第4話
たみちゃん専属配達人誕生

はなちゃんは、学校の帰りの会が終わり、みんなが帰ったのをみはからってたみちゃんの机の中に入っていた算数や国語のプリントなどを取り出します。

そして、はなちゃんママ特製の

「たみちゃんお届け物袋」に入れると、急いで学校をあとにしました。

たみちゃんの家ははなちゃんの家から大分離れています。でも、はなちゃんはランドセルをしょったまま、たみちゃんの家に直行します。

「こんにちはー」

「あら・・・はなちゃん。今日も来てくれたの?」

「はい。今日は算数でたくさんプリントでたから・・・」

たみちゃんのお母さんにプリントを手渡すはなちゃん。それと一緒に・・・。

たみちゃんの大好きなキティーちゃんのびんせんのお手紙を渡します。

それには、はなちゃんのたみちゃんへのごめんなさいの気持ちがたくさん書いてありました。

「あの・・・。たみちゃんは元気ですか・・・?」

「ええ・・・。ごめんなさいね。はなちゃん。いつも来てくれてるのに・・・。あのね、はなちゃん。持ってきてくれるのはすごく嬉しいんだけど、無理しなくていいのよ。あなたのおうちから離れているのに大変でしょう・・・?」

たみちゃんのお母さんは心配そうに聞きました。

しかし、はなちゃんはおおきく首を横に振ります。

「だいじょーぶです!私はたみちゃんのお届け物係だから・・・!でもたみちゃんは・・・私の事は絶対に許してくれないかもしれないけど・・・」

「はなちゃん・・・」

「あ!もうすぐお母さん帰ってくる時間だ!では!また伺います!あ、そうだ!もし、何か学校へ持っていくものがあったら、今度、言ってください!じゃ、さようならっ!」

はなちゃんはそうあいさつして急いで、帰っていきました。

そんなはなちゃんの後ろ姿を・・・二階のまどから見ている人がいます。

「こら・・・。たみ!見ているんでしょう・・・?どうして出てこないの・・・?」

部屋のドアの前絵でお母さんが言っています。

「たみの気持ちも分かるけど・・・。はなちゃんに・・・せめてありがとうはいいなさい・・・。ほら。今日もまた、お手紙書いてきてくれたからここにはさんでおくわね・・・」

そしてお母さんが下へ降りて、足音が聞こえなくなると・・・。

ドアの隙間にはさんだ手紙がスッと部屋の中に入ってなくなりました。 たみちゃん。 これで何回目のごめんなさいだろう。何度ごめんなさいを言っても、きっと許してもらえないと思うけど・・・。やっぱりごめんなさい。 今、たみちゃんが一人でどんな気持ちでいるか・・・そう考えると、大好きなハンバーグも全然美味しくありません。私がたみちゃんにしたことは、絶対に許されないこと・・・だとお母さんに言われ、ほっぺにびんたをもらいました。とてもいたかったです。 お母さんの手はとても大きいから・・・。 でも、たみちゃんのこころはもっといたんだよね・・・。 実は・・・私も前の学校でいじめられていました。

「!」

はなちゃんの意外な過去にたみちゃんは驚きました。手紙はまだ続きます。

私の家はお母さんと私二人で、お父さんがいません。だから、みんなから、

「父なし子」と言われて、無視されたりしていました。

みんなから無視されたり、時には机の中にゴミが入っていたりしました。

とても辛かったです・・・。それなのに・・・私は、一番辛いことをたみちゃんにしていまいました。嫌なことをされたらどんなに辛いか私が一番知っているのに・・・。

教室でたみちゃんの机が、とても寂しく見えます。みんなはたみちゃんの机に勝手に座ったりしているけど、だけど心配しないで!私が守るから・・・。 まもるなんて、ちょっとえらそうかもしれないけど・・・。

たみちゃん、本当にごめんなさい。それしか言えないけど、いつか・・・。たみちゃん とお友達になりたいです・・・。いつか・・・。 小野はな

「・・・」

読み終わると、たみちゃんはそっと机の引出しにはなちゃんの手紙を入れました。

そして、たみちゃんは同じ様なキティちゃんのびんせんを一枚とりだし、 何かを書いたのでした。

それから何日かして、はなちゃんがいつも通りにプリントを持ってきました。

「あ・・・はなちゃん。あのね、帰りにうちのポストを見ていってくれないかな?」

「?どーして?」

「それは・・・。とにかく、ポストの中を見てね。じゃあ」

はなちゃんは首を傾げながら、たみちゃん のお母さんが言ったとおりにポストを開けてみました。

「・・・あれ?」

中には、紙切れ一枚入っていました。

そうっと開くとキティちゃんのびんせんでした。

そこには・・・。 いつも、ぷりんとありがとう

たみ とだけ、書いてありました。

「・・・。たみちゃんからのお手紙だ!たみちゃんからのお手紙だー!」

初めてのたみちゃんからのお返事でした。短いお返事でしたが、はなちゃんはとても嬉しくなりました。

「たみちゃんからのお返事!お返事がきたんだーー!」

はなちゃんはジャンプして喜びました。け ど、すぐやめました。

「・・・。でも、こんなに喜んじゃいけない・・・。たみちゃんが許してくれた訳じゃないんだもん・・・」

はなちゃんは、あらためてたみちゃんのお届け物係をもっとがんばろう!と心に強く思いました。

そして、そんな後ろ姿をやっぱり、窓越しに見ている人がいます。

たみちゃんです。

まだ、たみちゃんははなちゃんとはお話する気持ちにはなれません。けど、お手紙でんら・・・。たみちゃんは、お母さんにたくさん便箋を買っておいてね・・・と、その日にお願いしておいたのでした。

たみちゃんとはなちゃん・・・。ふたりとも、心にとてもいたい傷をもっています。

そんな二人が少しずつ、少しずつ、近づいています。

確実に・・・確実に・・・。

小さな配達人は、小さな心と心も運んでいるのかも知れません・・・。

はなちゃんはたみちゃん専属の配達人にこうしてなったのでした。