第7話

雨の日


たみちゃんの部屋です。たみちゃんは窓からある人が来るのをずっと待っています。

そうです。はなちゃんです。たみちゃんは、そっと頭だけだして、はなちゃんがくる時間になるとこうして、のぞいているのです。

たみちゃんは、今、とても心が痛いです。昨日の交換日記に、学校で嫌なことをされた事がかいてあったからでした。今度ははなちゃんが、自分と同じ目にあっているって知って・・・。

でも、まだ、はなちゃんに会う勇気がでません。はなちゃんにあって、直接、

「プリントありがとう」って言いたいのに・・・。

「あ・・・雨だ・・・」

ポツリポツリ・・・。雨が降り出しました。

たみちゃんのお部屋のまどに、屋根から落ちる雨の滴が流れてきます。

「はなちゃんだ!」

雨の中、ランドセルをしょったはなちゃんが走ってきました。

はなちゃんはランドセルを降ろして中からお届け物袋を出し、そして、ポストにカタンと今日のプリント類をそっと入れました。

「・・・。大変だ!」

たみちゃんはタンスの中からキティのタオルを一枚だして、玄関へと急いで降りました。そして、キティの赤い傘をもって外へ出ようと、ドアノブまで手をかけました。

「・・・」

でも、そこで足が止まってしまったたみちゃん。やっぱりまだ、勇気が、少し出ません。はなちゃんも、ハンカチを投げたから・・・。

「ヘックション!」

ドアの向こうからはなちゃんのくしゃみがきこえてきました。

「!」

雨の中・・・。走ってプリントを届けてく れたはなちゃん。たみちゃんの心の勇気が、ドアノブのたみちゃんの手をぐっとおしました。

ガチャッ。

たみちゃんがドアを開けると、ハンカチでお顔を拭いているはなちゃんが立っていました。

「・・・。たみちゃん・・・!」

「・・・」

何ヶ月ぶりにかはなちゃんは、たみちゃんのお顔を見ました。そのお顔は、しっしんは大分なおっていましたが、その後がくっきりと残っていました。でも、そのまあるいお目々はかわっていません。

「た、たみちゃん・・・」

「・・・」

二人とも、とても緊張しました。何を言っていいのかわかりません。でも、たみちゃんは、勇気を出してタオルと傘をバッとはなちゃんの前に差し出しました。

「あの・・・。これ・・・つかっていいよ・・・」

「え・・・。いいの・・・?」

「・・・」

たみちゃんは深くうなづきました。

「あ・・・ありがとう・・・」

「あの・・・。中で休んでいく・・・?」

「ううん。もうすぐお母さん帰ってくるから・・・」

「そ、そう。じゃあ・・・」

たみちゃんは、家の中に入ろうとしました。でも、たみちゃんはまだ、あの一言を言っていません。

中に入り際、たみちゃんはもじもじしながらがんばって言います!

「あの・・。いつもあ、ありがとう。か、かぜひかないでねっ・・・じゃあ、またねっ」

たみちゃんは、少し恥ずかしそうにバタバタっと中へ入っていきました。

はなちゃんは、突然の事に驚きました。

だけど・・・。たみちゃんとお話しました。とても久しぶりに。

たみちゃんのお顔を見ました。可愛いまあるいお目なたみちゃん。

はなちゃんはそっとタオルを広げ、拭こうとしました。けど、やめました。

何だかもったいない気がして。

スパン!

「わあっ。可愛いな♪」

たみちゃんの傘を広げるはなちゃん。赤い傘には、ピンクの傘を差したキティのイラストが描いてありました。

そして、傘を差すはなちゃん。とっても嬉しくて嬉しくて、いつの間にか鼻歌を歌っています。

たみちゃんの赤い傘・作詞作曲・小野はな

「たみちゃんの赤い傘♪かしてもらってうれしいなったら嬉しいな♪キティの傘だよ、可 愛いな♪たみちゃんのまあるいおめめも可愛いなったら可愛いな♪たみちゃん、たみちゃんありがと、ありがと、うれしいなっ♪」

スキップしながら帰るはなちゃん。この歌はおうちに帰ってお風呂に入っているときもはなちゃんはずっと歌っていたのでした。

たみちゃんに会えたうれしいな♪たみちゃんとお話ししたよ、よかったな♪

また、お話しようね、またあした!

「こら!はな!とっとあがってきなさい!」