其の7・一瞬の片思い 永遠の切なさ A
「かごめーーー!!!」 (・・・犬夜叉!) キキキキーーーーー・・・! 犬夜叉の声に我に帰えり、 とっさにかごめは路肩に飛び移った。 「馬鹿野郎!跳ねられてぇのか!」 トラックの運転手の罵声も 耳に入らずかごめは呆然としている・・・。 「かごめ・・・!!怪我ねぇか!???」 「・・・」 「かごめ!??」 犬夜叉の声にビクッと肩を震わすかごめ。 「・・・犬・・・夜叉・・・」 「かごめ・・・。どっか痛いのか・・・!?」 「・・・大丈夫・・・。ごめん・・・私のほうこそ・・・」 かごめはよろめきながらも立ち上がろうとした 「・・・痛・・・!!」 右足に激痛が走った 靴下をめくるとかなり踝(くるぶし)が腫れている・・・ 「・・・捻挫してんじゃねぇのか・・・」 「大丈夫よこれぐらい」 「んなわけねぇだろ!!」 犬夜叉はかごめを背負い、走り出した。 (犬夜叉・・・) 「この辺に医者はねぇのか!!おい!!」 道行く人に詰め寄り病院を必死にさがす犬夜叉・・・ 「・・・突き当たってすぐに接骨院が・・・」 「そうか!!サンキュー!!」 必死に病院までかごめを背負い走る犬夜叉・・・ 「待ってろよ!!今すぐつれてってやっから・・・!」 「・・・」 広い犬夜叉の背中がなんだか痛い・・・ (私が・・・つまんない嫉妬したからこんなことに・・・) 好きな人の背中がすごく痛かった・・・ 接骨院で診察してもらった結果、やはり軽い捻挫で湿布薬を 処方された。 接骨院から犬夜叉に背負われかごめが出てきた・・・ 「・・・ごめんね・・・」 「お前が謝ることねぇ・・・。それより足・・・もう痛くねぇか?」 「うん・・・」 自分を気遣う犬夜叉の言葉・・・ 申し訳なさがかごめを包む・・・ ポツ・・・ 「・・・あ・・・」 街路樹が濡れる 雨が降ってきた・・・ 二人とも傘も何も持っていない・・・ (やべぇな・・・。タクシーはなかなかつかまらねぇし・・・) 「・・・。どこかで雨宿りするしかないね・・・」 「でもすぐには止みそうにないぜ。雨宿りって・・・」 二人はふと上を見上げる・・・ (・・・) (・・・(汗)) 『御休憩処・愛の園』 ・・・実にお約束的なパターンではあるが。 「・・・。犬夜叉・・・。雨宿りしなくていいからこのまま突っ走ろう」 「そ・・・そそそうだな(汗)」 小雨が激しく降る中犬夜叉は かごめを背負って商店街のアーケードを走りぬける。 「・・・くしゅんっ・・・」 「・・・。寒いのか?」 「へーき・・・。くしゅんっ・・・」 クシャミが止まらない。 (やっぱどっかでやすまねぇと・・・。といっても妙な場所しかねぇし・・・) 偶然、犬夜叉たちの横をタクシーが通り過ぎた。 犬夜叉は飛び出して無理やりタクシーを止めた 「やい!!急病人だ!!てめぇ!!アパートまで超特急で行きやがれ!! ちょっとでも遅れてみろ。タクシーぶっこわすぞっ!!!!」 「は、はいッ」 運転手のネクタイをつかんですごい形相の犬夜叉・・・ タクシーの後部座席・・・。犬夜叉はかごめをしっかりと・・・ 両手に抱きしめていた・・・ (犬・・・夜叉・・・) 煙草の香りがするジャケットにかごめは包まれ かごめは意識を失った・・・ 「ごめ・・・。かごめ」 「ん・・・」 かごめが目覚める。 自分のベットで寝かされ、横には犬夜叉が・・・。 「大丈夫か・・・?辛くねぇか・・・?」 「うん・・・。大丈夫・・・。犬夜叉が・・・。着がえさせてくれたの・・・?」 「・・・ばっ・・・(照)か、楓ばばあに決まってんだろ!ったく・・・」 おでこのタオルを取り替えながら照れる犬夜叉・・・。 「・・・犬夜叉。ごめんね・・・。今日は本当に・・・」 「謝るな。今は休め・・・」 かごめは首を振った。 「・・・ごめんね・・・。私・・・。また変な嫉妬しちゃって・・・。 犬夜叉の事・・・。信じてるはずなのに・・・」 「かごめ・・・」 「・・・。ごめんね・・・」 とっくに。 