第3話・みんな優しい手をもってる B 午後9時。犬夜叉と刀々斎は託児所で夕飯をごちそうになった。そして、託児所の子供達は皆帰り、かごめ達もアパートに戻ることに・・・。
七宝と七宝の祖父が門で見送りを。
「かごめ!犬夜叉!またな!遊んでやってもよいぞ!」
七宝、Vサインをする。
「うるせえ!」
「じゃあ、石川先生、七宝ちゃん、おやすみなさい」 七宝は、3人が見えなくなるまで手を振っていた。
刀々斉とかごめ、犬夜叉の3人は駅までしばらく途中まで一緒に歩いた。
「んじゃ、ワシはこの辺で失敬する。お邪魔虫ジジイは退散じゃ」
「おう。とっとと学園に帰れ!二度とあいたくねぇ!ぐえッ!」
刀々斉に無理矢理頭を押さえ込まれる犬夜叉。
「かごめさん・・・でしたな」
「あ、はい・・・」
「無神経で突っ張って我が儘な奴ですが、どうぞ、よろしくお願いしますじゃ。根性だけはある奴です・・・」
「刀々斉のおじいさん・・・」
「じゃあ、ワシはこれで・・・」
かごめに深々と頭を下げると刀々斉はすれ違いざまに、犬夜叉の肩をポン!と叩いた。 『元気でやれ』と言うように・・・。
「おい、じじい!」
振り向く刀々斉。
「・・・。達者でな」
「ふっ・・・。おまえこそな・・・!」
帰っていく刀々斉の後ろ姿。
子供の頃はすごく大きく大きく見えた背中だったが何だか・・・。
杖をついて、よっこらよっこらと帰っていく刀々斉は一回り小さく見えたのだった・・・。
「いいおじいさんだね。犬夜叉の事、心配してるのね」
「けっ・・・。昔から口うるせーじじいだぜ。わざわざ楓のばばあからの電話で俺に会いに来やがって・・・」
「でも嬉しいね・・・。心配してくれる人がいるってさ・・・。一人じゃないって思えるじゃない」
「・・・」
どうしてそれが嬉しいのか・・・。
かごめは何でも喜びに変えてしまう。 不思議で・・・。仕方ない・・・。
犬夜叉はかごめの手の甲のひっかき傷をチラッと見る。
「かごめ・・・。そんな傷、ガキにつけられて何でむかつかないんだ・・・?何も言わないんだ・・・?」
「あ・・・。これ・・・?この傷は卓ちゃんの傷・・・。心の・・・」
「心の・・・?」
「そう・・・」
カン!カラカラカラ・・・ッ!
かごめは思い切り空き缶蹴った。
「お母さんに叩かれ事も、寂しいことも誰にも言えず一人怯えて・・・。でも本当は誰かに助けてほしい、かまってほしい・・・って必死で訴えてる気がして・・・。だから、こんな傷、どってことない。卓ちゃんが元気になってくれるなら、あたしは何回でもだっこでもおんぶでもしてあげたいんだ・・・」
「・・・」
強くならなきゃいけない。自分を見てくれる人が誰もいなかったから、
そう子供頃から思ってきた。
でも、哀しいとき、辛いとき、誰かにそばにいてほしいと本当は強く思っていた。
いや・・・。今でもずっと・・・。
「・・・。ほれ。これ・・・。やる」
犬夜叉はGジャンのポケットからバンそこを取り出し、かごめに渡した。
「ばい菌・・・はいるとまずい・・・しな」
「犬夜叉・・・。ありがとう」
「へん・・・」
犬夜叉は照れくさそうに両手をポケットに突っ込む。
「それと、今日、子供達と遊んでくれて・・・」
「べ、別に俺は・・・」
「アパートのみんなになかなか仲良くしてくれないのは、みんなのことが嫌いだからなのかな・・・って思ったけど、違うんだね・・・。ホントは犬夜叉、優しいとこあるんだってわかって嬉しかった」
「・・・」
電信柱の灯りに、かごめの笑顔が映える・・・。
笑うなよ・・・。そんな風に・・・。
心の中の強がっている自分が・・・消えそうで・・・。
でも・・・心地よくて・・・。
「おっ。お前は変な奴だ・・・。ガキにまでにこにこしやがって・・・。お前のその笑った顔みてたらこっちの調子がくるうんだよ・・・。にたつくんじゃねぇよ・・・ってかごめ・・・!?」
「スースー・・・」
犬夜叉が振り向くとなんとかごめ、電信柱に座って寄りかかって眠っている・・・。
「なっ。どこでねてやがる・・・。なんて女だ・・・!おい、起きろ!かごめ!おいって・・・!」
体を揺すって起こすが一向に起きなく・・・。
「置いていくぞ!おい!」
「・・・」
「・・・しゃあねぇなッ!」
置いていくわけにもいかない。犬夜叉はかごめをよっこらしょとおぶった。
「・・・。手のかかる女だ!!全く・・・」
ぶつぶつ言いながら、かごめをおぶって歩く犬夜叉。
背中のかごめは熟睡状態で・・・。
「人の背中でグーグーとねやがって・・・」
初めてじか感じるかごめの温もり・・・。
限りなく優しい匂いがして・・・。
“その目でかごめの本当の姿を見てこい。突っ張っていることなどくだらんと思うようになる”
楓の言葉を思い出す犬夜叉・・・。
かごめの本当の姿・・・。
見られたのかどうかは分からないけど、分かったのは・・・。
かごめの匂いは限りなく優しいこと・・・。
かごめのそばにいると自分がひどく安らげる事・・・。
それだけだ・・・。
アパートまであと1,2分・・・。
何だか少し遠回りして帰りたいと一瞬思う犬夜叉だった・・・。 その二人を・・・。
鋭い目つきの男が見つめていた・・・。
こうつぶやいて・・・。
「クックックッ・・・。桔梗・・・お前の惚れてた男はもう次の女作ってるやがる・・・。しかもお前によく似た女をよ・・・。悪趣味な野郎だ・・・。このままじゃすまさねぇよな・・・ぁ。なぁ桔梗・・・?」 |