって感じで違う世界の人かなって思ってたけど、とっても親しみやすい人なのね。色々話してたらそう思ったわ」

「・・・話ってお前、樹の奴、部屋にいれたのか?」

「当たり前でしょ。玄関先で話すわけにいかないでしょ。何よ。あんた、まさか、樹さんとあたしの事まで疑ってるんじゃないでしょーね?」


犬夜叉の目は思い切り疑惑に満ちている。

「あたしをそんな目でしか見られないわけ!?もー知らないッ!!」

バッタンッ!!

ドアを閉める音にビクッとする犬夜叉。

かごめの怒り具合がわかる・・・。

「けっ。なんでいッ!俺が寝てる間に・・・」


かごめの部屋に入った男がいると思うとイライラする。

子供じみた嫉妬。

だが・・・。

「だ〜ッ!!畜生!!ムカツク!!」

思い切り虫の居所が悪くなった犬夜叉。

一人、コンビニへ・・・。

一方かごめは・・・。

「全く!!犬夜叉の馬鹿!」

ベットに座り、犬夜叉の変わりにクッションを叩くかごめ。

妬いてくれるのは嬉しい。でもつい、自分もムキになってしまって・・・。

それにしても。今日の午後だけで、訪問者が多かった。

樹のかすみ草・・・。

鋼牙の霜降りの肉・・・。

有り難い・・・。

でも本当に訪ねてきて欲しかったのは・・・。

(・・・。なんかお腹減ったな・・・)

かごめが冷蔵庫をのぞいていると。

ドンドン。

乱暴なノック・・・。

多分これは・・・。

「・・・。おう」

ブスッとした顔の犬夜叉。手には白い紙袋が・・・。

「ほれ・・・。食え」

「え?」

紙袋はあたたかく、中をみると肉まんが。

「お前・・・前、好きだっていってだだろ。コンビニ行ったついでに買ってきた」

「ありがと。ねぇ。犬夜叉・・・。ちょっとお茶してかない?」

「・・・お、おう・・・」


かごめのお誘いを受け、犬夜叉、久しぶりにかごめの部屋に。

やっぱりかごめの部屋は自分の部屋とは違い、綺麗である。

ほこり一つなく、ピンクの絨毯に壁紙も小花模様。

ガラスのテーブルにかすみ草が飾ってあり・・・。

樹が来ていた事を思い出す犬夜叉。

(・・・一体何話してたんだろうか・・・?)

自分の事?桔梗のこと?

それとも・・・。

犬夜叉は目の前のかすみ草を見つめながら考えていた。

「はい。コーヒー。どうぞ」

「お、おう・・・」

赤いマグカップに注がれたコーヒーをゴクッと飲む犬夜叉。

「いただきま〜す!」

肉まんをばくっと頬張るかごめ。

ホクホクいわせて・・・。

「んっとにお前ってうまそうに喰うな・・・」

「だって美味しいんだもん。犬夜叉。ありがとね!」

「へっ・・・」


「ふふ・・・。ほんとおいし・・・!」

本当に美味しそうににこにこしながら食べるかごめ。

その様子に犬夜叉は安心した。


”私、手紙からはじめてみようと思うの・・・。ゆっくり時間をかけていこうと・・・”

かごめはそう言っていたが、本当は心の中ではきっとまだ、割り切れないものが重たくあるのだろう。

でもかごめが笑っているのなら・・・。

「犬夜叉。母から返事が来たの。手術、旨くいったんだって・・・。よかった・・・」

「・・・そうか」

「うん・・・」

母に、今度はいつ会いに行けるか・・・。

まだ分からない・・・。気持ちはまだ整理できていない。

でも元気でいてほしい・・・。

それだけは偽りのない気持ちだ。

「はぁ・・・。有り難いな・・・本当に・・・」

「・・・は?どーゆーことだ」

「だってさ・・・。あたしの周りには、勿体ないくらいに優しい人達がいる。それが『当たり前』に思っちゃいけないよね。その『当たり前』がいかに有り難くて尊いか・・・。ずっと忘れないでおかなくちゃ」