別の道を歩き出しているはずなのに 聞き覚えのあるメロディラインが耳に入ると 心が問答無用で反応してしまう。 ほんの一瞬。 心に隙ができて 過去の想い人が顔を出す・・・ 「オレが悪いんだ・・・。オレが・・・。オレが・・・。かごめを苦しめて・・・」 「誰も悪くないのよ・・・。ただ・・・私がまだまだ 覚悟がたりないだけ・・・。それだけなのよ・・・」 かごめの言葉が犬夜叉を締め付ける・・・ 決して自分を責めないかごめの言葉が・・・ 「・・・やっぱり・・・。やめてもいいよ。婚約・・・」 「なっ・・・。何っ言ってやがる」 かごめはおでこのタオルを取り、起き上がった。 「犬夜叉は・・・。誰かに”縛られる”人生じゃない方がいいのかも・・」 「勝手なこというな!オレの人生はオレが決めてんだ!!」 「でも・・・。でもね・・・。この先・・・。今日みたいなこと何度も あるかもしれない。”結婚”なんてしたらもっと相手を・・・」 それ以上の言葉をかごめは飲み込んだ。 頭の中で悪いことばかりシュミレーションしてしまう。 結婚してから 桔梗に何か緊急事態があったとして 犬夜叉がきっと力になりたいと思うだろう そばに行きたいと思うだろう そうなったとき自分は・・・ (・・・結局・・・。私は自分の弱さにまだ負けてる・・・) ギュッとシーツを握り締めるかごめ・・・ 「・・・。お前が・・・オレと一緒になるのが嫌だっていうなら仕方ねぇ・・・。けど・・・ オレは・・・。オレは決めたんだ!お前とずっと一緒にいるって決めたんだ! 」 「犬夜叉・・・」 「・・・。。オレがどんな恥ずかしい想いして これ、買ってきたと思ってンだ!」 ポケットから 紺色のケース・・・ 「これ・・・」 ぱかっと開けると 小さく光る石・・・ 「///。お、女の店員に適当にえ、選らばせたんでい・・・ッ。ろ、ローンじゃねぇぞッ!!」 「・・・」 「な・・・なんだよ。人がガラにもねぇことしたのに 気に食わねぇってのか!??」 (・・・ぎょっ・・・) かごめの涙に犬夜叉・・・慌てる・・・ 「・・・ごめん・・・。嬉しいはずなのにどうしてか・・・」 「かごめ・・・」 「・・・本当にいいの?私がもらって・・・。いいの・・・?」 少し申し訳なさそうにかごめが言った。 「!!それはお前の指にしかあわねぇ!! オレがお前だけのためにこしらえたモンだ!!お前だけの指輪だ!! 早く婚約しねぇとお前は他の男にもってかれるだろ!!」 (・・・はっ・・・。今・・・オレかなり勢い余ってこっぱずかしい台詞を・・・) 犬夜叉、一気に赤面・・・ 思わずかごめから顔を逸らす。 「・・・。ありがとう・・・」 「べ、別にれ、礼を言うことじゃねぇ(照)」 すっと薬指にはめてみるかごめ・・・ 「・・・一生・・・。大事にするね」 「お、おう・・・(照)」 「フゥー・・・」 熱のせいでかごめが少し苦しそうに 粋をついた 「もう寝てろ。そんな苦しそうに・・・」 「・・・。心配かけて・・・。本当にごめんね・・・」 かごめの”ごめんね”を聞くたび 心が締め付けられる 自分の不甲斐なさでかごめを悩ませ苦しめ・・・ かごめが哀しいと自分も悲しい かごめが涙すると 自分も泣きたい気持ちになる かごめがいない部屋 いない日は 寂しさに絶えられない 本当はかごめで心はいっぱいなのに・・・ ”好きだ” ”愛してる” そんな言葉は照れくさくてどうしても言えないけど けど キモチだけは伝えたいのに 伝えたいのに・・・ 「・・・犬夜叉・・・」 犬夜叉はそっとかごめの肩に手を添えた・・・ 目と目が合う・・・ 「・・・」 「・・・」 何も言わずとも 自然な流れ・・・ かごめは目を閉じる・・・ 「・・・だめ。風邪、うつったら・・・」 かごめは人差し指で犬夜叉の唇を止めた だがそれをはずす・・・ 「・・・オレはそんなヤワじゃねぇ・・・」 「犬夜叉・・・」 あと数ミリで唇が触れ合う・・・ が。 ガチャ 「かごめ、かゆを作ったんじゃって・・・あらまぁ」 楓ばあちゃん、あと5ミリで初キッス・・・というところで ご登場! 