たみちゃんのたまごおかゆA
「う・・・ん?」
おでこがひんやりします。はなちゃんが目を覚ましました。
「あ・・・。気が付いた!!よかった!!」
「あれ?私・・・」
はなちゃんは、たみちゃんのお部屋でした。そして、たみちゃんのキティのベットで眠っていたのです。
「はなちゃん・・・。すっごいお熱で・・・倒れちゃったの。だから、私のお母さんがここで寝かせてあげましょうって・・・。はなちゃんのお母さんに電話したらもうしばらくしたら迎えにくるって・・・」
「そっか・・・。ごめんね。迷惑かけちゃって・・・」
「ううん・・・。こっちこそ・・・。もしかしてこの前、雨で濡れちゃったから・・・。それでかぜひいちゃったんだね・・・」
たみちゃんは、うつむいていいました。
はなちゃんはガバッとおきて、たみちゃん に言います。
「そ、そんなことないよ!全然関係ないよ!だって、雨に濡れたのはずっと前の話だもん。たみちゃんが気にしなくていいんだよ・・・。ゴホッ」
はなちゃんは、はげしく咳き込みました。そういえば、喉がとても痛い・・。
「はなちゃん、もう少し寝てなきゃ・・・。」
「うん」
たみちゃんは、そう言ってそっとお布団をはなちゃんにかけてあげました。
そしておでこのタオルをとりかえてあげます。
「・・・。たみちゃんて・・・優しいね・・・。お母さんみたいに・・・。ゲホッ」
「そ、そんなことないよ・・・」
「・・・。ううん。はな、わかるもん。たみちゃんは優しいよ。ゴホゴホッ」
「・・・」
はなちゃんのお顔は真っ赤です。息が荒いです・・・。それに・・・。 それに田中先生から聞きました。はなちゃんが、クラスのみんなから無視されていることを・・・。
きっととても辛いはずなのに・・・。はなちゃんは毎日、お届けものをしに来てくれています。たみちゃんは、はなちゃんに申し訳ない気持ちがじわっとわいてきました。
「・・・あれ??あれれ・・・?た、たみちゃん・・・?なんで泣いてるの?」
はなちゃんはたみちゃんのお顔をのぞきました。
たみちゃんのお手にぽたぽたと涙がおちてきます。
「はなちゃん・・・。ごめんね・・・。私・・・私・・・はなちゃんが一生懸命にお届け物してくれているのに・・・みんなから無視されてるの知ってるのに・・・私・・・まだ・・・どうしても学校に行かれない・・・。はな ちゃんががんばっているの分かるのに・・・まだ・・・怖くて・・・行かれないの・・・」
一度、たみちゃんは学校へちょっとだけ行ってみようと朝、ランドセルをしょって玄関を出ようとしました。けれど、行こうとすると、
「ハンカチ事件」の時の辛くて辛くて 自分を消してしまいたい程辛かった気持ち思い出して、足が止まってしまいます。
そして、全身にじんましんがパアッと広がってかゆくて痛くて・・・。
そんな弱い心の自分が嫌なのに・・・。
「私、たみちゃんとずっとお友達になりたいって思ってた・・・。でも、学校へ無理に来て欲しいって思わないよ」
「ど・・・どうして?」
「だって・・・。私もたみちゃんに辛い気持ちにした一人だし・・・。それに・・・。分かるんだ。たみちゃんの気持ち。交換ノートに書いたけど、私も前の学校・・・。長い間、 お休みしてたんだ。お休みすればするほど・・・尚更、いけなくなっちゃうんだよね・・・。そのうち・・・。誰にも会いたくなくなって・・・。お外に出られなくなって・・・」
たみちゃんの気持ちは、まるで糸電話みたいに伝わってきてわかる。
前の学校をお休みしていたとき、まるで、自分が悪いことしているみたいな気がずっとしていた。本当は行きたいのに、いけなくて・・・。
「うちのお母さん、私のために働いてるのに心配たくさんかけて・・・。すっごく申し訳ないって思ったよ・・・。そう思うとよけいに朝、お腹が痛くなっていけなくなったの・・・」
「はなちゃん・・・」
「たみちゃん、私思うんだ。クラスのみんながさ、たみちゃんの辛い気持ち・・・少しでもわかってごめんなさい言わない限り・・・。私やたみちゃんが強くなったとしても・・・。 何も変わらない気がするの」
「・・・」
クラスのみんながなぜ、たみちゃんやはなちゃんを無視や嫌なことをするのか。田中先生は何度注意しても、みんなの態度はあまり変わりませんでした。
「それに・・・。たみちゃんが学校きてくれたら、すごく嬉しいけどね・・・でも、そしたら、私、お届け物係、なくなっちゃうもん!今の私のいきたかいなんだもん!」
「いきたかい?・・・それ、もしかして生きがいのこと?」
「・・・。あら・・・またまた間違えちゃった。えへへ」
はなちゃんが笑います。たみちゃんも笑います。また、たみちゃんとはなちゃんの心が少し近づいたのかもしれません。
「あ・・・。そうだ!はなちゃん、お腹減ってるでしょ?ちょっと待っててね!」
「?」
たみちゃんはそう言うと、バタバタと台所へおりていきました。
台所につくとたみちゃんは、冷蔵庫から卵を取り出し、それに炊飯器のごはんをお鍋に入れました。
「たみ。あなた、何してるの?」
「はなちゃんに、たまごおかゆつくってあげようと思って・・・。お母さん、お手伝いお願いします」
「ふふ。はいはい」
たみちゃんは、キティのエプロンをかけると、てきぱきとおかゆを作り始めました。
くつくつと煮えてきたおかゆの中にといだ卵をいれて、塩をひとつまみ。
これで完成です。
たみちゃんは、すぐにできたてのたまごおかゆをはなちゃんに持っていきました。
「わあっ。おいしそう♪」
「熱いから気お付けて食べてね」
「いただきまーす♪」
ほっかほかのたみちゃん特製たまごおかゆ。たまごの甘みとおかゆのあたかかさがはなちゃんの体全身に伝わります。
「おいしい!たみちゃん、お料理、上手だねぇ」
「お母さんにも手伝ってもらったから・・・」
「こんなおかゆ食べられるならお届け物係みょうがにつきるよ」
「それをいうならみょうりじゃない?」
「あ・・・。えへへへ。国語の勉強、もっとしなきゃね」
たまごおかゆの味は、たみちゃんの優しい気持ちとありがとうの気持ちが隠し味です。
はなちゃんは、今まで食べたおかゆで一番おしいな・・・と思いました。
そして、そんなはなちゃんをを見ていてたみちゃんは・・・思いました。
まだ・・・いつ学校へ行けるか分からない けど・・・。強くなりたいな・・・。
明日から・・・。少しずつ・・・。