第4話・傷心
〜そばにいて欲しい・・・〜
@

寂しい音色が聞こえる・・・。


誰かを求めるようなバイオリンの音色・・・。


桜が咲いていた・・・。


俺はこの音色に引かれてお前と出会った・・・。


寂しい音色を奏でるお前に・・・。


お前に・・・。


日曜の朝。楓荘、一階弥勒の部屋からなんとも上品なバイオリンの音が響いている。

CDラジカセの前で目をつぶって、曲に酔いしれている弥勒。

その手には『月島桔梗バイオリンベストセレクション』と描かれたアルバムが・・・。

「うーん・・・やはり朝はこれからはじめないとなぁ・・・」

ブチ!!

「!?」

弥勒が目を開けると、なんとCDラジカセの電源を切った犬夜叉がそこに。

「な、何するんだ!人がいい気分で聞いているのに。それに人の部屋に勝手に入るな」

「朝っぱらうるさいんだよ!」

「あ、犬夜叉、お前も聴きませんか?このバイオリニスト、かごめさまによく似ていて私のお気に入りになのですよ」

「う、う、うるせえ!どうでもいーからその曲聞くな!いいな!!」

バタン!
犬夜叉は乱暴にドアを閉めて部屋に戻った、

「・・・。一体、何なんだ。あいつは・・・」


犬夜叉の少し尋常じゃない様子。


“これは何かありますな”

弥勒の第六感が働き、早速この事を珊瑚やかごめ、楓に報告。

なぜかそのメンバーが楓の部屋に集まり、こたつにはいって茶をすすっている。

「どーでもいいが、なぜすぐワシの部屋に集まるんじゃ」

「いやー。ここへ来ると美味しいお茶が飲めますし・・・」

「何だかくつろぎたくなるんだよねー」

弥勒と珊瑚、しみじみと。

昔から、何か面白いうわさ話があると住人達はここへ来て話しに花を咲かせる。

「というわけで、『月島桔梗』のCDに犬夜叉はひどく反応していました。何か個人的に知り合いなのでしょうか・・・?」

「えー。そんなわけないでしょう。だって月島桔梗ってい言ったら世界的有名で天才バイオリニストって言われてた人でしょう?そんな人があの犬夜叉と・・・」

弥勒と珊瑚はまるで刑事ドラマ顔負けで推理。

しかしかごめは、犬夜叉と助けて初めて病院で交わした言葉を思い出していた。


犬夜叉が病院のベットで目を覚ましたとき言った名前・・・。

『き・・・桔梗!?』

誰かと間違えたんだと思っていたけれど・・・。まさかあの有名な『月島桔梗』なのだろうか・・・。

かごめはなんとなく気持ちがもやもやした。

「で、その肝心の犬夜叉は?弥勒さま?」

珊瑚はこたつの上にあるせんべいをぽり・・・と食べながら聞いた。

「犬夜叉は休日出勤なのでしょう。朝早く出ていきましたよ。それにあの強情そうな犬夜叉です。簡単には言わないでしょう」

「あ・・・あのさ・・・。弥勒様。その『月島桔梗』とあたしって・・・似てる?」

「ええ!双子と言っても無理はないくらいに・・・。でもそれが何か?」

「ううん 何でもない・・・」

(前に何度か友達に言われたことはあったけど・・・。やっぱり・・・。犬夜叉は『月島桔梗』と間違えたのかな・・・)

2年前。かごめも犬夜叉も18の頃だ。

「本当に惜しいアーティストを無くしました・・・。クラッシック界の宝が消えた・・・。とまで言われていましたからね。本当に彼女の演奏は素晴らしかった・・・。“孤独”というものを魂から絞り出すような音色でした。聴く者を魅了してしまう・・・」

「でも、そんな一流の人間とあの犬夜叉ってどう考えても結びつかないんだけど・・・」

「“孤独”で結びついたんじゃな」

珊瑚の隣に緑のチョッキを着た老人がぬっと座っている。

「きゃああ!あ、あんだ誰よ!?」

「刀々斉のおじいさん!」

「よお、かごめさん。この間はどうもじゃ★」

Vサインをする刀々斉。

「園長さん。久しぶりじゃの。突然人の家に上がり込む悪い癖はなおっとらんようですな」

楓は刀々斉の分のお茶を湯飲みに入れ、差し出した。

「楓さんもまたしわが増えたのではないか?」

楓はギロリと刀々斉を睨む。

な、何だかこの二人の間に火花が一瞬散った。かごめ、弥勒、珊瑚の3人はちょっと引く。

「あ、あの・・・。楓様、この方は犬夜叉とどのようなご関係で・・・?」

弥勒は恐る恐る楓に尋ねてみる。

「・・・。犬夜叉の父親がわり・・・というべきか。昔、犬夜叉が育った施設の園長じゃ」

「刀々斉源助と申します。この度はうちの犬夜叉がお世話になっとりますじゃ」

刀々斉は弥勒と珊瑚に頭を下げて挨拶。二人も礼儀正しくおじぎした。

「事に皆の衆、犬夜叉と桔梗との事についてお知りになりたいのじゃな?」

「え・・・ええ。できましたら・・・」

「ならばワシが説明して差し上げよう。実は・・・」

ゴン!

楓は地肌の見える刀々斉の頭をお盆で殴った。

「余計な事をペラペラしゃべらんでいい。時に園長。今日は一体何のようでここに来たんじゃ」

「ああ、ちと犬夜叉に伝えたいことがあってのう・・・。でもおらんようじゃな。実はもしかしたら、この事も“桔梗”と関係があるやもしれんのだ。もしかしたら、“奴”はここにも来るかもしれん。だから、犬夜叉と桔梗の事を皆に話をしたい・・・」

「・・・。どういう事じゃ。園長」

「まぁ、ともかくワシの話を聞いてくれ。知っている範囲じゃが話したい。犬夜叉と桔梗のなれそめから・・・」


(・・・)

犬夜叉と“桔梗”のなれそめ・・・。

複雑な気持ちのかごめ。

“馴れ初め”と言うことだからやっぱり犬夜叉と“桔梗”はそういう仲だったのだろうと想像できる。

犬夜叉の事を知りたいという気持ちはあるけれど・・・。

そんなかごめの気持ちをよそに刀々斉の話は始まった・・・。


出だしは・・・。犬夜叉が“園”を出た春の頃の話だった・・・。