「か、楓おばあちゃんッ」 ドカ!! かごめは慌てて犬夜叉を突き飛ばす。 犬夜叉、絨毯とキス・・・ 「かごめが熱を出したって聞いたもんじゃから 粥をつくってんきたんじゃが・・・。間が悪かったのう」 楓は粥なべを机の上においてそそくさと出て行った・・・ 「かごめ、てめぇなにしやがる!」 「ご・・・ごめん。つい・・・」 犬夜叉、額にちょっとてんこぶがv 「みろ、おめぇがつきとばしたせーでお前が・・・」 かごめは犬夜叉の前髪をそっとずらし・・・ チュ・・・ (・・・!!) タンコブにかごめのキスが・・・ 「・・・。”今日”はこれで我慢してね。そ、そのほかのことはちゃんと 結婚してから・・・(ぽ)」 「・・・(赤)」 犬夜叉のタンコブは照れも入って さらに赤く染まった (結婚してから・・・か(寂)・・・結婚する日まであと何日あるんだろ・・・) と、犬夜叉はちょっぴり考えたとさ。 「ぐおー・・・」 おでこにぺったん、絆創膏を張った犬夜叉が大の字になって眠っている。 隣のかごめは・・・ もらった指輪をはめてドレッサーに向かってすわっていた。 女なら・・・ 嬉しいはずの指輪。 嬉しさと同時に感じる ”切なさ” 結婚して 同じ時間を共有していたとしていても 桔梗の音色が微かにでも聞こえたならばきっと 犬夜叉の心の”弦も”容赦なしに響き、飛んでいってしまうだろう。 一瞬。 犬夜叉の心からかごめが消える・・・ 一瞬の片思い 超えることができない そして消えさることができない 壁・・・ 永遠の切なさ・・・ 「・・・。それも全部ひっくるめて・・・。私は受け入れなきゃいけないんだよね・・・ 今更だけど・・・」 嫉妬より 辛いのは 嫉妬している自分を嫌悪すること 「あたしの切なさの分、ちゃんと幸せにしてよね!犬夜叉!」 かごめは指輪にむかってつぶやいた。 ヘイックショイ!! 同時に犬夜叉の部屋からクシャミが・・・ 「・・・聞こえちゃったのかしら(笑)」 かごめの薬指の指輪・・・ きらっと 少し切なく光った・・・
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・・・なんでかごちゃんがこんな思い詰めなきゃいけねぇんだ! (書いたのは自分だろう) ・・・とか吠えながら書いたんですがやっぱり避けて通れない心理描写っていうか かごちゃんの正直な気持ちなんじゃないかなぁって(汗) 犬の中の”桔梗”よりかごちゃん自身の中の”桔梗”の方が ずっとかごちゃんに重く存在している気がします。 犬がどんなに甘い言葉をかけたとしても”かごちゃんの中の桔梗”は消せないと 思う。 男の方が知りませんが例えば恋人が居たとして一度きりの浮気や 男の方に忘れられない彼女とか元彼女とかいたら 女っていうのは男にも腹立つけれど、自分の中の相手の存在っていうか 相手の女を強く意識するんじゃないかなぁ。それって嫉妬っていうより 嫉妬深くなる自分に対しての自己嫌悪だったり 相手を信じられない自分への自己嫌悪だったり。 または”誰かを信じる”という事自体が怖くなってしまったり。 それが”恋”ってやつですよ。なーんて理屈を良く耳にするけど 自分自身との”葛藤”って本当にエネルギー使うんですよ。 次の恋なんてできるはずないっていうか。 日本の演歌にこんな歌が『芸のためなら女房も泣かす〜』 すばらしい唄だし、演歌って深いと想いますが このフレーズだけは納得行きませんね。 ・・・女房を泣かせたら最後になくは男なんだよ って話がずれましたが 最後のかごちゃんの台詞「私の切なさの分、ちゃんと幸せにしてよね!」 原作犬君にも言ってみたい気が致します。 ・・・原作かごちゃんはそんなことは犬に求めていない、 そこがいいよい所なのですが、 やっぱりかごめFANなので、かごちゃん応援隊なコメントになってしまいます。 と言うわけで・・・樹あたりが今後また登場して、思いっきり妬いてもらおう!! と企て中です・・・