「・・・。説教くせーこというな。変な奴・・・」


「だから。こうしてさ。美味しい肉まん食べられる幸せが大切って事よ」


「・・・。よくわからねぇが、要するにお前は肉まんが好きってことだな」


「うん。はぁ〜。も一個たべちゃおうっと」


かごめ、2個めをほおばる。


(・・・すげぇ・・・)



自分が思いもしないような、何気ないことがかごめは幸せだという。

つい最近、辛いことがあったばかりなのに。

犬夜叉、大きな口をあけて食べてみる。

(・・・。こんなもんが幸せなのか・・・。やっぱわかんねぇなぁ・・・。でも・・・)

でも。かごめが幸せと思うならそれでいい。

「犬夜叉。今夜は弥勒さまと珊瑚ちゃん誘って今日はみんなですき焼きね!鋼牙君からもらったお肉で」

「へっ。鋼牙からもらった肉なんて・・・」

「あそ。いらないのね、霜降りの柔らかそうなお肉なのになぁ」

「くっ。喰わねぇなんて言ってねぇッ!」

「わかったわかった。今晩はみんなで食べようね!」


そう・・・。


みんなで。

一人じゃないから・・・。


まだ癒えぬ痛みを抱えていても。

一緒に笑ってくれる人がいる・・・。


一人じゃないと分かったときから


乗り越えられない過去はない


そんな不思議な力が沸いて


簡単に消えない傷も 痛みも


きっといつかは



自分の心の糧に出来る時が


強さに変えられる時がきっと来る


そんな自分になりたい。


『綺麗事』と言う人もいるかもしれないけど・・・。



私はそれを信じたい・・・。





夜。楓の部屋にて住人全員ですきやきパーティ。

しかし、何故か鋼牙もいる。

「って何で鋼牙、お前がここにいやがるだ!」

「だって鋼牙君からもらったお肉よ。あたし達で食べるなんて申し訳ないじゃない。だから呼んだの」

鋼牙はかごめの横にちゃっかり座って箸をのばすが犬夜叉の箸もその肉を掴んだ。

犬夜叉と鋼牙のギラッと光る。

「俺がかごめにやった肉だ!てめぇ、喰ってんじゃねぇよ!!」

「うるせえッ。これは俺の肉だ!!」

「俺のだ!!」


鍋の中では一枚の肉争奪戦。

弥勒と珊瑚は涼しい顔で他の肉を食す。

「食べ物の恨み、恋の恨み、深いですなぁ」

「・・・。弥勒さまはセクハラの恨みじゃないの」

「・・・。珊瑚、よかったら私の肉、どうぞ」


珊瑚と弥勒の横では犬夜叉と鋼牙のにらみ合いが続き・・・。

「もーー!!すき焼きぐらい仲良くしてよねーー!」


楓荘から、すき焼きのいい匂いと賑やかな声がたえない。楽しい夜だった。



満月が、明るく楓荘を照らしていた。


この時期、お鍋とかすき焼きが美味しい季節ですよね。みんなで食事をする。すごく楽しいし、ご飯も一層美味しい。何気ない事なんですが、 そういう時間が一番、人が癒される・・・んじゃないかと思います。

「痛みを強さにかえられる・・・」かごちゃんてそういう子ですよね。完全に痛みや傷は癒えないかもしれないけど、それを自分で認めて、自分でも気がつかないうちに心の強さにしている。そして無意識のうちに人にわけてあげてる。強さと優しさを。 嫉妬や憎しみもある自分の心を否定しないであるがまま見つめて、それでも自分の信念を大切にしているのがかごちゃんです。かごちゃんの「しょうがないのよ」の台詞の切なさと同時に、やっぱりそう締めくくれる「かごちゃんて強い」んだなぁって 改めて思いました。でもきっと影で誰も知らないところで泣いてるんじゃないかとか妄想していたら、やっぱり長湯になってしまい、茹でだこ状態第2弾となってしまいました(笑)